第16話 お宝や! ボス戦や!

 内部にいた豚どもを始末したとの報告をここあちゃんから受けて、生まれたところに帰る。


「ここは研究所だったんだよね。他に5人のアンドロイド実験体がいたけどみんな死んじゃったや」

「ほーん」


 開けられなかった所長の部屋へと近づく。


「残り香としては一番大きい場所だろうから、また100体くらい湧いてくるかもね。ここあちゃんが培養管を割って助けてくれたんだよねえ。結構懐かしいな」

「そういや拷問を受け続けていたって言ってたな。どんな拷問だったんだ」

「窒息するギリギリまで酸素を減らされて培養槽に幽閉。少しでも考えると窒息するレベルでね。考えられない状態で生かされ続けたんだ。それを一万年ほど」

「それはひどいな」


 そんなことを話しながら所長の部屋へ。私の右手を開閉センサーにかざし、部屋を開ける。

 中は当時のまま、では無くて物資が一杯積み込まれている状態だった。


「まずは物資を仕入れつつ、携帯物質生成機と携帯魔力結晶作成機を探そう。私のバックパックにどんどん詰めちゃってね」


 貴重な金属板、夜間用コート――やったー!―― 強靱だけどやわらかくて衝撃時には硬化する青い布、燃料効率が普通のよりよい再充電式魔力電池、とにかく無限な無限電源、水分を極めて大量に入れられる無限のキャンティーン、高級化粧品が無限に出てくる無限の化粧ポーチ、伝説の炊飯器、全自動調理器具、などなど。

 一万年前おかーさんが気まぐれで作った物が一万年後には非常に役に立つ物になっていた。

 そして――


「これじゃないかな、携帯物質生成機って」

「ミカさんそれかもしれないです。裏面に書いてあると思うんですよね。一万年前の言語じゃわからないだろうから見せてください」

「はいどうぞ」


 ミカさんからオートクッカーにしか見えない物体を手にする。


「えーと、ああ、書いてありますね。携帯物質置換機、この中に物質を入れて電源をオンにすると欲しいものに物質を置換するわ――とのことです。やりましたね。おかーさんは物質生成機と言ってましたけど置換技術を使っているんですね。物質置換機だ」

「一万年前の思い出だもの間違えることもあるわよね。それじゃあこれからは物質置換機と呼びましょう。やった。あとは魔力結晶生成機ね!」


 口調がだんだんとやわらかくなってきた(チッ)ミカさんと小躍りすると、ルカさんからも声が上がる。


「オートクッカーが携帯物質置換機なら魔力結晶生成機はこれでしょう。圧力鍋にしか見えないですがコードが付いています。電源を取る圧力鍋です」

「見せてください。携帯魔力結晶生成機。再充電式魔力電池への補給から魔力電池の作成、魔力コアの生成まで何でも出来るわ。電気で動作するから魔力結晶作るための魔力結晶が必要とかにはならないわよ――とのことです。これですね。拾った物資に無限電源がありますね」


 全員が顔を見合わせて、なんとなくここあちゃんを見る。当のここあちゃんは無限に出てくる再充電式魔力電池をバックパックに詰めるのに手一杯だったが。


 そんなここあちゃんから一報が。


「これインプラントじゃないか? オレンジ色だ」

「本当!? オレンジ色は最初に埋め込めてくれたとおり総合強化だよ! ただの女の子だった私が戦士になれたくらい強化される! やったー」

「ぽーい」

「てめえなにすんじゃこらー!」


 追いかけっこの末お尻のポケットに隠していたことが判明。お尻ペンペンですね。パァンパァンパァン!


「痛いよう、虐待だよう」

「あんたが変なことするから悪い」


 ここあちゃんへの教育も終わって、物資も軒並み手に入れて、悠々と帰る我ら。


 フィーに乗って帰ろうと外に出たとき、目の前の光景を疑った。


 フィーと、フィーを大きく上回る小さなアパートくらいある巨大変異体が戦っていたのだ。蛙型? 四つ足型? とにかく巨大でそんな感じの奴がフィーを攻めてる。

 フィーは一定間隔で身体を痙攣させている。脳に電撃物体が入り込まれた?


「なんだこりゃ!? フィー下がって、重荷電SAKURA粒子加速砲サクラ・フレア!!」


 片足を吹き飛ばすサクラ・フレア。しかし、骨が生えてきたと思うと肉が覆い、綺麗さっぱり元に戻ったのである。


「効いてない? 嘘でしょ?」


「あずきちゃん、見つけたよ。さあ、お家へ帰ろう」


「まさか、本物?」


「おちつけあずき。センサーで確認したが体積は減った。デカいから頭脳が発達して博士っぽく喋ってるだけだろう。再生させ続ければいずれ死ぬ」


「フィー、一旦大きく後ろに下がって! その脳に入り込まれた電撃物体を取り除く。所長を呼び出すから!」

「ミカさん、おかーさん呼び出すのはかなり危険だと思います!」

「だけどこいつを処分する前にフィーが電撃で脳をやられる! あずきお前みたく頑丈じゃないんだ! やるしかない! 私がフィーをエスコートするからとにかく遅延作戦で時間稼いでくれ。フィーが復活したら一気に逃げる!」


