案件その4。激しくなってくる戦い
第24話 VS気持ち悪い生物編
ルカさんを待っているときにソファーで爆睡した私。
さすがに疲れが残ってたかな。元々は人だったからね、私は。ここあちゃんとは違って疲れるんよ。人製アンドロイドをインプラントで成長させていったわけ。
初号機だからそういう方法でしか成長させられなかったんだよね。
2号機3号機はもっと効率良く成長できたみたいだけど。博士の反乱でみんな死んじゃったからなー。
実験機は6機まで作られたんだよなー。あー懐かしい。
「ふぁー、よく寝た」
「起きましたかあずきさん。ピンクさんに聞いたところ何か用があるとかで」
「うん、位置バレした。長いこと留まっていたからね。どうしようかなって思って」
「この街に詳しくなったミカさんに言って、強力な護符を作成してもらいましょう。ここは栄えてますから占い師さんも強力だと思います」
ミカさんが帰ってきてからことの成り行きを説明。占い屋はまだ空いてるからすぐ行こうということになった。
――「あ、見つけた」――
――「そこが亜空間になってるのかな」――
――「そこを消滅させれば逃げられなくなるね」――
「まずい、フィーが狙われてる。消せば逃げられなくなるって。あと、寝てなくても普通に声が聞こえる」
「フィー、ステルスモードになって場所を移しましょう。フィー、適当な場所を見つけておいて。雪乃さんの庭先を借りても良いかもしれない。」
「ばうばう」
「わかったって」
――「あれ、亜空間が消えたね。テントみたいな防護でも張ってたのかな」――
一歩ごとに喋りかけてくる博士を無視しながら占い屋へ。
「最高級の身を隠せる物を作りたいんです」
「それは具体的になにからですか」
「この子に付いているGPS発信器を元によってくる生物全般です」
「あ、あと念視とかそれに準ずる技術からも身を守りたいです。寄ってくる生物の大将がそれで囁き声を送り込んでくるので」
今使っている物も含めて資料を提出する。あ、お守りも強化しないと。
「これは難儀ですね。今以上の物となると、ご自身の血液に加えて亜空間能力に長けた生物の血液もほしいです。混ぜ合わせた物を固めて依代にしたい」
「フィーだな」
「フィーですね。フィー、ゴールデンレトリバーの姿になって私の所まで走ってきてー」
5分後、走ってきた。
「はっはっは」
「ちょっと走ってきて疲れてるので休ませてください。先に私の血液を。フィーは動脈から取るので私も動脈から取った方が良いですかね」
「あの囁きで来るなんて、相当懐いてますね。それではあずきさんの動脈から。しかし動脈は内部に――」
ここでドスンという大きな音が空から響いた。
外に出てみると、博士の顔をした巨大豚がエネルギー積層防壁によって空中に乗っかっている。
「きましたね。場所バレしているから来るとは思ってましたが。わたくしはここあさんを連れて町の中央にある魔法陣へ向かいます。ここあさんの無限エネルギーを注げば割れることはないでしょう。
そういって去って行くルカさん。護符の専門家がいなくなるのはとても寂しいけど。
もう3回目だっけ、取り替えるの。
「ふー、ふー、わんわん!」
「うん、落ち着いたようです。この子はここから動脈が出て、私は後頭部がサブ心臓なので今開きますから、左側の大動脈を刺して下さい」
ぱかーん! と後頭部を開きサブ心臓をあらわにする。動いていると動脈に刺しづらいので一度血流を抑える。ぶすっと刺さったらゆっくり血流を戻す。流れが強すぎてもいけないのでゆっくりと、ゆっくりと。
「ほーんと生体機械だよね、アンドロイドって言うか」
「まーね。ウチはそんなあずきちゃんが好きだよ」
「そういうこといえればマッチングアプリでも常勝だと思うんだけどなあ」
思い切り手首をつねられ悶絶する私。なまじ動脈から取ってるから動けない。痛みカット痛みカット。
街は騒然とし、迎え撃つ準備をする。エネルギー積層防壁もまだここあちゃんがエネルギーを入れていないのか割れそうな感じだ。
「こちらミカ。ここあの状況は?」
「ルカです。もうすぐ魔法陣にエネルギー注入します。無限のエネルギーから魔力への転換装置に時間がかかってしまいました」
「了解、時間はないがきちんとな」
こちらもきちんとな。護符2枚分の血液を抜いて機械にかける。結構な量抜いたけどどちらもピンピンしてるぜー。
「今の時間を使ってお守りを作りましょう。フィーさんの血液で呪術の漢字を書いてフィーさんの毛を大量に入れて圧縮、出来た丸薬みたいなものを5~6個作ります。それをさらに日本銀河帝国の標準語で書いた呪術紙で包み、コーティングしてできあがりです。こっちも時間がかかります」
「ちょうどいい! フ ィ ー 、ブ ラ ッ シ ン グ の 時 間 だ よ ー 」
逃げようとするフィー。しかし先に手綱をミカさんが握っていた!
