(二)-14

「ボスって兄貴のことか」

「違う! 王建承のことだ!」

「だから知らないって!」

 次の瞬間、銃声が鳴った。刑事らしき男は、仲間の額を撃ち抜いた。男の後頭部から髪の生えた頭皮と頭蓋骨の破片と脳細胞と血が勢いよく吹き出て、その背後にあったキャビネットに飛び散り、赤く染めた。

「お前もこうなりたいのか」

 そう言いながら刑事らしき男は銃口を向けて撃鉄を起こした。

「わかった、言う、言うから、落ち着け……」

「王はどこだ!」

「恐らく埠頭の倉庫だ。ここ数日は毎晩そこへ行っているらしい。頼むから撃たないでくれ」

「最初からそういえばいいんだ」

 そう言って刑事はドアの方を向いて事務所を出て行った。

 気が抜けて男は思わず椅子にへたり込んだ。


(続く)

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