教育
仕入れから五日目。ガラスケースを暗幕で覆った。
「なにすんだよ! どけろよ!」
「ごめんね。これも君のためなんだ」
心を鬼にして海藤は言った。
つい先ほど、持ってきた素麵を与えると、少女はすぐさま吐きだした。最初は、また風邪でも引いたのかと疑ったが、何度も同じことが繰り返されるにいたって、わざとやっているのだと思いいたった。
なぜ、そんなことをするのか、と尋ねてみても、ここから出せの一点張り。絶対不変のいるべき場所から出たいというのはおかしな話だなと思いつつも、看過できない点が一つあった。
食事を無駄にした。その一点はどうしても許容できない。念のため、口に合わないかと確認をとってみたが、出せ、としか言わない少女に、教育を決めた。
「いい子になったら、幕をとってあげる。それまではご飯も抜きだよ」
暗幕で覆ったガラスケースの傍に置いた椅子に座りこむ。その後も布越しに、出せ、の叫びは響き続けたが、しばらくすると元気もなくなったのか、沈黙が訪れる。
早く、明るい世界に戻してあげたい、と海藤は思いつつも、それではこの娘のためにはならない、とただただ見守った。
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