第48話 59敗1勝

「ルカさん、決まりです。三日目ですが、嬉しい悲鳴を聞きました。ミカさんが体を許したってことですからね」

「59敗1勝、その1勝が決め手ですね。ミカさんならヤクザ筆頭の嫁も務まりましょう」


 惑星JUNAのヤクザが何をするのか知らないけれど、上手くやるでっしゃろ。


 階位をもらうためにみんなで中央センターに行ったとき。


「あの、その」

「公造と仲が良いようですね、ミカさん」

「はい……それで、私は伯爵領地で最後にしようかと」

「ここあ、私の勝ちだぞ。お菓子代は払ってもらおう」

「60連敗すると思ったんだけどなあ」


 ビンタされる2人。

 やっぱゴリラだよこいつ。


 それで、中央センターで階位をもらったんですが、ナノ魔法がかかっただけ。下位なんでこんなもんかな?

 鑑定ナノ魔法はエネルギー積層技術内であれば誰でも出来るので必要なときに鑑定してもらえば良いみたい。

 ちなみにこーぞーは階位10位だそうで。惑星JUNAだと、ヤクザって割とすごい職種なの?

 それが頭下げる千載ってめっちゃ凄いんだね。日本銀河帝国本領だと千載あずきを証明できれば特別扱いになるそうだけど。

 家系の力かぁ、私は大元なんで特にないんだよね。戦神いくさかみの力がある、鶴岡つるがおかここあめ。くそう。


 日本銀河帝国の領地なので武装更新のチャンス。

 ルカさんはパワーアーマーの世代交代。まだ中古。サイズ調整はしてもらったみたい。前のはそういうのもしてなかったからなあ。

 前のを売るからそんなにお金はさほどかからないみたい。

 ここあとミカさんは特になし。Pライフルより今のチャージRライフルの方が強いし、おかーさん曰くPライフルを改造するとかなり素材を食うそうで。

 改造したがってたけど、まだRでなんとかなる。

 ミカさんは離脱するからね。いつも通りM101ガラルドだそうです。弾丸の設計図は買ってたかな、効率良く置換できるそう。

 護符を買ってゼニ余ったらM105ガラルド買ってね、ということで。フルオートだからね。

 パワーアーマー持っていれば反動制御できるし、私が撃つかもしれないし。


 フィーのゴミ箱はなかった。あんまりフィーも歓迎されてない。でかくなるのも良くないみたいで、ずっと小さくなって背中のツールパックに入れてる。


 私は見送り。

 日本銀河帝国だけあって普通にインプラントが売っているんだけど、赤色で200ゼニとかしちゃうので。

 護符買った後だね。


 インプラント成長型アンドロイドはまだ生産されているらしい。

 ここあちゃんみたく自己改造型とか最新式があるから、インプラント成長型は古そうなんだけど、世代が違うのかなー?


 じゃあ、電車に乗って出発だ。

 ガタンゴトンガタンゴトン。


「あー、綾雪乃先生の常設展……」

「護符を取り替えてからゆっくり見ましょう」

「そうですね、ションボリ」


 電車は数分で国境まで。ここまでしか線路はないみたい。技術漏れを防いでるんですかねえ?

 どこの領地ともめちゃくちゃな技術差があるもんね。融通していたらもっと縮まっている。

 やっぱ、再度世界統一したいのかな。私のころは全世界日本銀河帝国だった気がする。


 それ以外だとなんだろね。亜空間や異次元を嫌っている節があるし、そういう技術を漏らしたくないのかな。

 博士が亜空間や異次元に存在するし、それを嫌っていたりして。

 検査官も護符の効果知らなかったもんなあ。秘匿? どうだろ。


 まあいいや、今は私の背中が恋しくなったフィーを大きくすることに集中しないと。


「フィー、背中に入るの3回目だよ。密封しても空気なくても生きられるから効果なかったしね。フィー、そろそろ怒るよ」

「わんわん!」

「ほら、ウチが抱っこするから。痛い! 噛まれたわぁ」

「ふぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!! 婚姻直前の女を噛みやがったなああああああああああああああ!!!!」


