第4話

「僕、ずっと美緒みおをこの部屋に飾ることができたらいいなって思っていたんだ」


 美緒、だって……?


「ようやく叶ったんだ。僕のコレクションを見てよ。美しい蝶だ」


 雄介ゆうすけは恐る恐る標本箱に目を向け、

「うわぁぁぁっっっ!」

 と悲鳴を上げた。

 無残にバラバラになった遺体が、あまたの針で固定されていたのだ。


「殺したのかっ?」

「殺さなきゃ、標本箱に入れられないよね?」


 斗真とうまは平然と言ってのけた。だが、その目は狂気に満ちていた。


 サイコパスだ――。


 そう悟った瞬間、雄介はその部屋を飛び出していた。

 だが、勢い余って山積みになっていたドイツ箱に激突し、ガタガタと音を立てて崩れ落ちたのだ。 


「うあっ」


 雄介はその場に転倒し、長年憧れていたドイツ箱に埋もれたのだった。

 慌てて体の向きを変え、じわじわと近づく斗真を睨みつけた。


「お前、頭おかしいって」


 雄介の声が上ずっているのがおかしいのか、斗真が口元を歪めている。


「標本って最高だね。でも、僕、標本作りより、もっと面白いことを見つけてしまった」


 と言う斗真の右手には、鋭利な刃物が光っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る