第9話 ワンインチパンチと土佐遺跡
「敗退、か」
「うちらが筆頭功績ねえ」
「サクラ・フレアで吹き飛ばしまくりましたからね」
そう、あの攻めは失敗したのである。ゴブリンの質が偵察より遙かに良かった。数も多かった。もっと人数が必要だったのだ。あと兵糧。
「とりあえず褒美は出るってよ。なにが良いよ」
「遺跡の自由探索、ですかねえ」
「この国が日本銀河帝国だったならここあさんの腕も手に入ろうもんなんですが」
すっかり自信をなくしてしまったここあは、ミカさん特製の料理と、ルカさん特製の甘いものを食べに来る以外は個室に引きこもっている。
それはしょうがないんだけどさ、右腕さえどうにかなればまた自信も、って思うんだよね。
私はアンドロイド不死研究にも使われたので、また生えてくるんだけど、ここあは完全なアンドロイドだから機能喪失なんだよね。
三千数百数十年生きてきて初めてのことだろうからなあ。
なーんか、……いや、あるぞ。
「ここら辺の遺跡を回ったらわたしを回収した遺跡に戻れませんかね? あそこにならここあの腕を元に戻す方法があると思うんです」
「結構遠いな。それは確実かい?」
「残っていれば確実です」
「かける価値はあるな。いこう」
まずはここ周辺の遺跡を探しましょう! そうしましょう!
「じゃあ、ここあ、行ってくるから」
「……行ってこい」
「フィーもよろしくね」
フィーにはここあを外に出さないようにお願いしてある。亜空間の王であるフィーならここあですら閉じ込めておける。
まずは一ヶ所目。アンドロイド施設。盗掘されていてなにもなし。
二ヶ所目。アンドロイド施設、インプラントを発見。赤色なので機能追加だ!
三ヶ所目。作者教の寺院だった。手術台があったけど機能していなかった
四ヶ所目。よくわからん洞窟。インプラントを発見。黄色なのでセンサー類の追加だ! ここあのマッピングがなかったので大いに迷った。
「こんなもんですか」
「あとは土佐遺跡だね。ここも発掘していいって許可が出ている。私達が言うまで存在を知らなかったみたいだけど」
「言って損しましたかね」
それでは土佐遺跡へまいりましょう。途中サーベル状の変態、じゃなくて変異体が群れで襲ってくることもありました。
「アズキチャンがいない!やぶれかぶれだ!」
「テリトリーに入ったアズキチャンもどきを全て殺せ!」
「サーベル状の変態を発見! すぐ出撃準備を!」
「私も出ます! いっくぞー!」
「護符が効いているからサーベル状の群れでも発見されないでしょうね。Rライフル持ちました。まいりますか」
寂しげなここあを置いてみんな出発。
早い以外は人間二人でもパワーアーマー――強化外骨格。力・スタミナ・速度などあらゆる方面で人体を拡張するアーマー――で防護できているので危なげなく掃討。
Rライフルのレーザー供給源である単1~3電池も大量にあるし当面は心配あるめぇ。
ちなみにボックスに電池詰めてライフルにセットするんだって。撃ちきったらボックスは回収して次のボックスにセットし直す。ボックス入れと回収袋は空間拡張されていて一杯詰め込める。よく出来てるねー。
一掃してラウンジ。
「パワーアーマー買って良かったですねーお二人とも」
「これで私達は常にフィーの上ってことはなくなるな。ここあに襲われたらひとたまりもねえけどよ」
「……襲わないし、もう襲えないよ」
「そんなことはありませんよ。Rライフル程度なら跳ね返しますがここあさんの超速度キックの衝撃だと壊れてしまうと思います」
「んじゃ、インプラント挿してくるわ。黄色と赤、なんだろねー」
ピンクちゃんにインプラントをぶっ刺す。
「わはー! えーと、黄色がセンサー類向上と赤が機能拡張だねー! なにが強化されるかはわかんないやーてへ †┏┛墓┗┓†チーン」
「センサー古かったから嬉しい! ロックオン数増えるかも? なにが拡張されるんだろうねえ。工具こい工具こい工具こい」
「それじゃ! インプラント挿すよー! 手術台に上がってー! (´◉◞౪◟◉)」
ちき
ちき
ちーん
「出来たー! どう? どう? ٩(ˊᗜˋ*)و」
