第51話 フォルト狩り ダブルフォルト! ではないです

「フォルトは北東の森の中と聞いたけど、正確にはどこら辺だろうねえ」

「ばうー」


今私達は6輪フィーになって草原を走っている。

フォルトは羽根があれば良いので30ミリ機関砲でファーストルックファーストキルを狙っているのだ。


私とフィーはテレパシー通信で繋がっていて、私が思った方向に6輪が曲がってくれる。30ミリの狙いも私がつけられる。


最近使ってなかったけど、レーダーセンサー連動ロックオンが出来るからね、ミカさんほどじゃないけど狙撃が出来る。

めっちゃ便利。


「私の時代のアンドロイド能力ってめちゃくちゃ便利だよねえ」

「ばうばう」

「それでも博士に勝てなかったのかぁ。博士が設計したってのもあるだろうけど。こんな便利な物を作る博士って本当に天才だね」

「ばう」

「へえ、フィーは所長から改造されたんだ。履帯にこだわったり35ミリ機関砲あわよくば40ミリチェーンガンにしたがったりしてるのは、昔のフィーに戻したいからなのかな」


おかーさんは生体ナノマシン利用開始αが自分の設計といっているが、エーテルを使えるようにする基礎設計もしていたそうだ。

だから私はエーテルが使えて、ニーア重工第2アンドロイド研究所系統であるここあちゃんや他の汎用アンドロイドにはエーテル搭載能力が低いらしい。

ナノ魔法は使えるけどね。


「おかーさんが基礎設計しかしてないんじゃ、今のエーテル能力は自己進化ですかねえ。お、あれは? ルカさーん。ゾルウィングだって」

「ばうばう」

「あずきちゃんは自分で拡張できる能力があるよね、ですか。んー、まあ、使えば伸びるのは自己改造持ち以外は他にないけど、博士が設計してるんじゃにーの?」

「ばうー?」

「自己改造は第2研究所の技術でしょ、なんで第1のあずきちゃんが持ってるの? ですか。フィー君私より頭良いね? わからないよそんなこと」


なんで成長しているのかは私の根源なきがして、ちょっと触りたくない。

博士がまだ童貞で、私が経験なし、でも私は負けている。この矛盾と一緒。

頭の隅にぽいだ。


「森に入るね、30ミリじゃ無理だったみたいだ。ここあ、ルカさん。出てきてください。フィーはポニー体型で。ルカさんが鞍に乗ってください」


3人で森の中へ入っていく。ポニーだけど4つ足なのでフィーはスイスイ行動できる。古い世代のパワーアーマーだと動きにくいので背に乗ってもらうのが一番だ。指揮者って感じもするしね。


「私がレーダー最大にするから、ここあちゃんはセンサー最大で。森の中でセンサー使えるのなんてここあちゃんくらいだよ」

「まあな、天才だし」


センサーは細かいものまで拾えるけど森の中じゃ細かすぎるのが多すぎるのだ。

細かい虫がばっかみたいにいる。細かい枝もある。

初期設定だとフィルター通過して全部拾う。これをフィルタリングなんて私には出来ない。


いや、全く出来ないわけじゃないよ、時間がかなりかかるの。

新規の森に入ってすぐは凡人には無理。

ここあちゃんみたいな天才じゃないと。


「あー特徴なんだっけ? 僕のセンサーに鳥系が反応した」

「細い足、黒い羽根、赤い目の周辺、全長2メートル程度です」

「ビンゴだな、番でいる。場所をピンで送る」

「ピン来ました。ステルスからのスロウでどうでしょうか。単体ならストップが効くのですが」


まあ1匹ずつか。


「ストップでいきましょう。獲った後も、亜空間の鳥ならフィーが食べれば拡張すると思うので、継続して探しましょう。ストップが効いた瞬間ここあちゃんの狙撃でよろしく」

「任された。頼むぞルカ」


フィーから降りたルカがステルスを発動し、フォルトに近付く。

ある程度近付いたとき、フォルトが反応した。ステルスを見破ったのだろう、羽ばたいて逃げようとする。

この大きさで羽ばたいて森から逃げるってかなりの空間把握能力だね。ステルスを見破るわけだ。

無理か……と思ったその時に、一匹が止まって墜落した。間に合った!


なにかを言おうとする前にRライフルの一撃が羽ばたいて逃げているフォルトの頭部に直撃し墜落。ストップがかかっている方にエネルギー速射砲が当たり頭部が破壊された。


「さ、さすがすぎる……」

「ミカという射撃の天才がいなくなったから目立つようになっただけだ。ミカならストップなしでも二発だけ撃って落としてる」


褒め倒しつつ急いで羽根をむしり取る。死んで時間がたつと亜空間能力がなくなってしまうので、それまでに毟ってしまうのだ。毟れば亜空間能力は保持されるらしい。不思議だ。

毟りきった身をフィーに食べさせる。


「増えた感じする?」

「ばうばう」

「少し、だってさ。どうしようか?」


少し沈黙が流れた後ここあちゃんが声を上げる。


「亜空間は大きければ大きい方が良い。個人的にはゴールデンレトリバー位のサイズまでしか小さくなれなくても困らない。犬だからな。毛でジッパーも隠せている。ジッパー自体小さくなる」

「なるほどねえ。ルカさんは?」

「根本的な思いですが、フィーさんは異次元犬になれないのでしょうか。なれれば元のサイズにもなれそうなんですが。亜空間としてはあずきさんのツールパックに入る大きさなら大丈夫かなと思います。まだ日本銀河帝国領地に何回か行きますからね」

「なれんのかね? ばうばう?」

「ばーう」

「わからない、だそうです。空間を扱う専門の人って日本銀河帝国には絶対いるよね、亜空間潜水艦とか作るそうだし。そういう人に聞いてみないとわからないね」


素材が欲しいという人と大きくなった方が良いという人たちだったのでフォルト狩りを続行。

一度ここあちゃんが覚えれば圧倒的戦闘力で簡単に屠っていくので数を狩るのは簡単だった。


私は他の生物の処理。猿とか猪とか虫とかね。

肉に出来たり占星術に使ったり売れたりするのでせっせと集めてました。

地味だけど私が一番ゼニを消費するからね、少しでも稼がないと。


「あずき、ばうばうがばうばうばうーって言ってるぞ」

「お疲れ様。大きくなったのかもしれない、どうなのフィー」


わんわん言って、2足で立ち上がり後方宙返りをするフィー。

きみ、まだポニーなみの大きさなんだからそういうのはやめなさい。


「大きくなったみたいですね。貯蔵庫が増えたそうです。個室はそのまんま」

「えー、あんなに狩ったのに」

「フィーさんが大きくならなかったのを良しとしましょう。ツールパックの中で眠って貰えそうです」


羽根は沢山あるし念の為フォルトの血液も採取したらしい。確実に時間が止まるここあちゃんのバッグに入れて、次はパオーンゾウだ!

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