壱章 謎の巫女①
四季神社-鳥居前
「うわぁ〜!何も変わってなーい!」
懐かしそうに言いながら秋菜は華麗に階段を登っていた
「そうだね....僕達が大きくなったからね」
ボソボソと秋斗が呟いた
「ほら、あそこの上に登る途中に祠の所で秋斗迷子になって泣いていたよね」
秋菜が道中にある祠に笑いながら指を指した
「何年も前の話だよ」
そこは秋斗をからかっている内に神社の本堂がある場所に辿り着いた
本堂は立派な社があり綺麗に整備され外との空間が隔てられ6年前から
変わっていない
「この空間だけ時間が止まってるんだね」
「あの時のまんまだなぁ.......なんだこれ⋯」
小学生の時には無かった物が境内の端にあった
「こんな地像あったか?」
「見た事がないわね。私もしばらく来てなかったからわからないわ」
「わたしも〜たまにくるけど見たことんなぁい」
「僕もないね。いつからあるんだろうね」
四人でその地蔵を囲んで出所を探っていると後ろから....
「.....それはね...し...なんだよ」
「ん?」
と3人以外の声がした。
その時千夏は振り向きあたりを見渡すが誰もいなかった
3人は向かい合いながら喋っていて開き間違いと思いそっと輪に入った
結局その日は、地蔵のことはさっぱりで住職さんに聞いても分からず
みんなで神社の辺りを歩きながら昔話に方向転換したそして、空が赤く焼けてきた頃
「そろそろ帰るか」
「そうね、もう暗くなってきたわね」
「えぇぇ〜?まだ遊ぼうよ〜」
「また明日も遊べるから今日はここまでにしよ?」
「あ!じゃ階段でグリコしようよ!」
「...まぁ、帰り道だしそれぐらいなら」
「いいわよ」
「やろうか」
「やったぁ!!!」
高校生にもなって大はしゃぎをする秋菜とやれやれと思う一同
階段前に一列に並んでジャンケンを始めた
「ジャンケン⋯チョキ.チヨコレイト!」
「ジャンケン⋯パー、パイナツプル!」
イジャンケン⋯グー、グリコ」数十回するとそろそろ終わりそうな所ま
で降りてきた
そして、千秋が一番に下に着いた
「....コレイト!は〜い一番乗....り...」
言葉が詰まった。後を振り向くと3人の姿が無いのだ。千夏は呆然とし
いた
数秒前まで階段の上で喋っていたのに今は足音や両側の草木の音すら立
っていない
「お、おーい!何してんだ〜?出てこーい、洒落にならないぞ!」
と大声を出しても返ってくるのはカエルの合唱と鈴虫の鳴き声だけ
スマホで連絡しようとしても圏外になり八方塞がりになってしまった
最初はおふざけ半分で探していたが時間が経つにつれ冷汗が溢れてきて
立ち尽くすしか無かった
神社に戻っても当然誰も居ない本堂付近を見渡しても見つからない
「はぁ⋯はぁ⋯どこに行ったんだよ⋯」
恐怖と焦りが体力を奪って冷静さが無くなろうとしたその時
「ねえ、何しているの?」
「え...誰?」
静寂の中でボソっと細く、か弱い声が耳元で聞こえた
「お前は誰だ」
と叫びながら辺りを探し回わったが誰も居ない
が、鳥居の方から微かに聞こえる
幼馴染の声でもない、親でもない声、地蔵の時の声の主だと感じた
一瞬、後退りしたが頼りになる人もいないのでその声を頼りに鳥居の方
に走った
鳥居に目を向けた瞬間古びた着物を着た少女が立っていた
その子はこちらを見つめニコッと笑った
その瞬間、急に眩暈が起き眠気が襲ってきてそこで記憶が途切れた
目が覚めるとそこは、おじいちゃんの居間だった
横を見れば泣きじゃくる秋菜の姿
泣きそうになっている秋斗
ほっとしている冬花の姿がいた
丸一日目が覚めなかったらしく家族総出で捜索し神社の本堂で倒れてい
たらしい
3人に遊んだ時の話を聞くと急にいなくなったと言われ最初は神社周辺
を探したが見つからずそのあと家族と一緒に探していたと言われ
気になったのが見つけた時間が夜の21時と聞かされ
あの時の自分は自分では無かったような気がしていたがスマホで連絡し
ようとした時に時間を確認した記憶がある
20時だったと思うだが、その時の外の景色はまだ夕焼けのままでそこ
まで時間が過ぎている感覚はなかったがなんだったのか
そして、あの神社にいた着物の少女はなんだったのか
「私を探してね」
記憶が途切れる前に聞こえたあの言葉の意味はなんだったのか
あそこで何をしているのか謎が謎を呼んで頭が痛くなってくる
今は、今日は惰眠を貪りたい
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