第52話 ぱおーんぱおーん、ぞうさんだよー

 占星術師がいうには、パオーンゾウは南西の方にいるとの事でフィーで移動

 途中村とか町に寄ったんだけど、綺麗に開拓されている感じがした。

 木に襲われている村とかひとつもない。寒村とかもない。


「汎用アンドロイドがあるとこんなに各種事情が違うんだね」

「公造は飛び地に住んでるから、活躍しているのは最新汎用アンドロイドだろう。相当な能力だろうな」

「能力が高すぎて怖がるのも、無理はありませんね。内戦はアンドロイド拒絶派のサトーセン伯爵との戦争状態のようです」


 余裕の勝利だろうなあと思ったんだけど、アンドロイドは超高級だから後方支援しかせず。

 前線は人がやっているそう。

 塹壕戦だって。


 塹壕戦の時代は銃が主力ってルカさんが言ってた。

 国として、中世は終わってる感じかな?

 いや待てよ、馬車が通れない領地もあったんだけど……。


 いやいや?

 そもそも主力の移動が馬車じゃんってことが変なのでは?

 塹壕戦の時代だよ?


 国王は何やってるんだろ。わっかんねーこの土地。


 なんかもう頭いてーなこの土地となっている間に南西の湖付近に到着。

 いろんな動物や鳥類が水を飲みに来ている。

 自然が豊富な土地だね。


「ゾウも水を飲みに来るかもしれないねえ」

「あれ、あそこにエネルギー積層技術があるぞ、サディスン伯爵の別荘じゃねえか? ミカいるかもしれねえ、探りに行こうぜ」

「邪魔するんじゃないっ」


 捕まえる前に走って行かれてしまった。追いかけなきゃ!


 まてぇぇぇぇ、と思ったら急に足を止めた。


「捕まえた。急に足止めてどうしたん?」

「ここここ、このおとはままままままさか」

「ん? んー、カップルの営み、だね。早く帰ろ、君はエッチなことに関しては世界一耐性がない生物だ。私を百合攻めしてくるガキなのにね」

「はわわわ、凄い音が聞こえてくる。はわわ! 叫んでる!」

「達したんだろ。実況せんでいい」


 ふう、でも早朝からお盛んだなあと思いつつ、ふと、


「あれだなあ、セクサロイドさんと交わったら博士の野望の半分くらい潰えるなあ」


 などとつぶやいてみるのであった。子供産むのが最終目的みたいな所あるもんね、あんまり意味ないかもしれないね。


 さーてやりますよ、パオーンゾウ。もう発見はしている。湖のちょっと先で水を飲んでいる。なんで攻撃しないかっていうと。


「でかすぎる……」

「図鑑では体高10メートルから14メートルと書かれていましたが、実際に見ると、壁、ですね」

「サディスンは象牙ほしがっていたな。あれ1本とアンドロイド1体が交換できるそうだ。鶴岡の横流しじゃなくて正規ルートでな」

「そういうのは密猟者に言って欲しい」


 もう攻撃するのはほぼ諦めている。

 通常の攻撃で致命傷を負わせるのはかなり難しい。

 ここあの全力射撃でも頭蓋骨を割るのは難しいだろうし、心臓は、両前足の付け根の真ん中くらいってセンサーがいっている。

 どうあがいても片足を排除しなければならないから破壊するのはかなり難しい。


 フィーの主力砲なら倒せるだろう。心臓に完璧に命中して4~5体か。コボルト掃討戦のときほどお肉持ってきてないからね。

 30ミリ機関砲はここあのフルパワーエネルギー速射砲より威力は落ちる。頭蓋骨は無理、心臓狙い撃ちできるかなあ。


 あとさあ、10体くらいで群れているんだよね。

 だめだ、軍隊くれ、軍隊。


「必要なのは皮膚と血液です。フォルトの羽根と血液はありますし、フィーと混ぜ合わせればなんとかならないもんでしょうか」

「パオーンゾウって異次元持ちだったよね、こっちがメインでフォルトは補助なんじゃないかなあ。そういえば異次元ってどこに?」

「図鑑を……、ええとですね、周辺の空間に展開しているそうです。遠距離から来た物体を取り込んでいるみたいです。無害なものは外に出すようですが」


 終わったー全部終わったー。


「はあ、もうしょうがない。頭良さそうだし聞いてくるよ。ちょっと待ってて」


 といって走っていく私。私を止められるメンバーはいないのだ。


 ぞーさーん! ちょっときいてー!


