教育Ⅲ

 それから更に二日後。暗幕を取り払うと、少女は海藤を睨んでこそいたものの、こころなしか目に籠る力は弱くなっているように見えた。

「反省した?」

 答えは返ってこない。挨拶はちゃんとした方がいいなと思ったものの、さすがにそろそろ食事をとってもらわらないといけないなと持ってきた水の入ったペットボトルと梅粥を手にする。

 少量の水を飲ませてから、海藤が自らの息で覚ました粥を差しだす。また吐き出されるのではないのかという懸念は、いい意味で裏切られ、少女は不承不承といった体でありながらも味わうように与えた食事を口にし、嚥下した。

 どうやら、食べ物の大切さには気付いてもらえたらしいな。自らの真心が伝わったことに気を良くした海藤は、

「美味しかったかい?」

 と尋ねた。少女は仏頂面をしたまま黙っている。

「返事はちゃんとしないとね」

「……悪くなかったよ」

 どうやら、味は悪くなかったらしい。ほっと胸を撫でおろし、

「そうだろう。ここにいて良かっただろう?」

 と言った。

 途端に少女の目に怒りが宿る。

「こんなところ最低だよ、糞野郎。殺すぞ」

 返ってきた低い声に、海藤はため息を吐いた。

「汚い言葉は君の心も汚くしてしまうよ」

「知るかよ。いいから死ね」

 これはダメそうだ。そう思い、暗幕を手にする。

「おい。ちょっと待て。待ってくれ。待てってば」

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