第20話 雪乃さんあざざした! 小さいと絡まれやすい

 ここあちゃんの腕が修復できたお祝いに、ささやかながらルカさんのお菓子で乾杯。


「もうすぐ冬なのであまり食材は使えませんが、クレープくらいなら作れます」


 ということでクレープを5人分。なぜか居座っている雪乃先生の分まで用意したよ。一般人なので出て行ってほしいけど、ここあの恩人だし、無碍に言うことはできないもんね……。


「んー美味しい。シンプルだけど一番素材の味がわかりますね」

「うちにある食材を持ってきたらさらに美味しくなりそう。取ってきて良いですか?」

「いや、雪乃先生。一応フィーに亜空間機能が付いていることは隠してるんですよ。だからそれは出来ないです。ウチも食べたいけどね」

「そうなんですか、うーん残念。せめて蜂蜜くらい、って思うんですけどね」


 蜂蜜。よだれが止まらない。蜂蜜、はちみつ。

 そんな私をよそにお断りするミカさん。くーこのクレープに蜂蜜がかかればなあ。


「この街には養蜂家がいるぞ。ボクがお仕事取ってきて蜂蜜もらってこよう。依頼酒場に依頼があれば、だが」

「ボク? ここあちゃん自分のことをボクっていうようにしたの?」

「うん、あたしとあずきのわたしは間違えやすいだろ。だからボクっていうようにした」

「げへへ、腐の香りがしているでヤンス」

「そういう意味で変えたわけじゃない、間違えるなあやゆきの」

「ウィッス」


 それじゃ依頼酒場行ってくると右手をあげてフィーの外へ出るここあちゃん。喧嘩をして右腕の調子確かめたかったけど、あとになるかな。


「しかしまあもう冬ですね。今年はここで越冬ですか?」

「まあそうでしょうね。蜂蜜じゃないけど食べ物を蓄えないと行けないわね。ウチはちょっと。マッチングアプリで引っかかったんで頑張ってくる」


 そいじゃまたね! と元気よくフィーから降りて去って行くミカさん。ちょっとしゃれた衣服に着替えているあたり今回は本気のようだ。いや、今回も、か。毎回本気で挑んで57連敗しているのだ。


「私はどうするかなー。冬服に着替えて夜間用コート着れば寒さもしのげるし、冬季討伐隊か冬季伐採隊に参加しようかな。資金がないとチームが瓦解しちゃう」

「わたくしはお菓子屋さんでアルバイトですかねえ。わたくしもチームのための資金作りです」


 冬季討伐隊っていうのは、寒くなったこの時期に魔物の巣を狙って討伐・掃討するというもの。

 冬は装備揃ってないとマジで死ぬから、レベルが高い人に頼むことになるんでかなり美味しい。ただほぼ群れと当たるんで戦闘はキツいらしいね。

 外に出て活動するので夜はガチガチに冷えたところで野宿。きっつー。

 これをしないと、掃討されずに綺麗に生き残った魔物が、春から大繁殖してスタンピードおこしちゃう。スタンピードの原因は不明だけど、とにかく増えすぎた魔物が起こすということはわかってる。

 私強いしーと一度やって懲りた。もっと装備ないとできないって思ったね。


 冬季伐採隊ってのは冬に木を伐採するってお仕事。春になると凄い勢いで樹木が生えるから今のうちに刈っておいて、森の進軍を妨げるという物。

 これも装備がないと動けないので、討伐隊ほどじゃないけどやっぱり美味しい。

 冬はチェーンソーとかオイルを使う奴はオイルが凍ったりドロドロになったりするんで使えないから昔ながらの斧やノコギリでやるんだけど。まあこの星1日が長いし冬も4ヶ月くらいあるからね。きっちりじゃないけど360日くらいある。