「センサーは機能拡張でアイカメラ、じゃなくてアイセンサーも向上させないと本格的な向上にはならないね。でも360度センサーとロックオン数16までは増えたよ。アイセンサー上使えるロックオンは8くらいかな。情報が凄い入ってくる。おお、無線が内蔵されたってアイセンサーの情報にでた!」
「おー! やったね! 機能拡張はどうだった? 糸鋸だった? (*^_^*)」
「……左腕から刃渡り20センチ全長30センチのナイフが出てくる」
「えー! その大きさでナイフなのー!? ?*(゚∀。)?」
出してみるね。……でっか! 私の腕から包丁より大きなナイフが出てるんですけど!? 取っ手は肘から出てるんかな。あ、これ無限に出ますね。 これ抜かなければ左手で斬撃ガードできるなあ」
「毎度のごとく最強の切れ味なんでしょう? ピンクお料理するからその時貸してー! ٩(ˊᗜˋ*)و」
だめー! とあしらいながら、だいぶ強化に繋がったなあと思う。刀剣の入手だもんね。しかも無料。研ぐ必要なし。
ただ、魔力の素であるエーテルを使うみたいなので、エーテルのたまりが遅い私、無限に出して遊ぶのは止めた方が良いかな。魔電池を直列2個の並列3つで胸の下、あばら骨付近に入れられて、エーテルが貯まる速度を増加させられるもしくはエーテルの代わりになるんだ。サクラ・フレアくらいしかエーテル使わなかったから今まで放置してやってこなかったけど、これからは常時付けた方が良いね。ここも多分成長するんだろうな。
さてと、土佐遺跡ですね。扉の全長23.45メートル。見た目バリアが張ってあって入れない感じですね。
「何だろうなあ。バリアを止める必要がありそうだなあ。フィー、そこら辺の木をバリアに投げてみて」
「ばうばう」
そこら辺の木を歯で折り取って、ぽーいと投げるフィー。すごい。でもゴブリンジャイアントデスキングロードには押され気味だったんだから世界は広いね。フィーでも倒せなかったってことだもんね。
その木はバリアに当たるとジュワーと消えていった。ふーん。
「拒絶系じゃなくて積極破壊系のバリアですか。まいりましたね」
「この模様見たことあるんだよね。ツルって鳥が羽ばたくときの模様。
「……あたしも出ていいか」
「すまん、あのバリアに突っ込むんじゃないかって疑惑がある。リーダーとして許可できない」
下を向くここあちゃん。
「ここあちゃん、必要になったら呼ぶから」
「そんな事態こないよ」
「くるよ、だって遺跡調査にはここあちゃんが必要なんだもん」
フィーから降りる。グルッと見渡す。すぐにセンサーが違和感をキャッチした。
最初にここに来たらセンサーが反応しなかっただろう。出来すぎだよこのストーリー。
センサーの違和感は遺跡の左右対称にあった。右側の違和感に近づく。長年の積み重ねで何かが埋まってしまったようだ。早速ナイフで削り取っていく。
「認証センサー……?右手だ。文字が書いてある。子供達へ。じゃああっちは」
「やっぱり認証センサー。今度は左手。文字は……私の可愛い。私の可愛い子供達へ。
アンドロイドだ。フィーを通して室内無線を送る。こんなことも自動でやってくれるあたりセンサー向上って重要だね。
「ここあちゃん。ここあちゃんってなに製? ニーア重工製?」
「……ああ、そうだよ。実際はニーアテクニカル重工製だけど、ニーアの直系だ」
「じゃあ可愛い子供だ。出番が来たぞバカ娘。左腕を持って遺跡左側まで来いざーこ」
むすっとした顔で遺跡左側まで来るここあちゃん。抱きしめようとしたらワンインチパンチで吹っ飛ばされた。まだまだやれるじゃん。
「で、この認証センサーを触れば良いんだな」
「うん、じゃあ私右側行くから。あぢゅー」
そしてせーので認証センサーを触ると、バリアが消え、ゴゴゴゴゴという音と共に扉が開く。
中に居たのは……。
中にはボロボロになったここあちゃんくらいの大きさのぼろぼろのクマのロボットが仁王立ちしていた。クマがホログラムを頭上に展開する。その姿は、この姿は、
「
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