第6話 ぶち切れたここあ

「ほー、真っ黒な身体に博士の顔。身体は筋肉質な身体、頭部は博士の顔の上部にみょーんみょーん伸びる触覚が一つ」

「アズキチャン、アズキチャンどこ?」

「視力と嗅覚、聴覚ないんかな? 目の前におるけど。護符が効いてるということかな」


ルカさんが解体を始める。目の前で生きた動物解体ショーが見られるなんてシアワセダナー。


「アア! アズキチャン! アズキチャン痛いよ気持ちいいよ!」

「すぐ殺せるよう頸動脈をギリギリまで切り裂いたのですが、発声機構はありそうですね。では触覚を切断してみましょう」


ブシュッとな。おほー、白い液体が出てきた。


「おちんぽが、おちんぽがなくなちゃった! アズキチャンに白い液体を届けられない!」

「凄い所についてるわね……念のためあずきちゃんは離れといてね」

「え、アズキチャン、アズキチャンいるの!? どこ!?」

「私の護符が効いているようですね、見えない聞こえない匂いも届かないんでしょう」


かわいそうに。目の前にいるのにね。護符の単1電池見てみると、かなり減っていた――現代の魔電池には横に残量のインジケーターがあるのだ――ので予備と取り替えてから単1電池を交換し、予備と交換して終了。こんな行為をしていることもわからないんだろうなあ。


うわ、そんなことをしていたらルカさんがとことん切り刻んで研究をしていた。

目玉ないしぽこちんももっと切り取られているし、奥の玉金にはメスがぶっささり。剣状の武器は切り取られていた。

ルカさんマッドォ……。


「剣状の武器はさほど鋭くありません。筋肉が発達しているので剣状の武器でも切れるみたいですね。サーベルキャットを先に話していたのでサーベルかなと思ったんですが全然そこまで鋭くないです」

「悪かったな変な予測立てて。あずきのばーか」

「お、やんのか」

「やんだよばーか」


急に始まる喧嘩。地面で行うので私が圧倒的に不利なんだけど。ここあが速すぎて視界に捉えられない。しかも今回切れてるからまじで何にも出来ない。

ただ、殴り合い宇宙そらなので……。


「殴られた瞬間キャッチ! って馬鹿野郎私ごとブースターで空中に持って行ってんじゃねえ! 切れてるからってやり過ぎだあんぽんたん!」

「うるせー空中から投げ落としてやる。未来で会おうな」


ぶんぶん足を振り回す。マジで落ちる。もう空中200メートルくらいは上昇している。やばい。

頭をぽかぽか殴る。これは落ち着けの合図。ただし今回は合図を無視してる。


「いくら何でもやり過ぎ! 中止中止!」

「がおおおおおおおおん!」

「フィー!」


成層圏突破しそうな勢いで上昇していたところをフィーが空中ジャンプしながら追いついて、ここあを上回る機動でここあを押さえ込んで口から飲み込む。ついでに私も飲み込まれた。


「ラウンジだ。危なかったー。ここあ、フィーが飲み込むのはさすがに駄目だよ」

「うるさいな! どうせ私の推理はポンコツだよ!」

「推理は外れるもんだよ。撫でてあげるからこっちきな」


無言で私が座っているソファーに腰をかけ、私の太ももに頭をぽんと載せる。

ナデナデしてやると、目から涙が滲み出る。まだまだ若い、自分は天才だと思っている子だからね。こういうこともあるよ。


「フィー、急いで降りてね。ミカさん軽武装しかしてない。ここあ、地面まで先に行ける?」

「……うん」

ここあは横のジッパーから外に出て行った。


「ここあ! お前はこの部隊最強なんだからもっと自覚を持ってくれ! あーだらこーらだ――」



「ここあ、相当絞られてますね」

「ミカさんも特殊部隊出身ですからね。規律の重要性をわかっています。私も戻ってきたときに一喝しましたよ」

「じゃあお母さん役は私か。まあ一番長生きですからね」


所長おかーさんみたくおかーさん出来ると良いんだけどなあ……なかなかそんなに上手くいきませんよねえ。

などと思っているとここあがとぼとぼとやって来た。


「ここあ、大丈夫かい」

「――ごめんなさい。死ぬような所までいって」

「まあそれはそうなんだけど。推理は誰でも外すからさ、それはしゃーなしよ。フィーがいるから死ぬようなことにはならないけど、成層圏まで上昇するのは危ないと思うな。ブーストも風を取り込んでやってるんだよね?」