 そういうとフィーに一旦入ってすぐに上のジッパーから身体を出し、背の部分に乗ってフィーをどこかに連れ去った。


「あずき、やるしかない。久々のボス戦だ」

「ここまでデカいとストップは効きませんね。スロウとパワーダウン、ウィークポイントあたりでしょうか」

「エーテル補充は満タンだ。サクラ・フレアで吹き飛ばしてやる」


 覚悟を決めた三人はそれぞれのやり方でくそデブ野郎に突っ込んでいく。


 ここあはその超高速移動で目に近づき切り刻んで視界を奪う。

 ルカはスロウ、パワーダウン、ウィークポイントでデバフをかける。サブマシンガンで体積を削るのも忘れない。

 私は……


 護符をバックパックに入れる。


「私はここだぁ!!」


「あずきちゃんだぁ。早く結婚しよ、子供作ろう」


 注意を引きつけることにした。置換技術でナパーム手榴弾作って投げつけたりしながら。


「白い液体来た、スピード使って避けてっと」

「あずき、ナイフくれ。そろそろ駄目になりそうだ」

「あいよ、ナイフ出してーの、思い切り眉間にぶん投げてーの!」

「古いのは左目にぶっ刺してーの。新しいのありがとな」


 最近ここあちゃんがデレてる。ありがとだって、可愛いな。


「これは! 主力砲来ます!」


 ルカさんの声と同時に青い光がくそデブ野郎に入って大爆発を起こした。


「あぁー、あずきちゃんかわいいよ」


 ズブズブと溶けていくくそデブ野郎。身体が保持できなくなるくらいの威力だったってことか。


「徹甲榴弾ですね。ここあさん無事ですか!?」

「うん、主力砲が内部に入った瞬間に一気に上昇して逃げた。少し肉が付いちゃったな」

「すぐに取り除きましょう、電撃食らうかもしれません」

「私は護符貼ろうっと。肉付いてるから私も取り除かないと」


 などと行っているとフィーが登場。え。なにその格好。


「フィーに砲塔と車輪が付いてる……おかーさんなにやったの」

「ちょっとした改造。 ٩(ˊᗜˋ*)و 」

「ちょっとじゃなーい! フィーの身体は大丈夫なの?」

「大丈夫よ、基本ふせの姿勢から車輪生やしただけだから。 ٩(ˊᗜˋ*)و 砲塔は頑張って作っちゃった。 (΄◉◞౪◟◉`) 」


 まあいいか、強くなったんだし……。


 シャワー(ここあちゃんが一緒に入ってきた。私のおっぱいとか揉んでた)と自動手術機で念入りに肉を落とした後は、インプラントのお時間です!


「ひっさしぶりの僕の出番! それじゃー挿すねー! (´▽`*)」

 手術台に乗り、うつ伏せになって麻酔ガスを吸う。一気に意識が無くなって……。


「僕のペットを殺すなんてアズキチャンひどいよおおおおおおおおおお」

「次はもっと強力で精力溢れるペットを送り込んであげるね」

「ムヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」


 ふーん、かかってこいや。


「ねえええええええええなんで麻酔切れる時間におきないのおおおおおおおおおおお!?!? 。゚(゚´ω‘゚)゚。」

「今起きたよ。なんか悪い夢見ちゃうんだよね。手術ログみしてもらえるかな」


 ――――――――

 手術ログ


 インプラントタイプ 総合強化


 ・総合的なパワーアップ

 ・皮下装甲の強化

 ・脳の強化

 ・脳の電撃防御1段階強化

 ・脳に挿せるインプラント数の増加>128個へ

 ・エーテル生産の強化

 ・魔力電池スロットの4並列化

 ・反射行動および行動移行の高速化

 ・1細胞が出すエネルギーの上昇

 ・試作置換技術から置換技術の置き換え

 ・サクラ・フレアの強化。過負荷重荷電SAKURA粒子加速砲ブーステッド・サクラ・フレア重荷電SAKURA粒子付与拳サクラ・パンチの搭載

 ・手にハサミが生える


 以上

 ――――――――


 よし。よし。思い切り強くなった。

 インプラント128ヶ所も挿せるところあるのかって思うけど、インプラント挿入成長型アンドロイドにインプラントを挿すと脳内で溶けるんだよね。

 どこまで溶かせられるかって感じかな。

 サクラ関係が種類増えたのもよし。

 電撃防御が強化されたのもよし。

 これで2段階か。2回侵入されても大丈夫で3回入るとショックを食らう。

 わざと引っかかって自死してもらうことも可能だよね。気持ち悪いけど。


「あずき、どれくらい強くなった」

「めっちゃ。さあ、次はあずきからここあちゃんが主役になるよ。腕の再生だ!」

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