元カノ、ファイリング【KAC20243】

かがみゆえ

元カノ、ファイリング

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 彼氏の家には箱がある。

 厚紙に色画用紙や折り紙を貼り付けて作ったと彼氏が言っていた。

 大きさはA4サイズで、厚みは5cmくらいだろうか。


「ねぇ、これ何が入ってるの?」

「思い出だよ」

「中身見ても良い?」

「良いよ」


 彼氏からオッケーをもらったから箱の蓋を開けてみる。


「領収書に……なにこれ?」


 箱の中には領収書。

 あとは5cm×7cmのチャック付き収納袋。

 袋に入っているのは、黒い糸と小さな何かの塊。


「それ、髪の毛と爪だよ」

「え、誰の?」

「元カノ」


 悪びれもなく彼氏は言う。


「元カノの?」

「うん。元カノの髪の毛と爪」

「なんで?」

「なんでって何が?」


 どうしてそんなものを箱に入れているのか。

 どうして元カノの髪の毛と爪があるのか。

 どれから聞けば良いんだろう?


「証拠だよ」

「証拠?」


 最初にどれを質問するかを迷っていると、彼氏が教えてくれた。


「彼女いたって言うと、周りは嘘だって信じてくれなくてさ。身体の一部を持ってれば彼女がいたっていう証拠になると思ったのが始まり。手っ取り早いのが髪の毛と爪だったんだ」


 箱の一番下には彼氏と見知らぬ女の子とのツーショット写真があった。

 黒髪ロングの可愛い女の子だった。

 ツーショット写真は、証拠にならなかったのかな?


「元カノ、よく髪の毛と爪くれたね」

「ううん。頼んでもくれなかった」

「ん?」

「頼んでもくれなかったから髪の毛は櫛についたものを、爪は寝ている時に少しずつ切って集めたんだよ」


 楽しそうに彼氏は語った。


「元カノに歴代の彼女の箱を見られちゃってさ。気持ち悪いってフラれちゃったんだ。勝手に見たくせに酷いよね」


 元カノは自分から彼氏の元を去ったようだ。

 彼氏には元カノ以外にも彼女がいたらしい。

 箱はあといくつあるんだろう?


「君はこれを見てどう思う?」


 大事そうに箱を持って、彼氏が私に尋ねる。


「私の時は、オレンジの色画用紙を貼ってね」


 気持ち悪いと思う前に、私は彼氏にそう言っていた。



- END -












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