トライアングルトラブル

魔女っ子★ゆきちゃん

第1話 乙女の純情を踏んでしまった男子大学生の話

1 正座させられる男子大学生と仁王立ちする女子高生

 何故、こんなことになってしまったのだろう?

 俺、戸塚剣とつか つるぎは大学に入って彼女が出来た。

 初めての彼女、村雲亜芽乃むらくも あめのちゃんは独り暮らしということで、大学が終わるといつも亜芽乃ちゃんの部屋でいちゃいちゃしていた。

 そりゃあ、エチチなこともいっぱいおっぱいしていたし、二人のにゃんにゃん写真なんかも撮ったりしたよ?

 でも、それが人に、それもよりによって、従兄弟いとこの女子高生、音無響美おとなし きょうみちゃんに見られるなんて★

 俺は今、響美ちゃんの前で正座をさせられていた。対する響美ちゃんは仁王立ちだ。

 話は少しさかのぼる。


2 しまった、忘れてた


 大学が終わり、写真部の活動もそこそこに、亜芽乃ちゃんの部屋でいちゃいちゃしていたところ、朝、家を出るときに母親から『今日は従兄弟の響美ちゃんが遊びに来るから早く帰ってきなさいね』と言われてたのを思い出したのだ。

 響美ちゃんは高校1年生。俺が大学の1回生だから、俺の高校卒業と入れ替わりに高校に入学した訳だ。

 昔から俺に懐いてくれていて、可愛らしい女の子だった。

 多少ぴよぴようるさい饒舌すぎるきらいはあるが、普通に良い子であった。

「ごめん、亜芽乃ちゃん。俺、今日は用事があって、早く帰らないといけないんだった」

「そうなの? じゃあ、また、明日だね。気をつけて帰ってね」

 ちゅっ、っと俺の右の頬に口づけすると、亜芽乃ちゃんは、快く送り出してくれた。


3 見られてはいけないモノ


「ただいま」

と家に帰ると母親から、

「響美ちゃん、もう来てるわよ? 剣の部屋で待ってもらってるわ」

と聞かされた。

 手を洗ってうがいをすると、部屋へと向かう。

「ごめん、響美ちゃん。遅くなって……」

 ドアを開け、中に入ると、

「お兄さんこれはどういうことですか?」

 いきなり、スチール製のお菓子の空き缶を押し付けられた。

「なっ!」

 その缶の中には、最も他人に見られてはならないものが入っていた。

 ぶっちゃけて言うと、亜芽乃ちゃんとのエッチなにゃんにゃん写真だ。

 上手い言い訳が見つからない。俺は絶句してしまった。

「お兄さん良いですか私はお兄さんがカノジョさんとエッチでふしだらで猥褻わいせつただれた関係でいるのを責めているのではありませんそういう写真を撮る人がいるのも知識としては知っていますしそれが無修正むしゅうせい公序良俗こうじょりょうぞくに反する卑猥ひわいな写真であるとしても私としてはそれをとがめようと考えているわけではないのですただ……」

 そこまで一気にまくし立てると、そこで一旦言葉を止めた。

 響美ちゃんは怒っている。怒っていらっしゃる。続きを聞くのが怖い。怖いが、聞かないことには始まらない。何も始まって欲しくはないのだが……★

「ただ?」

「お兄さん、そこに正座して下さい」

「は、はいっ!」

 俺は直ちに正座に座り直した。

「私はですねお兄さんがカノジョさんといちゃいちゃしてるだとかエッチで卑猥な猥褻写真を撮影しまくっていることを怒っているのではありませんですがどうしてそのなんですか他にも入れ物なら色々あるでしょうそれなのに私とお兄さんとの思い出の宝箱にお兄さんのカノジョさんが土足で入り込んできて私たちの思い出を踏みつけまくっているのですそれが悔しいんですよ私は!」

 うっ! どうやら俺は響美ちゃんの純情を踏みつけるような行動を取ってしまっていたようだ。

 今の宝物を宝箱に入れる方が、その宝箱を贈ってくれた響美ちゃんにとっても嬉しいのではないか、と変な気の回し方をしたのが、思いっきり裏目に出てしまったようだった。

 でも考えてみれば、響美ちゃんの言うことの方が当然なのかもしれない。

 幼い頃の思い出の品は、俺と響美ちゃん共通の思い出で満たされるべきであったのかも。

「うううお兄さんのこと好きだったのに……」

「えっ! いや、それは親戚のお兄さんとしての『好き』であって、男女の好きとはちが……」

「男女の好きですよなんなら愛です私の方が先にお兄さんのお嫁さんになる宣言してたのにううう……」

 そこまで言うと、響美ちゃんは泣きだしてしまった。

「きょ、響美ちゃん。響美ちゃんが好きだと言ってくれて嬉し……」

「ガーッ! 何呑気なことを言っているですか。人の心を滅茶苦茶に掻き乱しておいてがるるるる」

 響美ちゃんの心がささくれだっている。

 まあ、それも無理はないか? 昔から俺のことを好きだったのだとすれば、この宝箱に二人の写真を入れて、『二人の宝物にしよう♪』なんていう思い出が響美ちゃんの心の内にあったのであろう。

 それを俺と亜芽乃ちゃんのにゃんにゃん写真で上書きしてしまったのだから。

 なお、俺と響美ちゃんの写真は、ちゃんと別に保管してある。それを響美ちゃんに話せば、あるいは落ち着いてくれるのでは?

 しかし俺の考えを超え、響美ちゃんは、

「……せて下さい。……お兄さんのカノジョさんに会わせて下さい!」

 そう要求してきたのだった。


 続く

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