参章 異形の墓②

桜霊祭が終わり自宅に帰る時、住職に言われた通りに他の4人を集めた

寺に向かっている時にはひぐらしが鳴き喚き空が焼けていた


「ねぇ千夏、その式さんっていう住職怪しくない?」


寺に向かう道中で5人で千夏がまこととの出会いについて話していた

4人とも千夏と同じように何故、着物の少女の話に食いついたのか気になっていた


「まぁ、秋菜の言い分も分かるけど、実際にあの人の表情を見ていて何処か悲しそうな感じがしたんだ」


「悲しいことでもあったのかな」


「さぁな、寺でまたこの話をしてみるか」


「千夏くんが言ってた若い住職さんってあそこにいる人ですか?」


ハルが指差した方向に若い住職の服を着た真が出迎えてくれており

笑みを浮かべながら手を振っていた


「あの人で間違いないの?」


最終確認を冬花は千夏に問いかける


「あぁ、あの人で間違いない」


「やぁ、皆さんこんな夜更けにお越しいただきありがとうございます」


「真さん、今朝の続きの話を…」


と真は人差し指を口の前に添え千夏の言葉を制した


「その話は寺の中で話しましょうか、もう外は夜になります、

夜はなので」


真は言葉を含ませながら千夏達を寺の本堂まで案内した

寺の本堂まで案内し座布団に座り込み真の話を聞く準備が整った


「さて、ここまで来てらもったのは他でもない千夏くんが出会った方についてのお話です

これは、貴方達にも関係…いや、お家のお話になります」


「え…南条家にもですか?」


「秋斗、私達何も言われたことないよね家の話なんて」


「う、うん聞いたことないね」


「じゃあ、俺が会ったあの少女はこの3つの内の誰かの人間なんですか?」


「ご明察、貴方が見た彼の方は千夏くん…貴方の叔母にあたる方だと言われています」


「え…そんな、家の仏壇の上にそんな若い遺影なんて無いですよ!!」


「……これからそのことについてお話いたします」


「あれは、今朝行った「桜霊祭」の起源となった物です」


あれは、大正時代の戦時中で劣悪な労働環境の中で続々と動けなくなる者が増えていく中で東条家の分家で送られた男がいた

その男の名は五十嵐東悟いがらし とうごといい休憩中や消灯の時に抜け出してある女の子と会っていた

その女の子は東条家の子で名は東条夏江とうじょうなつえという活発で明るく元気な女の子だった

また、その労働の補助として四季神社の家系でお使いにでていた式遥しきはるかという見習いの子とも仲良くなり3人で、しばらく青く儚い夏を過ごしていた

それは長く続くわけもなく東悟の仕事量は次第に増えていく一方で扱いも雑になり始め劣悪な環境が続いていた時、当時流行していた結核が広がり東悟も感染してしまった

治療方法は発見されておらず何も手当もされることもなく次第に体は変色していく一方で女の子は噂で症状が緩和する代物があると聞きつけ

父に頼み込んだが一介の分家にそのような代物を渡してくれるはずも無く

この村の方針は厳戒げんかいで了承は得られるわけもなかった

また東悟と夏江は密かに愛し合っていた、遥も二人の事を応援していたので式家にも応援を求めたが期待はできた物でもなく藁にもすがるしかない時、ふと夜中に二人で枝垂れ桜を見に行った事を思い出した

桜には万病に効くとされており村では頑なに管理され東条家、南条家、北条家の限られた人しか触れられなかった

そのことを夏江は思い出の桜の元に駆け寄り桜の皮を採取していた時に本家に見つかり罪に問われ暴行や監禁され一切の外出を禁止された

外の事は遥が逐一東悟の容態や内部情報を報告してくれていたが

ある真夏の日、東悟が死去した事を知った夏江は狂ったようにえ苦しみ悲しみに明け暮れていた

そして、飲みも食わず衰弱していき静かに牢屋で息を引き取った......


「......」


「......これが彼の方...東条夏江さんと五十嵐東悟さんのお話です」


「...ぐすっ...ひどい話」


「それでは、俺が見たあの少女は今もずっとあの桜で皮を取っているんですか?」


「それは...私にも分かりません、たまに見かけるくらいで住職になってから私以外の人は見たことがないので」


「その後、あの桜付近で戦死した人達を清めるため埋葬したとされ今の「桜霊祭」ができたようです」


「......」


「お疲れでしょう、もう夜が更けてきている今日は止まってきなさい親御さんには私から伝えておきますので質問は明日受けましょう」


「では、お言葉に甘えて」


「はい、おやすみなさい」


また真は笑みを浮かべ5人は寝室へと向かった


「......これで...よかったんですか?

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「幽霊巫女と怪異の謎」 ぽんとろろ @masamasa0913

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