「――ブーストはそう。あ、無限に出せる無限エネルギー放出器官がある」

「死なねーなそれ。じゃあアタッカーがコマンダーとヒーラー置いていったということ以外は大丈夫じゃん。ギューしてあげるからこっちおいで」


それ一番悪いんだけどな、とつぶやきつつ手を広げる。

一歩足が止まったらこっちが一歩近づく。

もう一歩足が泊まったらもう一歩近づく。

近づく、近づく、砂を蹴りかけられる。


「ぺっぺ、ぶっ殺す」

「へへーんだ」

「WAZA【ダッシュ】。先制勝ちだバカ」


戦闘態勢に入る前にこっちから接近して頭を抑える。


「パワーグローブを起動して、と。ぐりぐりぐりぐりー!!」


頭ぐりぐり攻撃である。


「痛い痛い痛い痛い! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

「誠意が足りんな。ぐりぐりぐりぐりー!!」

「ごめんなさいー!!」


ま、こんなもんでしょ。痛みをカットしないあたり本当に反省しているよ。

フィーもよく頑張った。成層圏付近じゃ息できなかったでしょうに。不老不死とはいえ息できないのは窒息するから危なすぎる。


そんなこんなでルカさんを見ると全て解体されていた。


「わー標本みたい」

「発信探知器官はこれですね、あずきさんの脳から発信されているGPS発信器の波長を流すと強く反応します。脳に付着しています。異常に肥大して脳が圧迫されており、これが理由となって普段はなにもしない個体が動き出して見境無く攻撃したものと思われます。あずきさんのGPS発信が消えたから暴走したのかもしれません。付近に女性が受けた傷と同じような傷の死体があるのではないでしょうか」


ここあが探索したところ、何体かの死体を発見したそうだ。それと、洞窟を一つ。

ここあとミカさんが中を調べたところ、インプラントと祭壇が一つ。博士教の祭壇だそうだ。れいのあれにインプラントが刺さっていたらしい。

わーきもーい。でもインプラントはほしい。インプラントに罪はない。

インプラントの色は青色で、身体強化をするインプラントだった。ピンクちゃんに取り付けてもらおう。


「わー! やったねー! インプラントは挿しちゃえばどんなインプラントでもインプラントだから問題ないよー! ٩(๑•̀ω•́๑)و」

「まああれに刺さっていたってのは嫌だけどね。お願いしまーす」

「わかったよー! それじゃ手術台をセットー! やっりまーす!₍₍ ◝(•̀ㅂ•́)◟ ⁾⁾」


ぬんぬんぬん。


ちーん。


「出来たー! WAZA【パワーアップ】も付いてきたみたい! (´◉◞౪◟◉)」


おおー力がみなぎる。厳密には身体ではないけど皮下装甲も強化されたみたいだね。ついでにセーラー服の性能もアップしました。スパッツが右手の裾に追加で付いてきて、切り取って穿けばハイキック出してもパンツ見えない。防御力も高いので秘部を蹴られても安心設計。って、所長おかーさん、なんでそんなこと出来るの……。インプラント装着でセーラー服が更新されるように私を作ったのは所長おかーさんである。


気を取り直して試しに近くにあった私の背丈の半分くらいある岩を殴ってみたところ、簡単に粉砕することが出来た。

移動も速くなった。素で100メートル10秒台くらいでる。スピード使えば8秒台か。そこにパワーアップ使って筋力をさらに高めれば6秒台は出る。WAZAの同時使用なんで効果時間は一瞬だけどね。効果時間は脳が拡張しないと伸びないはず。所長おかーさんが言っていた記憶がある。


街道に出て宿場町まで行き女性を下ろし、一件落着となったのでございます! 良かった良かった!

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