第22話 お仕事って大変(探すのが)

 さてどうしようかな。なんか仕事探さないとな。依頼酒場へ行って、日給が良いのは……。下、下水処理……。さすがにやめとこうかな。

 他にはー……マッチングアプリのサクラ。


「これミカさんにバッチリじゃないかな」

「え、どれどれ?」


 ぐわあああああミカさんも来てたあああああ。


「ほう、マッチングアプリのサクラですか。ほう。ふーん」

「いや、冗談ですって冗談」

「これミカさんにバッチリじゃないかな」

「すいやせんでしゃー!」


 即座の土下座。ミカさんに嫌われたらなにがどうなるかわからん。


「やってみようかしら」

「やんなくていいです! ほら、これやりましょう? 薪割りのお仕事。歩合制ですけど私とミカさんならサクサク切れますって!」

「肉体労働はちょっと。それはあずきちゃんがやりなさい。あ、私これにしよーっと。家庭教師」

「ミカさん家庭教師できるの……?」

「家庭教師といっても刀と銃の扱いだって。余裕じゃん」


 ミカさん刀扱えたっけ?


「刀は実戦向きの速さ重視で教えれば良いでしょ、銃は丁寧に教えられるでしょ、日当は20ゼニでしょ。言うことないじゃん。面接行ってきまーす」


 たっけえ! 作家先生が実際の動きを知りたいから教えてって言ってる感じだ。実際そうかも。銀河を股にする作家先生なら莫大なお金持ってるからな。


 格闘技無いかな。うーん、無いか。うん、薪割りかな。一個薪にすると1ゼニだってさ。重荷電SAKURA粒子付与拳サクラ・パンチで削ってどんどん薪にすれば良いよね。薪ってどのレベルなのかな。丸太8等分くらいかな。あはは。はぁ。


 面接はあってないようなもので、現地に集合しました。割と人がいる。15名くらい。


「あー、この仕事は地味だが薪がなくなった市民に配るための薪を作るんだ、頑張ってくれ」


 そんなわけで斧と丸太が配られた。丸太重いのによく持てるね。

 まあまずは斧でやってみましょう。そりゃ!

 一発で丸太が割れた。

 あるぇ? この丸太乾燥してないからめっちゃ割るの大変なんだよ? もしかして私力強い?

 この後は余裕の展開が待っていた。スッコンスッコンすれば丸太が割れて薪になる。

 乾燥していないから薪じゃないんだけど、まあ薪以外の名称もないので。

 そしてどんな丸太でも新機能『手にハサミが生える』で余裕。裁ちバサミのようにすーっと滑らせればすーっと切れる。

 細めの丸太ならハサミだけで薪になる。手がハサミになるんで大きいんだよね。

 手首くらいから手が変形して生えてくれるから40センチちょいは出てくる。

 初めて使ったけどこれは便利だ。


 周りの人が唖然とするなか午前中だけで116ゼニを稼いだよ。ひゃっほう! 一番稼いでる! もっと丸太持ってこーい!


「あー、すまないがあと50個くらいで丸太がなくなる。他の人の日銭にもなるんだ。今日はこれくらいにしてくれ」

「あ、はい」


 これはしょうがないよね。これで暮らしを支える人がいるんだもん。私だけ稼ぐわけにはいかない。

 次の日。衝撃的なことが起こった。

 解雇されたのだ。

 理由は他の人にもお金を配分したいから。ぐうの音も出ない。繰り返すが私だけ稼ぐわけにはいかないのだ。


 さて。また無職になってしまった。どうしよ。うーん。なんかないかな。

 依頼酒場の一覧をじーっと眺める。


「アンドロイドの裸体を描きたいのでモデルを募集します。ソフトスキン人のような肌1日50ゼニ、ハードスキン機械のような肌1日100ゼニ。冬季ずっと稼げるわけじゃないけどこれ良いかも」


 ご本人様と面接して、おっぱいとか触られたけど、承諾を得ました。実は私ハードスキンにもなれるんだよね。ソフトスキン収納できる。


 みんなが集まる時間帯、また無職になったのでここあにバカみたいに笑われたけど、我慢して次の日。


 アトリエに行って裸体になる私。


「じゃ、ハードスキンになりますね。この護符だけは外せないのはご了承住みですよね」

「わかっとるよ。それじゃ、こういうポーズを取ってくれ」


 ハードスキンの私は皮下装甲が丸見えで、いかにも戦闘用アンドロイドという感じ。実際は多目的アンドロイドなんだけどね。戦闘用とは違って胸も腰もあるし。翻って戦闘用は何もないからね。それはそれで美が出るんだけどさー。機能だけを追究した美ってやつ。機能美だね。

 ちょっと恥ずかしいポーズだけど我慢我慢。アートのためには恥ずかしいとかを捨てなければならないのだ。


 で、3日ほどで描き終わりました。300ゼニだわーい。チップとして50ゼニもらったよ!



