教育Ⅳ
それから三日後。暗幕を取り払うと、少女はこちらを窺うようにして怯えを露にしていた。
もう少しだけ早くやめれば良かったかもしれない、と海藤は後悔する。
「反省できた?」
「……悪かった」
「なにが悪かったのかな?」
「……殺すとか、死ねとか言って」
わかってくれたらしい。海藤は満足しつつ、再び粥を手にする。
その後、黙々と食事をする少女をゆっくりと見守った。空腹からか、噛み締めるように食事をする姿は、とても愛らしい。
一通り食べ終わったあと、よく食べたね、と誉めれば、別に、と目線を逸らした。
「ここに馴染んでくれて嬉しいよ」
その言葉に少女は、あからさまに顔顰めたあと、
「……馴染んでない」
覚悟を決めたように口にする。おやっ、と海藤は思う。
「そうかな?」
「そうだよ」
「君はここにいるために生まれたように見えるけど」
「違うよ。ここはウチの居場所じゃない」
どうやら、少女は自らの居場所を受け入れられていないらしい。
これから一生ここで過ごすのだから、こんな当たり前のことは受け入れてもらわなければならない。
「どう考えても、君の居場所はここしかないだろう」
「違う」
「どうしても?」
「どうしてもなにも、違うから違うって言ってるだけだよ」
確認を終え、これは仕方ないと暗幕を拾い上げる。途端に少女の顔が引き攣った。
「止めてくれ。なんでもするから」
「ここが君の居場所だって、受け入れてくれる?」
「それはダメだけど……」
幕をかけた。悲鳴が響く。
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