我が青春

 途方に暮れる難題を抱えたとき「ただひとり」では何も変わらないと思って諦めず、別の場所にも「ただひとり」と思っている人がいることに気づき、そのふたりが出会えば「ただふたり」になる。

 俺は親友が少なく、愚かだけれども、その愚かさは青春に関係のない事情にもとづくものである。結婚して、親友という柄とはことなった2人があり、それでも青春、そうして、やっぱり、青春――どこにも一生の区切りがない、これは助からぬ話だと俺は恐れをなしてしまう。

 俺の毎日の生活などはまるで中味がカラッポだと言っていいほど一時間一時間が実感に乏しく、ただ、だらしがない。

 青春の場を卒業する時、一本の髪の毛は愚かなこと、一本の指一本の腕がなくなっても、その不便に就ての実感や、外見を怖れる見栄に就ての実感などはあるにしても、失われた「小さないのち」というものに何の感覚も持たぬであろう。

 いわゆる、俺の青春に「失われた美しさ」がなく、「永遠に失われざるための愚かさ」があるのみにしても、俺も亦、俺の青春を語らずにはいられない。即ち、俺の青春論は同時に堕ちる事でもあるという。

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