 少ない。


 3日としての給料は高いけど、ここあちゃんは10日で150ゼニくらい余裕で稼ぐのだ。ルカさんは100ゼニと余った食材、ミカさんに至っては200ゼニだ。ゴブリン討伐戦で着手金100ゼニ討伐報酬300ゼニなどといっていたころが懐かしい。

 あの領地は貧乏でお金もあまり流通しておらず。報酬もあまり高くなかったということかな。いや、400ゼニは美味しいと思ったんだけど。


 その点この街は凄いお金持ちな街だ。

 銀河レベルの作家先生が滞在するだけのことはある。


 何か探さねば。またここあちゃんにバカにされる。なにかないかな。依頼酒場で依頼を探す。じー。お、伐採隊で欠員が出たから募集してるみたいだ。1日8ゼニ。欠員募集だからか日当が増えた。それでも8ゼニか。公共事業に近いから1日としては安めなのかな。薪割りもそうだったね。稼ぎすぎて解雇されたし。


「よし、今度こそ大丈夫だろう。面接面接っと」


 面接もないまま現地に行かされて、惨状を知る。どんどん人が抜けて今3名しか活動していないという。なんでぇ?


「今年はお金絞りすぎたみたいだよ、はっはっは」


 バカだー!


「私一人で活動できますけど、インセンティブとして一本消したら2ゼニください」

「いいぞーできるもんならやってみな」


 言ったな。


「センサー作動。推定樹木200本。過負荷重荷電ブーステッド・SAKURA粒子加速砲サクラ・フレアぁぁぁ!」


 ブーステッド・サクラ・フレアは発射方向にキノコ雲が発生するようなサクラ・フレアだ。射程は大体300メートル。

 電子が先に飛んで道を作り、その後過負荷重荷電SAKURA粒子が整流されてくるので結構真っ直ぐ飛ぶ。

 なので一直線に木が消えたのだ。切り株を残して。丘になっていたところは地面が消滅して木がなぎ倒されたかな。

 多分今の私なら過負荷拡散型重荷電ブーステッド・拡散型SAKURA粒子加速砲サクラ・フレアも撃てるだろう。いろんな形に拡散するはずなんで根こそぎ消滅させちゃう。今ここで使うわけにはいかないね。


「な、なんだこれは……」

「200本くらい消しました。切り株は残したので切り株の計算してきてください。私ここでルカ特製コーヒーコーヒー飲んでるんで」

 無限のキャンティーンから熱々のコーヒーを飲みながら、のんびりと過ごす私。インセンティブは言ってしまったし撤回はさせないぞっと。撤回させるんだったら役所通してもらおう。


 1時間くらいかかって切り株の計算が終わり戻ってきた担当者。明らかに怯えてる。


「えーと、186本の切り株を確認した。372ゼニの追加資金を支払おう。しかしもう一度放つのはちょっと……」

「え? 地図で見ましたけどここが一番街に接近している森ですよね? 一度なくしておきましょうよ。税金でウハウハなんでしょ、この街は」

「いや、しかし一度に300ゼニ400ゼニ支払うのは役所の資金が」

「小切手でも切っときなー当座預金は潤沢でしょ、どうせ。残ってた3人も帰っちゃったし。二発目の過負荷重荷電SAKURA粒子加速砲ブーステッド・サクラ・フレアぁぁぁ!」


 あんまり森の中に入るとコボルトとかオーク、時にはオーガなんかに襲われるんで、前髪を切るようにちょこっとずつ削っていきました。結果。


「5000ゼニだと!? 今日一日で!?」

「ふふーん、ここあちゃんはいくら稼いだのかなー。まあ整形しきったんでこれ以上の追加収入はないんですけども」

「じゃあ500日後には逆転……って冬が終わってるか。養蜂は冬の間ずっとやっているからボクでも半分くらいは追いつけるが……」

「すごいですね、あずきさんおめでとうございます。わたくしも腕が認められてずっとやっていけそうですね。10日収入も110ゼニまで増えました。1.1倍ですよ」


 ミカさんがちょっと暗い。


「家庭教師として教えきったって思われてるから解雇されそう。まだまだ序盤なんだけどなあ……。速射とか全然教えてないよ」

「刀と銃の家庭教師なんて希望するのお坊ちゃまでしょ。世間知らずだろうからなあ」

「いやいや、ちゃんと作家先生だったよ。お屋敷に住んでるし。でも深く知る必要はないみたいだねえ。作家活動に使えれば良いみたいな感じで」

「残念だったな、ミカ」



 冬はまだまだ続く。

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