「くゅーんくゅぅーんくぅーん」
「いやー出てくる出てくる」
「換毛期の時てんやわんやでブラッシングしてませんでしたからねー。さあさ、フィー、キレイキレイになろうねー」
「くぅーんくぅーんくぅーん」
30分ほどブラッシングしたら汚い毛がごっそり。
さすがにこれじゃ汚いので全身洗濯機を使って、キレイキレイになってもらいました。私がフィーの中に入るわけにはいかないからミカさんにやってもらったよ。
ミカさんが戻ってきたあたりでエネルギー積層防壁に変化が。上空の薄い防壁でも『見えるくらい』の強度を持った状態になった。ここあのエネルギーが通ったな。
よっしゃ。
「よし、お守りが出来上がったね。あとは護符が手に入れば」
「でもこれ排除しないと私が消えたあとが大変ですよ。見境無く暴れますから」
「ここはおかーさんの出番ね (΄◉◞౪◟◉`)(΄◉◞౪◟◉`) 」
ゴールデンレトリバーのフィーの横ジッパーからぬるっと出てくるおかーさん。占い師さんがびっくりしてる。
「えっ、なにしに来たのおかーさん。コケたら元に戻れないんだから行動は気をつけてよ」
「ひどいわねっ。助けに来たんじゃないの 。゚(゚´ω‘゚)゚。 」
「なにを助けてくれるのさ」
「こーれ、私の遺跡で使われていた積極攻勢型のバリア。触れた物を全て消し飛ばすわよ。これはエーテルがたくさん入っているあずきちゃんしか使えないわ (΄◉◞౪◟◉`) 」
使い方は簡単。四角い箱を地面に置いてエーテルを注ぐとバリアが展開されるんだって。エーテルって万能な存在なのかな。
「結局護符を使う前に私が囮になって全てを殲滅するって作戦だよね。私はバリアに閉じこもっていれば問題ない。数百いる変異体はとにかく私に突っ込むからバリアでどんどん消滅していくと」
「そう、かーんたん ٩(ˊᗜˋ*)و 」
「エーテル持つの?」
「……中型魔力コアを全ての魔力スロットに搭載するわ。それなら足りるわよ。おかーさんが操作するから危なくない ٩(ˊᗜˋ*)و 」
以前と比べてエーテル生産量は増しているけど数百を相手にしたんじゃ足りないよねえ。
中型魔力コアを魔力スロット直列2並列4の全てに組み込んでもらった。こえー魔力コアが爆発したら死ぬよー。
でも中型魔力コア一つに単1電池の3倍は魔力がこもってるんだって。
コアもエーテルの一種なのかな。
直列って何だろ。
わからんちん。冬の間におかーさんに聞こう。
外に出るので外の支度をして、街の門をオープン!一気に走る! 博士豚や博士蛙、サーベル博士、両手レイピア博士デュエリスト、博士バッファロー、博士牛、ヒキガエル博士などが軒並み私の方へやってくる。
飛び散る血液の量を勘案して丘の向こう側まで走ったら、ここだ!四角い箱を設置してエーテルを注ぐ。遺跡みたいなバリアが展開された。
あとは、なんだ。組んずほぐれつして軒並みバリアを破れずに身体が消滅して、それでも残った手足で私に近づこうとしてさらに消滅していくショータイムというか、地獄の宴会というか。数百体いたので血が焦げる匂いが凄かった。
でさー! バリアが張ってあるからってさー! ミカさんがリーダーとなって射撃してきたのは何なの!? なんかのミスで私が死んだらどーなるんだー!!
金持ちな街なのですげー量のライフル弾が飛んできたんですよね。怖いねー金持ちは……。
フルオートのM105Aガラルドとか使ってるんだろうなー。
おかげで処理も速かったけどね。
軒並み処分してからすぐに護符を張り付けました。
「消えやがった! あと少しだったのに! クソガキがよう!」
「さっさとおいたんのものになれってんだよ! 諦めろよ!」
「まあいい、冬の間はここにいるんだし、何度消え直してもどんどん発信力は上がってるからね。いつかはどうにもならないところまで来るからねえフヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ」
「今の声は……?」
ミカさんが不思議そうな顔でそんな声を発する。
「博士の声ですよ。今回は本体がかなり近かったんでしょう。いつもなら私だけに聞こえているものが全体音声となったみたいです」
「そっか、あんなキモい声がたまに聞こえるのか、つらいな。さあ、占い師さんのところへいって予備の護符と支払いを済ませて帰ろう」
今回バリアに守られていたので奇跡的なレベルでなにもくっつかなかった。一応全身洗濯機に入ったけどね。
「えええええええええええええ総額5000ゼニですかああああああああああ!?!?」
「自分で稼いだんだ、自分に使うのも当然だろ。それに冬の間は腐ゆっきーの街にいることがバレたんだ、お金で守れる命があるならお金を払うよ、ウチは」
「キフ、イパイイパイ、シマスネ」
インプラントは諦めよう……。
確かに私が稼いだ金だけどこれ以上使うのはみんなに申し訳がたたん。
「そういうわけ、慰めてここあちゃん」
「あーはいはい、穀潰しがいると困るなあ」
「やんのかおら」
「やるぞこら」
ボカスカボカスカ組んずほぐれつ
「まーたやってるのか、仲いいわねえ」
「ええ、全くです」
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