ホラー 戦争中に……第三勢力だと?

「地下だ! 地下へ逃げ込め!」


ある国と国の戦争中、追い詰められた俺達は見知らぬ街の地下水路へと逃げ込む事になった


「逃がすな! 追え!」


当然、敵兵も俺達を追ってくる。しかし、しばらく水路を逃げていると周りの風景が変化していた事に気が付いた


「なんだ、ここは?」


水路が無くなり、いつの間にかただの通路に。そして、その通路のそこかしこには奇妙な空間があった


そこを覗くと、訳の分からないものばかりが見えた


「いたぞ! ……? なんだ、この空間は」


敵兵も追いついてきたが、敵にもどうやらこの空間に心当たりが無いようだ


「何だこの気持ち悪い人形は!」


敵兵の一人が、通路に置かれていた肌の真っ白な人形に銃を向ける。そして、何を思ったのか無害であるはずの人形に向かって弾を1発、発射した


「ぎぇえええ!」


その瞬間、人形から血しぶきがあがり、その体を赤く染める。そして、まさか人形がそんなことになるなんて思ってもいない敵兵は、呆然としてその返り血を浴びていた


人形は、むくりと立ち上がると、体を口に変えてその敵兵を飲み込んだ


「馬鹿な!」


近くに居た敵兵が、その行為を止めようと発砲するが、血は出ても行動を止める事は無かった。そして、その敵兵の後ろから、別の人形……こちらは藁で出来ているようだったが、その人形に首を斬られて死んだ


「うわぁああ!」


残った敵兵は必至でこちらに走ってくる。俺達は、その敵兵に銃を向けることは出来なかった。なぜなら、気持ちは同じだったからだろう


「ここから、脱出しなければ!」


味方3人、敵兵2人の5人で、通路の奥へと走る。戻るにも、すでに入ってきた場所は良く分からない物体で埋まってしまっていた。下手に攻撃すると、何が起きるか分からない


ライトを照らしながらさらに進む。幸い、あれ以来変な物に襲われてはいないが、時々こちらを向く人形や、突然血が流れだす壁、急にほほ笑む絵などがあり、気が狂いそうになる


「はぁ、はぁ、あれ?」


俺は、走っている人数が6人になっているのに気が付いた。当然、味方の2人の顔は分かる。という事は、増えたのは敵兵か?


「そっちの人数、増えてないか?」


「あ? お前たちの仲間じゃ無いのか?」


お互い、知らない一人を見る。服装は戦闘服のようだが、俺達とも敵兵とも違っていた


俺達が気が付いたことがうれしいのか、そいつは顔をぐにゃりと笑顔にした。その時見えた歯は、人間の物とは違って鋭い針が並んでいるようだった


「あー!」


そいつはその口で、味方の一人の肩に噛みつく


「ぎゃぁあ!」


鋭くとがった針は、簡単に肩に食い込みはずれないようで、体を振っても外れない


「くそっ、死ね!」


もう一人の味方が、拳銃を取り出し、そいつの頭に銃弾を撃ち込む。その衝撃で肩からは外れたが、標的が拳銃を撃った味方に変わった


「あー」


顔の4分の1が吹き飛んだにも関わらず、そいつは死ぬ様子もなく、拳銃を持った手に噛みついた


「ぐあぁっ!」


手は、あっさりとそいつの口に切断される


「こいつ、離れろ!」


敵兵はそいつの体にアサルトライフルの銃弾を撃ち込むと、数メートル吹き飛んで動かなくなった


「今のうちだ!」


俺は食いちぎられた手を、ハンカチで止血してやる。すると、さっきのやつが再び動き出すような気配があった


「逃げろ!」


4人で逃げる。肩を噛まれた奴は、貧血か失血死したようで倒れていた


「どうなっているんだ!? なんだ、ここは!」


「俺達も知らん! 地下にこんな場所があるなんて聞いていないぞ!」


敵兵ですら、やはりこの場所がなんなのか知らないようだ


さらに進むと、ライトが要らなくなるほど明るくなってきた


「出口か?」


俺達は、明るい場所へと飛び出す。しかし、そこは外ではなく、何かの工場の様だった


それも、すでに稼働を終えて数十年は経っていそうで、配管は錆びだらけ、壁は油か何かの染みでいっぱい、地面にも何の液体かわからないものが飛散していた


俺達は、他に逃げる場所も無いのでその工場へと足を踏み入れる。しかし、そこは先ほどとは比べ物にならないほど混とんとした空間だった


綺麗な花が咲いている。その花の中に血で染まった死体が半分埋まっている


黒板がある。その黒板には目があった。そして、血の涙を流している


スピーカーがある。そのスピーカーには口があり、ぼそぼそと何かを呟いている


「俺達、どうすればいいんだ?」


「恐らく、ここに何かあるはずだ。それを何とかして脱出しよう」


「何かって何だよ! あいつら、何なんだよ!」


最後の味方は、冷静さを失い、叫ぶ。俺だって、それで解決するなら叫びだしたい


「お前ら、静かにしろ。変なやるらに見つかるだろ」


「……悪い」


敵兵に注意され、俺達は黙る


「俺についてこい、俺が先頭に立ってやる」


そいつは、勇敢にも先導してくれるようだ。こんな良く分からない場所で、よくそんな事が出来るなと感動した


だが、そいつの頭を最後の一人がアサルトライフルで狙っていた

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