第4話 なぁんでぇ。べんりじゃぁん。
「は? 左手を工具にする必要もうないじゃない。パワーのある魔力結晶製工具が揃ってるんだし」
私の左手工具計画は無碍に却下された。なぁんでぇ。べんりじゃぁん。
「人がやるならあたしが指レーザー出力上げて薪を作れば良い。薪の腕は要らない」
「やだやだ私も出来るようになりたい。インプラント一杯挿したい」
「インプラント挿したいだけでしょ、あんた」
ミカめぇ、中原ミカめぇ。
ミカに拒否されたら無理なのである。
部隊のリーダーは彼女だから。部隊の創設者はルカだけど。
「まあ、インプラントを手に入れて、それが工具だったら普通につけても良いんじゃないですか? あずきさんの強化は現在の大きな目標ですし」
「んー、それはそう。あずきが加入したからインプラントももう売らないしね。無理に買ったりはしないけど、遺跡とかで手に入ったインプラントが工具だったらつけても良いわよ」
「やたー、私の時代のアンドロイドはインプラントつけて拡張していたので、工具系は多くあるはずです! 絶対見つかるぅ」
ウキウキでルカさんが作ったクレープを食べる。うーん美味しい。生地の甘さが引き立っていてそれだけでも美味しい。そこにホイップとイチゴのハーモニー。心がるんるんになる。
みんなで三時のおやつタイムだ。フィーには放り込むと異空間を通して胃袋に繋がる場所があるのでそこに放り込んだ。ばうばう言って喜んでいる。
「そろそろ交代だしここあにもあげてくるー。フィー、上のジッパー開いて」
「ばう」
フィーが自分から上のジッパーを開いてくれる。
フィーは自由に身体を変化させられるが、通常時の姿だとギンガクマより幅広くこの星の改造農耕馬より背が高い巨大犬なため、普通に歩いていると通行者をびっくりさせたり敵対させてしまう恐れがあるのだ。
なのでいつもはここあとミカさんそしてルカさんが騎乗(
交代制だけど、昼間はミカさんルカさん夜間はここあな場合が多いかな。ここあは夜間の寒さを克服しているし、夜目も暗視出来る目だから効くからね。寝なくても良いし。私はフィーから出ると博士に見つかるのであんまり交代しない。
以前普通に騎乗していたら鳥型の博士の変異体――私を狙い電気ショックをさせてきて、白い液体をまき散らす博士の性質を持っていて、蛙型や顔が3つ付いている異常型などを総じて変異体と呼ぶことにした――の群れに狙われてしまってね。
酷い乱戦と私の中に二匹入り込んで私が電気ショックを食らった――総合拡張するたびに一匹入り込んでも大丈夫な耐性がつくらしい――こともあって私はなるべくフィーの中なのだ。入り込んだ異物はフィーの亜空間内部にある手術機械でとれるからまだ良いんだけども。
「ここあちゃーん、クレープだよー」
「なにがちゃんだこの野郎やんのか」
「お、やんのか」
「ざけんなこら」
突然始まる喧嘩。ちゃん呼びされることが嫌いなんだって。
フィーの上での喧嘩なので組み合いになる。関節締めようと思ったけどここあには効かず、頭の下に潜られてからの、頭突き連打を食らって私の負け。
「いつかここあちゃんって呼ばさせるからな。痛い! 子宮を蹴るのは止めて! 子宮が泣いちゃう!」
「絶対認めない。じゃあクレープ食ってくる」
「あい、騎乗しとくよ。護符とお守りは持ってある」
喧嘩中伏せていたフィーが立ち上がって移動を再開。キャンティーンを暖めたのと冬服に切り替えてきてある。キャンティーンの水は飲み水もかねている。
冬服は上から下まで全部夏物と取り替えるけど、防寒性が高い。
もしくは恒常性機能の向上って言うインプラントを見つけるか。総合拡張か世代更新でも良いと思う。
恒常性は身体を一定に保とうとする機能全般のことを言うんだけど、温度変化に強くなるのも恒常性機能なんだよね。傷とかも元に戻そうとするから治りが早くなるよ。
飲み水で思い出したけど、私は代謝率が100%なのでおしっこもうんちもしない。
そのためじん臓も排尿のために生成する尿は作らない。だから尿路はあるけどほぼ使われない。
大腸はあるが途中で分解され尽くすため、これまた肛門はあるけどほぼ使われない。
世代やアンドロイドの使用目的によってはお尻エッッするために作られた肛門もあるってここあちゃんが言っていたけど……。
私は最初のアンドロイドだからね、念のため残したって感じ。機能不全で出さないといけなくなることもあるからね、って所。
まあ、最初だったからねえ。そもそも作れるかどうかもわからなかったし。
理論上の代謝率100%は私で達成しているのだ。アンドロイドに老廃物という概念はほぼない。
全てエネルギーとして再利用される。はずだったんだけど。
ここあちゃんは老廃物を排泄するんだよね、おしっこで。
無限エネルギーを動力源に持っているので食べることに意味がなく、エネルギーとしても利用する必要がないとのこと。
ストレス解消になるので食べる器官はあるしもったいないからエネルギーにもなるけど。
代謝率はおしっこで済ませられるほど高いとはいえ、そこまででも無いようだ。
せっかく代謝率完璧にしたのに後世では下げてるんだもんなあ、なんかむなしいよねー。
なんて思っていると、フィーがバウバウ!と鳴く。
「どうしたの?」
「ばう!」
「前方? ああ、人が倒れてる!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます