無敵の箱

温故知新

無敵の箱

「ちょっと! ここから出しなさいよ!」



 とある山奥にある高層ビルマンション。


 大自然の中にポツンとそびえ立っているこのマンションは、AIによって完全管理され、最低限の生活が保証されている。


 そして、このマンションの住人達は全員、『無敵の人』と呼ばれて連れてこられた人達だ。



「おい! 俺が一体何をしたっていうんだよ!」



 自立型アンドロイドによって無理矢理閉じ込められた彼らは、皆一様にこう口にする。



『自分は悪くない』と。



 言葉だけなら聞こえが良いだろう。


 だが......



「ムカついたから殴って何が悪い!」

「あっちが訳分からないこと言ったから、頭に来たら人を刺したって良いでしょ!」



 そう、ここの住人達は全員が『自分が正しい』というかなり歪な思想を持って、他人や社会に大きな害を与えた。


 これで自分の愚かさを反省しているなら、罪として法に従って裁けるだろう。


 しかし、自分の行いが絶対に正しいと信じている彼らは絶対に反省しない。


 故に、頭を冷やして反省をして欲しいという目的でこの場所に連れてこられたのだ。



「さっさと出せ! 俺は、屁理屈を言いやがったアイツを殺しにいかないといけないんだ!」



 この場所を出るには、彼らが自分の行いを反省すること。


 ただそれだけ。


 だがしかし、『反省』という概念を忘れてしまった彼らが出られるかは分からない。

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