「ゾウさーん! お話だけでも聞いてー!」


 像は耳が大きいから耳がよく聞こえるとはいったもので、こちらを発見し、群れのボスが前に出てくる。

 あんまり警戒していない。ここら辺の生体系の頂点なのだろう。


 私が下に着く頃に、鼻を出してくる。臭いを嗅ぎたいようだね。鼻に息を吹きかけて覚えてもらう。


 十分臭いを嗅いだら、パオーンといって二足立ちし、前足でスタンプする。

 とんでもない衝撃だけど、覚えたよー! こんにちはー! という挨拶らしい。まあ、そう聞こえた。

 なんだ、行動が荒いから恐れられてるだけじゃん。温和だよ。


「あのー、こういうのもらえないかなーと思ってここに来たんですけど、いいですかね」


 耳をパタパタさせながら「キュア」「キョア」などといって反応してくる。

 私をよく見るために鼻でまいて目の高さまで移動させた。ら、鼻がぶわーっと近付いてきた! みんな私を知りたいらしい! 嗅いで嗅いで!


「みなさんどーもー。私、博士という怪物に追われていまして、隠れるために護符という物を作っているんですよ。ちょっと下を持ってもらっていいですか、背中開けたいので」


 みんなで私の下を持つパオーンゾウ。

 か、可愛いやつらじゃねえか。


「これが護符というものなんですけど、効果が弱まってきまして、新しいのを作りたいんですよ」


 パオーンパオーン。なんだなんだ、協力できるならしようじゃないか――あずきの翻訳――。



「ありがとうございます。それで、強力な物を作るためにはフォルトの羽根とパオーンゾウの皮膚と血液が必要なんです」


 ちょっと動揺している最中私は続ける。


「血液は巨大注射器という、血液を少し吸う機械を作りますので少し痛いのを我慢していただければと思うのですが、皮膚ってどうにかならないですかね」


「キュア」「キュウン」「キューア」「キョオオン」


 会議している。どれくらい必要なのかしらとか、どの部分が良いのかなとか、水で洗ったときに落ちるあれじゃ駄目かなとか。あーそれ、垢なんでまずいっすね。


「どの部分で、どれくらい必要なのかは聞いてなかったので、ちょっくら友達に頼んで聞いてきてもらいますね」


 私は下を見下ろす。安全なのを検知してみんなが下で待機していた。


「ルカさーん、フィーに乗って、パオーンゾウの皮膚がどの部分でどれくらいあると良いかと、パオーンゾウの血液の量を聞いてきてくださいー。ルカさん亜空間に乗ってフィーは全速で。頼む」


 ルカさんが手を上げてフィーに乗り込む。

 フィーは全力で首都の方へ駆けていった。

 まあすぐわかるでしょう。占星術師さんと会えればだけど。


 パオーンゾウの背中に乗ったり、びびっているここあを鼻で拉致したりしているとフィーが到着。中からルカさんがテレポートされて出てくる。


「ルカです。場所は頭部付近が良く、B5用紙2枚分だそうです。なるべく綺麗な方がいいそうです。これ、ここに書くみたいですね。ああ、血液は2枚書くから多めに250ミリリットルくらいだそうです。こうなると、フォルトの羽根で書くのでしょうか」

「ありがとうございます、かもしれないですね。ついに異次元を使って隠れるのか……。パオーンボスさん、これくらいの範囲の綺麗な皮膚をもらいたいの、2回ほど。いいかなあ?」

「ぱおぱおぱおぱお」

「傷ですらないよ、か。巨大すぎるわー! なんちゃって。じゃあ真剣に取るから頭にしがみつくんで、鼻で支えてて」


 眉間に陣取り、丁寧にナイフで数回皮膚を取り、現れた綺麗な皮膚をそぎ落とす。

 補助脳にみどりまで総動員して綺麗に取る。

 もう一枚は少し離れた別の場所から取った。


 あとは血液。

 巨大注射器は必要ないとおかーさんに言われ、長針で通常より量が入る注射器でとることに。

 さすがというか、ここあが静脈を見つけるのが上手くて、ルカさんが綺麗に差し込んで上手く取れた。


「ありがとうー! これでまた逃げられるよ! 何かお礼できることはない?」


 パオパオキュアキュア。会議中。


「ぱおーん」


「もうすぐ死ぬお母さんに会いに行って、か。わかった、いこう」


 パオーンパオーン連れられて墓の所に。

 あー、集団墓地なんだ。骨と象牙がいっぱいある。

 哀悼の石も積み上げられている、やはり知能が高い。

 こんな場所教えられるものではない。


 もう夕方でさ、50体くらいパオーンゾウがいてお母さんと挨拶しててさ。そやつらに挨拶しつつお母さんに挨拶。

 もうお母さんは倒れて動けない。数日以内に自重で死んじゃうね。


 鼻でたっぷり臭いを嗅いでもらって、少しお話しして、お鼻にキスをしてお別れ。

 最後に変なアンドロイドに出会えて良かったね。


 もう夜になる。今日中に作って貰いますか。フィー、急いで戻るぞ!


 ありがとう大自然! ありがとうパオーンゾウ! もっともっと愛し合えよバカップル!

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