第20話 門番と勇者

「ちょっと!こいつ、明らかに強化されてるじゃないの!反則じゃない!?」


「勇崎さん、静かにしてください。私の耳元で叫ばないで。」


私たちは二手に分かれて、ドラゴニュートの幻像が振るった拳を避けた。舞い上がる煙の中で、私は赤く点滅する光に気づいた。


「くっ。」


直感に従って再び横に飛び、焼き尽くすような光線が私が立っていた場所を直撃し、床を真っ赤に焼いた。


「最悪!私の武器を壊しておいて、こんなものを呼び出すなんて!あの剣には45万Gも払ったのよ!あいつ、次に会ったら絶対にきちんと仕返ししてやるからね!」


アカネは叫びながら、振り下ろされた尾をうまくかわし腰をかがめた。


「勇崎さん、文句を言う暇があるなら、その魔物を早く倒して。」


「そうしたいけど!攻撃が効かないんだもん!手元に適切な武器がないし!」


「はぁ。勇崎さんは本当に役に立たないね。」


「ひどい!言うならマヨイちゃんもさっきからずっと避けてばかりじゃない!」


「私はさっき鬼と戦って、体力を回復中です。勇崎さんはさっき地面に座って休んでたから、きっとそれを倒せるはず。出発前に、私にかっこいいところを見せたいって言ってたじゃない。」


「むっ、その通りだけと!今は本当に疲れてるもん!魔力も精一杯出してるの!」


「何とかして。あなた、勇者でしょう。」


「その通りだけと!でも武器がないと本当に無理!」


焦るアカネは攻撃を避け続ける。乱戦の中、私は後ろを一瞥する。門はまだ魔法で封印されている。


「撤退もできない状況のようだね。あれをやるしかない、か。」


「マヨイちゃん、あれを使うの?やった!」



<コメント>

『来るか!』

『現状を打開できる唯一の方法、それしか残っていない!』

『もう手加減する場面ではない!』

『行くぞ!』

『伝説を少しだけ借りる時が来た!』



「先に言っておく。これは料金が発生するよ。」


「うん!ありがとう、マヨイちゃん!」


「わかったら、あの魔物をブロックして。」


アカネが魔物に向かって突進する間に、私は大きく後ろにジャンプし、両手を組んで印を結んだ。ドラゴニュートの幻像は何かを感じ取ったのか、私に向かって突進してきた。


「邪魔させない!えいやああああぁぁ!」


アカネは流れ星のように魔物に突っ込んだ。相手がよろめいたその時、彼女は両足で魔物の竜のような顔を蹴り、反動を利用して私の方へと跳んできた。


「マヨイちゃん!」


「出でよ、薄雪ウスユキ!」


真っ白な聖剣が私の胸から投影されて現れた。空中でバレエのように回転するアカネが聖剣を掴み、一回転して突きの構えを取った。同時に、魔物の異形の口を開けた。暗黒の魔力が相手の胸元で凝集し、その一撃を食らったら全滅するだろうと予感した。


「勇崎さん!」


「もってけ、私の全魔力を!さようなら、今月の小遣い!超技!」


朱雀のように展開された魔力の翼で、アカネは赤い聖剣を突き出した。


「フェイトブレーカー!」


二つの光の流れが空中で激突し、暴風と熱波を巻き起こす。抗い合う二つの流れが生み出した閃光と火花に、私が思わず目を細めた。


「はああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


アカネの赤い光が徐々に魔物のドラゴンブレスを抑え込み始めたが、魔物に届くにはまだ遠く足りない。若い勇者は下唇を噛みしめ、額に大量の汗を流し続ける。顔色は蒼白で、唇には血色がない。しかし少女は最後の力を振り絞り、抵抗し続けた。


「うぅぅ!負けられない!マヨイちゃんが私の背中にいる!私、勇者だもん!」


「…本当に救いようのない、手のかかる人だね。あなたは。」


私はアカネの汗で濡れた背中に手を置いた。


「マヨイちゃん?」


「残りの魔力も貸してやる。こんな程度の逆境、突破してみせろ。アカネ。」


アカネは驚いた表情を見せたが、すぐに大きな笑顔を浮かべた。


「…うん!」


聖剣から放たれた赤い光柱が徐々に青に包まれる。私は一方の手をアカネの背中に、もう一方の手を彼女が握る剣柄に重ねた。


『「フェイトブレーカー、ダブル」!』


体の力が一瞬にして吸い取られる感覚と共に、青と赤が絡み合う魔力が黒い魔力の流れを押し返し、魔物の頭を呑み込んだ。次の瞬間、魔物の体は重く地面に倒れ、ゆっくりと黒い粉末に変わった。


「やった!マヨイちゃん!手伝ってくれてありがとう!」


「ふっん。別にあなたのためじゃない。私はただ報酬と賞金をもらうため…抱きつくな!汗だくだろうが!」


「えへへ!」


「もう…!」


全身汗だくのアカネに押し倒されながら、私はダンジョンの天井を見上げた。窮地に陥っても、心の中には言い表せない満足感があった。


「…まあ。一件落着、だね。」


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