第10話 おかーさん
「本当におかーさんなの?」
うんうん頷くくまさん。
「あずき、発声機構がこのくまさんには無い。あとミカたちも呼ぶぞ」
ミカさんたちが来る。何故かピンクちゃんまで着いてきた。
「わー! 本当に所長のデータだぁ! 僕はねー、6つに分断されて保管された所長を復元するために作られた、というのもあるんだよー! さっそくデータ移行していいかな!? (`・ω・´)」
「ミカ?」
「やっていいが一万年前のデータチップだろ。ボロボロなんじゃないか? 慎重に行なえよ」
わほーい! と言ってくまさんからデータチップを慎重に抜き取り、自分のデータチップ保存箱――頭の上部をパカッと開けると出てくる――にしまい込んだ――
「劣化しないように油液に浸けちゃうね! (*´ω`*)」
それから騒ぎながら作業を進めるピンクちゃん。すると!
「準備オッケー! 所長にも出てきてもらおう! (о´∀`о)」
と言って自分の頭上にホログラムを展開するピンクちゃん!
そのホログラムには所長がー!
「あ、あー。マイクテスマイクテス。どーもー、所長でーす。というか、あずき以外は私が誰か知ってるのぉ? あずき教えたぁ?」
「おかーさんだー!!」
「一万年前にあずきさんを作った人という程度の認識ですが知ってます」
あらそうお? 割と知られているのね٩(ˊᗜˋ*)و 。
などとホログラムに表示させるおかーさん。
「しかし最初に脳のデータを取り込めてよかったわあ。足だったら捨てられていたかもしれないものね。」
「たしかにおばさんの足なんでだれにも需要がない」
ここあいきなりぶっ込む。
「失礼ね! おばちゃんの足綺麗なのよっ。さて、本題は歩きながらしましょうか。ここもそうだけど、私の研究所は未来の誰かのために資材を用意してあるの」
中に入ると豪邸のような空間が私たちを迎えてくれた。
その豪邸にある物資を片っ端から奪い去ってゆく。
「このゴミ箱は亜空間に繋がっているからいくらでも捨てられるのよ。このコンロは電源不要なの。ガスも魔力結晶も要らないのよ。このトングは……」
「トングにまで加工してるんだねおかーさん」
「何にでも効果を付与しちゃうのよねえ、困った癖ね。その花瓶は生けた花がずっと綺麗なままを保つ花瓶よ。これは……」
「もうふぃーにはいるばしょがありませーん!」
「ならさっきのゴミ箱を食べさせて。空間が大きくなるわ。そもそもそのためのゴミ箱だもの」
食べさせたらズングッという音と共に空間がデカくなった。空間の壁が50センチほど後ろにずれた格好だ。確かにまだ入る……レイアウトを変えれば。ラウンジから個室から、配置全部やり直しだぁ!!
なんやかんやとやっていろんな道具が積載された。そして最後の物資。
「寸胴鍋型携帯物質生成機よ。これ単体では動かないわ。携帯物質生成機という製品の拡張版なの」
「うん」
「寸胴鍋型魔力転換機もあるわ。魔力結晶をその場で作り上げられるものよ。これも拡張版。元の製品が必要ね」
「うんうん、そして……」
「この二つで大量の魔力結晶と、ここあちゃんの右腕を形作れば、ピンクちゃんの手術で右手が治るわ」
「だよね! 場所は私達が出会った最初の研究所だよ! あの場所が封印される前に置いてあるのを見たことがある! ここあちゃんの腕を治そう!!」
ここあを見る。信じていいか迷っているみたいだ。
「ここあちゃん、本当に私のおかーさんっぽいから信じて大丈夫だよ、天才研究者だったんだから」
「そうよっ、天才だったのよっ。あ、便器の中にインプラントがあるから拾っておいてね」
「ね、ここあちゃん、くそったれな研究者だってことがわかったよね」
「仲が良いことだけはわかった」
便器の中のインプラントは、む、む、紫色だあ!!!!
