第13話 初めてキックしてみました

 激戦地に移動した我ら。


「白兵戦とは聞いていたが、こりゃー乱戦だな」

「ミカさん、口調が悪いですよ」

「は、はい。気をつけるぞ……気をつけるね。アタッカーを突っ込ませればなんとかなると思っていたけど、これはフィー含めて全員で勝負だね。散弾銃なら4つあるから、私とルカで後ろから撃ちまくる。散弾なら当たっても痛くないだ、じゃなくて、でしょ?」


 実際散弾銃なら私は皮下装甲、ここあは電磁防壁とったい表面装甲があるので怖くない。ライフル銃だとちょっと怖いけど。散弾ではなぁ。6番ゲージでも耐えられるね。散弾ではなぁ!


「ミカさんのパンチの方が怖いでーす」

「あたしのパンチの方が……ほら、あずきが痛がってる」

「お前処すぞ!」

「んじゃ準備して出発だわよ! 一番崩壊しそうな所に突っ込むかしらだわ!」


 興奮するとなに言ってるかわからなくなってるミカさんを筆頭に一番もろいところへ突入。ここあには私のナイフを使用してもらっている。ナイフは何本でも出せるし、乱戦でPピストルは危ないからね。腐ってもプラズマ。


「おりゃあ! 雑魚はいいから大型ゴブリンこないかなあ」

「200メートル先に大きな生物反応あり。人の反応もないから後方指揮官かと思われる」

「それじゃそこにグレネードぶち込んじゃえ」


 ドドン。爆発と共に周囲のゴブリンが恐慌状態となり逃げ始める。

 追う兵士を引き留めてサイド攻撃をさせるミカさん。

 これを繰り返せば状況は変えられそうだね。


「ここあちゃんの予想は当たったねえ。さすがここあちゃん、偉いねえ」

「ほ、褒めてもなにも出ないぞ。分析が当たっただけだ」

「撫でてあげよう、なでなでなで」


 ぶん殴ろうとする顔を見せるが、ここは戦場なのでグッと堪えるここあちゃん。堪えてる姿もかぁいいねえ。


 ぶちのめすように敵を斬る私と、踊るように優雅に斬り舞うここあちゃん。殴るよりも強い【斬る】を手に入れたのでゴブリン程度なら余裕だ。

「味方が予想以上に多すぎる。散弾銃じゃ駄目だなあ。フィー、刀吐き出してくれ」

「ばう」


 右パンチでゴブリンを1体潰したあと、ぺっぺと吐き出された刀。そんなの持っていたのか……。恩呼知真おんこちしんって貧乏チームだからそういうの持ってないと思ってた。


「ルカと私はこっちで組んで斬りかかる。フィーを中心に両サイドへ展開するぞ!」

「ミカって刀剣操れたっけ?」

「刀なら振り回してればゴブリンくらい砕くでしょ。大丈夫大丈夫」

「斬るじゃなくて砕くか。すげー不安、ルカさん、頼みました」


 ルカさんもそんなに得意じゃないけど状況支配があるからこっち優位にして斬りかかれるので特段不利にはならなそう。


 実際のところ一番上手く使えるのはここあで一番効率的に殺せるのは私なんだけど、後衛も突っ込めるなら後衛に渡した方が今はいいでしょう。


 さあ、突入だ!


 猛威を振るい始めた、たった5体。されど5体。混戦模様が変わっていく。混戦からこちら優位へと。するとその周辺も変わっていく。優位になって押した兵士がサイド攻撃となって周辺に攻撃するからだ。


「戦況はこちら優位に傾いてきてるな。一番危ない部分ってのは大概相手が一番強い部隊を投入しているからそうなるんだ。ここを逆転すればどこの戦線も逆転するぞ、踏ん張れ!」


 ミカさん口調、と言いたかったけどデカい声で周辺の兵士に声かけていたので我慢。実際士気は上がってるように見える。実際のところは知らんけど。目に見えるわけじゃあないからなあ。


「み、ミカさん! 相手に援軍が来たとのことです、僕たちはどうすれば……」


 オロオロする兵士達。


「アタックチーム突入! 後衛も散弾銃担いで突っ込むわよ! 目標は援軍指揮官! あんたらは普通に戦っていなさい!」


 ミカさんが一喝!

 よっしゃぁきたぁ! 敵将を取って一気に士気をそぐ作戦だ!



「フィー、私達の道を作って!」

「ばう!」

「いっくよーここあちゃん!」

「まかせろ、あずき」


 フィーの風の疾走! 騎兵でも使わないような化け物犬が走れば、どうなるかわかるよね。さらに古代のチャリオットのように風の刃を両足に付ければ。

 敵が千切れ吹き飛ぶのだ、がははははは。体高210センチメートルの全長295センチメートルだぞ。横幅はギンガクマを超える横幅! 最強、走らせれば最強よ! 


 これで敵将までの道は開けた! 突撃突撃突撃一番!

 一気にかけ出し敵将までたどり着く。敵将はジャイアントゴブリンだ。身長6メートルを超える大物ゴブリン。


「敵将発見! 一気に行きます! うおおお!」



重荷電SAKURA粒子加速砲サクラ・フレア!!」



 こんな巨体普通に相手にしてられるか。貴様なんぞサクラ・フレアで十分だ。

 足だけ残して消滅したジャイアントゴブリン。周りのゴブリンデスロードやゴブリンロード、ゴブリンキングなどを掃討し始める私達とフィー。


「おらぁハイキックでお陀仏だ! スパッツでパンツ見えなくてごめんねごめんねー!」

「次の危険度はこいつ。Pピストルで援護してるから問題なく挑んでいいぞ」

「バウウウウウウウ!」


 たまに散弾が飛んでくるが散弾程度では痛いくらい。散弾ではなぁ!

 ハイキックが気持ちよかったのでキックでどんどん頭吹き飛ばしているうちにトップが崩れてきたゴブリンが敗走し始め、こちらの兵士が追う構図に。


 勝ったな。



「敵主将が動き出した模様。無線であたし達に出撃要請がかかってる。行く?」

「行きたくないです……シオシオ」

「ミカが行くって言っちゃったね。最後の戦闘だ。気合い入れていくぞ、おー」

「シオシオ……行くのか。あ、ここあちゃんが気合い入れても全然気合い入らないね。可愛いだけ」

「お、やんのか」

「やんないやんない。もうヘトヘトなのに。ごめんねここあちゃん」

「ぐぬぬぬぬぬ」


 実際のところ、片腕のここあちゃんとくんずほぐれつしてもこっちが手加減するだけなんだよな。それじゃさすがにつまらん。

 普通に謝って回避しとこ。


 フィーの中でご飯食べておかーさんに身体の調整してもらってそれから向かおう……疲れたなあ。

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