 フィーを引き取り、思い切り投げ飛ばす。500メートルくらい飛んだところでフィーが大きくなり滑空して戻ってくる。


「ばう」

「あやまってもおせーんだよ!!!! お前どうやって責任取るんだよ!!!!」

「ばうー」

「うるせぇ!!!! おめーは破門だ、私の気が済むまでついてくんな!! 皆さん遅いですけど馬車に乗りましょう」


 そういって馬車乗り場へ向かう。私の激怒を見てみんなもついてくる。


「あんまり怒らないで、うちは大丈夫だから」

「そうはいかないんですよ。仲間を噛むのは重大な事案です」


 フィーがついてこようとする。


「フィー、伏せ」

「キャウン!」


 私の命令はフィーにとって魔術とか魔法に近い。

 私が解除するまで絶対それを維持してしまう。

 最初の人生のころ、なにか重要な契約があったのだろう。

 思い出せないのが悔しいが。博士に破壊されてしまっている。


 結局フィーは、最初の宿場町に到着するまで置いてけぼりにされた。


 しこたま怒られたフィーは、戻ってくるとすぐにゴールデンレトリバー程度のサイズになり、ミカさんの前でふせをした。


「これ、反省している証です。もういいなら頭撫でてやってください」

「するする。もう大丈夫よ、フィー」


 そういって頭を撫でるミカさん。


「良かったなフィー。許してくれたぞ。仲間意識をしっかり持て。もうふざけたことはするなよ」

「ばう」


 めちゃくちゃ元気のないフィーを抱えて、宿屋に泊まる。さすがに今日いきなり亜空間内で眠らせろは苦痛だろう。


 翌日、少しは元気になったフィーの亜空間内に乗り込み、フィーに移動してもらうのであった。

 はぁ、怒るのも大変だよ。フィーが素直で良かった。


 ただ、フィーの移動もすぐに終わる。

 このドルバート国はあまり魔物やアンドロイドを歓迎しないみたい。

 隣が日本銀河帝国飛び地だから嫌うのかもしれない。

 私とここあちゃんが亜空間内に隠れ込み、フィーはゴールデンレトリバー程度のサイズになって、ルカさんに連れられて馬車で移動する。

 ドルバード国にサディスン伯爵だけがいるわけでも無く、様々な領地を通って進む。

 様々な関門があるわけよ。関所で数日留まったり、通行税支払ったり、馬車で移動する道がなかったり。本当様々。


「えー今度は内戦で封鎖だって。この国どうなってるの」

「地図を見る限り、周りは海。隣接している国は飛び地だけだ。領主がやりたい放題ではあるな」

「ルカさん手伝いたくてもなにも出来ないしなあ」

「世界のことわりをなにも知らないからな、ボクら」


 どうしようと思っていたら、ミカさんがPDA遠距離通信するって言い出したんですよ。

 これ、お互いのPDA番号を知らないといけないし通信料金がかかるんですわ。

 誰にかけるのかなー。こーぞーですよこーぞー。

 ワン切りっていってね、一瞬相手に取らせてから切って、履歴で相手にかけさせることで通信量を相手持ちにさせるテクニック。


「うん、どうにもならんのです。助けに来てくれませんか」


 みやびぃな言葉遣い止めてる。変化する女だなあ……。


 ここにいてくれと言われたそうで、ここでキャンプしましたよ。

 まさか何となく買ったテントと例の石油ファンヒーターがこの場面で役立つとは。

 馬車の御者がまだいますんで、亜空間バッグがあるという節で取り出して、キャンプ。関所前でキャンプ。

 2日かからず来ました、黒塗りの多目的車が。SUVっていうんですかね。


「遅くなってすまねえ、ミカ、ルカ、来たぜ」

「公造さん……!」

「なんとかなりそうだな、階位10位様」

「10位じゃ飛び地ではさほど役に立たんが、ここじゃ大勲位だ。任せろ!」


 突っ切ったぜ、内戦の中をよ!

 戦闘が起こってないところを走りに走り、野党がでたら一名付いてきている子分がサブマシンチャカをぶっ放し、一気に隣の領地まで!


「サディスン伯爵までいけばアンドロイドも活動できる。あそこは賛成派だ。帰りに灯油をもらえるか? この車は灯油でも走るんだ」



「多種類燃料可能エンジンか。結構な技術で出来ているぞ、この車」

「うーん、私は記憶にないや。ここあちゃんが言うんだから凄いんだろうね」

「最悪空気中のナノマシンを収集して燃料にするから全く走れなくなることがない。金持ちだな子分の家は」

「恩呼知真はお金があってもとんでっちゃうよねえ。いつも貧乏」

「主にお前の護符代でな」

「サーセン」


 そんな話をしている内にサディスン伯爵の領地へ。関所の人がここは内戦をしていると話していた。

 ここもかい。護符作れる人が疎開してなければ良いが。

 途中で燃料切れを起こしたので灯油を補給して走る。岩を置換して高性能ガソリンでも良いけど、灯油使う時期でもなくなってきたし。

 燃料補給無しでここまで走ったそうで、凄い燃費だわね。

 燃料缶を置換で作って予備の燃料として渡せば、無事に帰れるだろうね。


 そして首都まで直行。階位10位を利用してサディスン伯爵と面会。


 伯爵と話してなんか意味あるのかな? まあ会ってみましょう。

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