「紫は何かすげえのかい?」
「世代交代だったはずだよ! 正確にはバージョンアップ! 次のバージョンへジャンプできる! 何もかも変わる!」
「変わっちゃうよー! マイナーバージョンアップでも結構変わるよー! (´▽`*)」
「か-わる、かーわる、まじかるかーわる」とピンクちゃんの手を取りながらくるくる回転する私。
おかーさんは魔力電池が足りなくなっちゃって電源オフになっちゃったので、ピンクちゃんとくるくる回ってた。ミカさんに邪魔って言われるまで。
室内の間取りや再配置はフィーがやってくれていたのでおっけー。ご苦労だったぞフィー、とお肉をバックパックから取り出して食べさせる。喜ぶフィー。可愛い奴め。
フィーの報告によると、本当にちっちゃいサイズには今回の拡張でなれなくなっちゃったそうで。フィーとしては生まれたての気分を味わいたいのだろうけど、私達としては小型犬サイズになってくれれば良いのでなだめあやすことにした。
「おー可愛いねえフィー。もふもふの毛並みが可愛いねえ、もふもふの首回りとか最高だねえもふもふもふもふ」
「くうーんくうーんくうーん」
「よーしよしよし、よーしよしよしよし、よーしよしよしよしよし」
「ばうばうーきゃっきゃっきゃ」
「ね、小型犬でも大丈夫だよね、ね」
「ばう!」
「一仕事終えて帰ってきました」
「なんであんたとフィーってそこまで中が良いんだい?」
「わかりません。ただよく私を丸かじりしてあむあむするので、犬のおやつ骨と思われている節はあります。今回もあむあむされました」
「確かにひでえよだれと血だ。全身洗濯機で洗ってきな」
そんなところを広くなったラウンジで喋っているとピンクちゃんが現れて。
「おかーさんよーん。なぜかマイクあったわよね、そこに置いてある奴。それ拡大変形するダブルガトリングガンだからよろしくね。後そこに刺さってる傘は超硬化膜で出来ている防弾装備よ。内側からは前が透けて見える形になってるわ。ダブルガトリングガンの弾は現代じゃあ当てはまるもの無いでしょうし、生産しないと駄目だけど。10式ライフル銃なんて今作ってないでしょう?」
「うーん、確か作ってなくはないですね。ただ外に出ないというか。使用銃は強い火力があるので今でも防衛に使われている感じで、そこだけで生産しているという感じでしょうか。伯爵領や位階10位など地位が高い人が使っていたのを記憶しております」
「なるほどーん、それじゃ生産設備を買い取るとかは無理だわー」などといって帰っていったおかーさん。
付いていってインプラントやってもらおうっと。
「いっくよー! ٩(ˊᗜˋ*)و」」
手術台が裏返り、麻酔ガスが出てくる。あっさりと意識を手放した。
「出来たよー! 起きてー! 起きないと泣いちゃうよー! (´இωஇ`)」
けたたましいピンクちゃんの泣き声と共に起床。麻酔がかかってるんだからそう簡単には起きないだろ……。
「起きたよピンクちゃん。んー、思考が早くなったかな。頭が良くなったというか判断がちょっぱやになった。手術ログみしてー」
――――――――――――
手術ログ
・脳全体の再設計
・脳に挿せるインプラント数の増加>64個へ
・恒常性機能の再設計
・エーテル生産技術の再設計
・反射行動および行動移行の高速化
・1細胞が出すエネルギーの上昇(既存の細胞とは通常の新陳代謝で置き換えられる)
・試作置換技術の搭載(エーテルを消費して物を置換できる。)
以上
――――――――――――
ほー、いろいろ変わってんじゃん。脳が置き換わって高速反応できるようになるし、スリムな身体で力が出るし、置換技術か、エーテル使うようだから魔法? の第二弾が出るし、エーテル貯まりやすくなる。恒常性機能も高まる。
「基礎技術だけどしっかり世代変わってそうだわ。基本ソフトが更新された感じだわ」
「よっ、一人前! おかーさん嬉しいわ! (΄◉◞౪◟◉`)」
「はいはい。おかーさんの身体を取り戻すのはちょっと待ってね。ここあちゃんの右手が最優先だから」
でもでも、
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