 この星もしっかりと楕円軌道描いてます。

 遠日点が遠くて寒い日が多いんだったっけかなー忘れた。夏になったら思い出すでしょう。

 伐採隊は依頼酒場のへべれけなおっさんに聞いた話だけど信頼できると思う。その時の依頼にも防寒具必須、道具貸し出しって書いてあったし。

 ノコギリインプラント持っていればなー売っちゃったんだよね。でもあのインプラントじゃ木を切り倒せる大きさにはならないか。腕がノコギリになるくらいじゃないと。


 さて、みんなが出かけるということで雪乃先生も出ることに。私とルカさんでお見送り。


「本当にありがとうございました。何かあったら是非とも我々恩呼知真おんこちしんをお頼りください」

「雪乃先生ありがとね! 新刊楽しみにしてまーす!」

「は~い。冬になったら日本銀河帝国に戻っちゃうので会えないのが寂しいけど。皆さんによろしくお伝えくださ~い」


 そう言って綾雪乃先生は去って行ったのでした。ありがとう、綾雪乃先生。今回のヒーローだよ。


 依頼酒場へ行ったらここあちゃんがが2名の男性におちょくらていた。小さい身長だからおちょくらてしまうのがよくあるとのこと。


「お前みたいな小さい奴が仕事できんのかあ? ママの牛乳運びのお手伝い捜しに来たんじゃねえんだぞぉ」

「ぎゃはははは」

「今ボクは養蜂場のお手伝いを探している。蜂蜜が欲しいんだ。ルカのクレープにかけたら美味しそうだから」

「はー? ルカちゃんの身体に蜂蜜かけて食べたいと。腐だねえお前さんも」

「くっせーくっせー」

「あった。養蜂場の暖をとり続ける仕事か。これなら出来るぞ。早速面接に行こう。じゃあな出来損ないくん」

「あんだてめえ」

「まてやこら」


 慣れてるなーと思いつつここで私が割り込む。


「あんたらうちのここあになんかあるわけ?」

「んだてめぇ、仲間かあ?」

「あにき、こいつはちょっと様子が違います」

「怯えてんのか、てめぇ」


「やるんだったら表でなさいよ。殺したくないからパワーグローブ無しでやってあげるわ」 総合強化が2個、身体強化が2個、止めにバージョンアップが一回入っているので本当に殴り殺しちゃう……。

「おうおういったるわこんなチビに負けるはずないからのう!」

「兄貴、止めときましょう」

「じゃあお前はどっか行けや! 肝っ玉小せえなあ!」


 じゃあ外に、と、そこには茶髪黒目で身長190センチ以上、筋肉モリモリで袖の無い和服、焼けた肌以上に黒い肌のルカがこちらを見て和やかに微笑んでいた。


「なにかあったんですか? あずきさん」

「こいつとその子分がここあをおちょくっててさー。止めに入ったのよ。そしたら私にまで絡んできて。殴り合いをしたいそうよ」

「あ、あの、そういうわけではなくてですね」

「パワーアーマー持ち込みはOKですか」


 ここら辺で足がガクガクになる柄の悪い人A、もう逃げているB


「ぱ、パワーアーマー……本物の日本銀河帝国軍人」

「ここあさんの方が私より何万倍も強いのですがね。殴り合いの代わりに甘い物でもどうですか。ここに最中があります」


 なぜかおやつ吟味大会になり、足ガクガクのまま、恐らく味がわかっていないであろうなか、味を堪能することとなったAくん。


「ご、ごちそうさまでした」

「はい。もう小さいからって舐めた真似は取らないようにね」

「すいませんでしたー!!」

 一気に逃げだしたAくん。


「じゃーねー。実は一番弱いの、このおっさんなんだよー」

「まあさすがに一般人よりは強いと思いますがねー」


 ふう、こんなことをやっているうちにちょっと時間が遅れた。

 二人のお仕事あるかなあるかな。


「お、伐採の方なら空き枠があるみたい。討伐隊は今年はやらないのかな、掲示が無い」

「ここは広く平らな土地で魔物が隠れる場所が少ない上に、栄えているから討伐隊を自前で持っているかもしれませんね。後で確認してみます。おお、パフェ屋さんのアルバイトがあります。コーヒーを美味しく淹れる技術と共にアピールしてみます!」


 んで、ルカさんが持ち帰った情報によると、今年は自前でなんとかするとのこと。栄えている街は違う。自由都市みたいな感じだ。同人とかで需要がこの街には大いにあるのだろう。同人とかで。

 作家先生も数多く暮らしているらしいね。

 銀河にかけて売るんで、売れて印税が入ったらバカみたいなお金が入るのよ。

 その売れるまでの道筋がすんごく厳しいんだけど。

 雪乃先生とかバカみたいなお金持ってるはずだよ。メイシィシリーズ100巻超えてるからね。


 売れてみたいもんだ。

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