第49話 護符ってなんすか

「こんにちは、大勲位殿。サディスン伯爵にあらせられます。わたくしは退室いたしますのでどうぞごゆっくりと」


 宰相と控えていたのか宰相が挨拶して部屋を出る。サディスン伯爵はマントに質の良いスーツと、ちょっとあんぽんたんな服装をしていた。

 ただまあ、皺一つないスーツにマントだったけど。


「久しいな、サディスン」

「お久しぶりです、かしら。今日はどういった具合で? まさか鶴丘が内戦に直接介入するわけでもありますまい?」


 なんとサディスン伯爵は元鶴丘の人間だったのだ。そりゃあアンドロイド賛成派だわ。飛び地でいろいろと見てきているもんね。


「直接は無理だが、それ以外は考えがある。恩呼知真おんこちしんがいるから詳細は話せねえよ。お前の占星術師を借りに来た。どこにいる?」

「あー……」

「安心しろ、恩呼知真だ。それに俺の彼女もいる。へへ、誰だかわかるか?」

「そこの麗しいお方しかおりますまい。そのお二方はアンドロイでございますでしょう」


「え、っ、わかるんですか。どっちも機械式アンドロイドやサイボーグじゃないのに」


 つい話に入ってしまった。鶴丘がやってる話なのに。


「わかりますとも。あっしは鶴丘でしたから。鶴丘のメイン家業はそっち系の製造ですよ」

「だから家系のことがわかったり、親分鶴岡ここあより金持ちなんだな。今の時代製造技術がある企業はそんなにいないだろう」

「ミカさんを送り出したのは鶴丘の表が強いからなんですよ。ヤクザなんて代々やっているから継いでいるようなものです。ヤクザは情報が入りますがね」

「は、話を戻しましょっ。占星術師さんはどこにいるんですか?」


 顔真っ赤にして恥ずかしがるミカさんなんて初めて見た。状況は人を変えるんだなあ。今はもうこーぞーの彼女。認識を改めようっと。


「はい。亜空間室に退避させております。場所はこちらです」


 そうして自分の私室へと案内する。ここはめっちゃ機械がある。伯爵は表向きでしかないってことか。

 そこにある本棚を横にずらす。力業で。もちろん手伝ったよ。レール引くとバレちゃうからしないんだって。ちょっとズレるとジッパーがあった。フィーと同じ構造か。


「ここにいます。それ以外にも技師や設計屋など、重要人物はここにいます。入りましょう」

「もうしわけない、私はここにいます。もうかなり護符のちからを破られていてこの亜空間を見られてしまう可能性が高い。博士がここを攻撃しない保証はどこにもない」

「ボクもここにいよう。連れ出すだけなら人数は必要ない。ついでに公造の子分であるサディスン伯爵の重要人物たちに結婚相手の紹介をするだけだろ」


 というわけで二人は残った。


「ま、ここで割られたら死ぬからな。ここあ様のマシンガンとお前の拡散型サクラ・フレアなら一方的に攻撃できる。エーテルはいくら戻った?」

「ここあちゃんが優しい! 抱きしめからのチュチュチュチュー!」


 思い切りチャージしたエネルギー速射砲で膝を撃ち落とされる。


「おわー! 膝があ!」

「ヒールで直せるだろ無能」


 実際ヒールで直しました。仮の接続だけど血液送れば結構早く全快する。


「いけずだなあここあちゃん。エーテルは5ぱー。全然戻らんね」

「保管庫がそれだけ大量にはいるってことだろ。ボクは体内エーテルの量があんまりないからうらやましい限りだ」

「あれ、エーテル持ってないの?」

「無限エネルギー持ちはそうなる。一般的な戦闘アンドロイドタイプが所持するナノマシンもだ。永久機関エネルギーになればそこら辺も改善するらしいが」

「1万年前の記憶によれば、宇宙戦艦に使われてる技術じゃない? 小型化できない機関じゃん」


 難しいもんだなあ。そこにジッパーが開いて占星術師と思われる人が出てきた。

 めっちゃぽい。めっちゃ占星術師っぽい。ゆったりした和装に頭に帽子、モノクルを身につけて本を抱えている。


「あなた方が鶴岡さまと、千載さまですか。わたくしは森野中もりのなかと申します。微力ながらお助けしようと馳せ参じました」

「こっちが鶴岡。わたしが千載。よろしくお願いします」


 そのまま私室で話が始まる。防音と防透視が施されているそうだ。

 中味が見たいということで予備と交換し、効果が切れ気味のものを見せる。


「あー、これは陰陽道の護符が基本なんですね。護符力を発揮させるために魔電池を使って起動しているのか」

「オンミョウドウってのがよくわからないんですけど、ルカさんはなんか深い知識を使ってこの護符の基本を作ったのはわかりました」


 ルカ、怖い男。何でも知りすぎている……。


「うーん、この地方で作れるこの手の護符だと、亜空間機能を持ったフォイルという鳥の羽根と異次元空間を保持しているパオーンゾウの皮膚があれば一番強いのが作れますね。」

「亜空間と異次元って違うのですか?」

「かなり違いますね。亜空間はこの宇宙で位相をずらしたもの。亜空間潜水潜宙艦とか、普通に使われています。異次元は異なる次元という漢字の名の通り、次元が違います。つまり別宇宙へつなっがているんですね。隠蔽率とか空間容量とか、何もかも違いますよ」

「はえー」

「九字も書くようなので、パオーンゾウの血液があるとなお良い。ほぼ異次元で書いてしまいましょう。いやーこれは私より魔を研究するものや陰陽そのものを扱うかたが適任ですねえ。占い師は陰陽も扱う方が多いから、作れたのはそういったわけですね」


 わかんねーがそのようだ。内戦で逃げてないよね、フォルトとパオーンゾウ。


 私の今使っているバックパックは容量制限があるから亜空間、ここあちゃんのはほぼ制限がないので異次元級ってことか。

 そういや記憶が正しかったら綾雪乃先生は異次元バッグっていっていた気がする。

 超お金持ちの持ち物か……。


 なんか、今回作れたら大陸までは十分持つようです。

 占星術師さんも亜空間にいる博士を見つけていて、扱っている強度とかがわかっているみたいで。

 普通なら一番強い強度で自分を守るので、それで推測すると、見つからないみたい。

 やっぱり強度がわかるって便利だよね。術なんだって。習得は難しそうだ……。


 大陸の博士によっては作り直すのかと思うと気がめいるけど、今が重要!

 サディスン伯爵の土地にフォルトはいるみたいなので、まずはフォルトからだ!


 その前に、やることがある。


 ――――――――

 次回重要ですが短文かも

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