第18話 勇者と鬼

「...こいつ!」


「ハハハハハ!どうしたどうした?さっきの勢いはどこへ消えたんだ?」


部屋の中で、剣と鉄扇が激しく交わる音が絶え間なく響いている。


鉄扇は空中で円を描くように舞い、鬼が動き回る。流れるような連続攻撃がアカネを圧迫し、若い勇者を守りに追い込む。


「ぐっ!」


鉄扇の先端がアカネの頬をかすめ、赤い一筋の線を残す。


「あは!傷ついちゃったね!お前は一体いつまで持つのか?」


「私を侮るな!はあああっ!超技!」


アカネは一歩後退して鉄扇の攻撃範囲から抜け出し、剣に魔力を集中させる。


「勇者の、一撃!」


「そうこなくちゃ!」


鬼が鉄扇を振るうと、赤い衝撃が二つに分かれた。赤い剣気が鬼の背後の壁に命中し、大量の煙を巻き上げる。


衝撃の余波の中で、鬼は素早くアカネの間合いに入る。


「しまっ!」


「我の番だ!」


体をひねって腰から力を入れ、鬼は一撃を放つ。アカネは剣で防ぐが、受けた瞬間に眉をひそめる。


「これは...!」


崩山ホウザン!」


鬼が手首を捻る瞬間、強力な衝撃波が風圧と共にアカネに向かって飛んでいく。アカネはそのまま後ろに吹き飛ばされ、壁に激しくぶつかる。


煙の中をじっと見つめる鬼は、金色の瞳を細める。


「ほう。当たった瞬間に複数の防御魔法を展開したか。なかなか巧妙だな。」


「いててて…残念ながら、似たような技には慣れてるんだよ。」


アカネが壁の穴からもがきながら立ち上がる。アカネの言葉を聞いて、鬼は嬉しそうに笑った。


「そうか!似たような技に対処したことがあるのか!ハハ!思った以上に面白いアピタイザーだ!」



<コメント>

『アカネが圧倒されてる!』

『やっぱり前のような戦い方は無理があったか…』

『頑張れ!アカネ!』

『うわ、血が出てる…』

『前回血を流したのはマヨイちゃんとの戦いだったな…』



「くっ、先に体力を使い果たしていなければ…!」


「だからお前はまだ心技体が足りない。完璧でいられる人間などいない。常在戦場ジョウザイセンジョウの心構えを持つべきだ。」


「…調子に乗るな!疲れたところに待ち伏せで奇襲して、卑怯な奴め!」


「ははは!これぞ兵法だ!」


アカネの非難に対して、鬼は不満どころか大笑いしている。


「卑怯?良く言ってくれた!それこそが鬼の本懐!」


「ぐっ!」


鉄扇の強烈な一撃により、アカネは再び後退する。


「執着心であれ策略であれ、それが戦いをさらに鮮やかなものにする!奇襲であれ、集団での攻撃であれ、結果と勝利に執着することこそが純粋な戦いだ!」


鬼は意味深長に私を見て、にやりと笑った。


「どうだ、聖剣の守護者よ。そろそろ戦場に加わりたいと思わないか?二対一でも何の問題もない。むしろ大歓迎だ!」


「マヨイちゃんを巻き込むな…!これはあなたと私の戦い!」


アカネが再び構えを取るが、その呼吸は明らかに荒くなっている。


「気迫がいい。だが、その体でどこまで持つ?お前の限界を見せてくれ!」


鬼は鉄扇に魔力を凝集させ、激しい気流が巻き起こる。鬼が笑いながらアカネに扇を振るった瞬間、アカネも同じく剣先に魔力を集中させて斬撃を放った。


断空ダンクウ!」


「勇者の一撃!」


紫の魔力と赤の魔力が互いに拮抗し、一瞬の閃光の後、両者は無に帰した。


しかし、アカネよりも早く、鬼が二度目の斬撃を放つ。


「隙だらけだ!」


「っ!」


瞬間、アカネは慌てて剣で防御するが、限界に近い剣は再び鉄くずと化す。


鬼が笑った。


「もらったぁ!崩…」


華鬨ハナトキ!」


「むっ!」


気づいた時、私は既にアカネの前に立ち、鬼に掌打を放っていた。鬼の拳と私の掌が空中で衝突し、巨大な衝撃音と共に魔力の波動がボス部屋の中のガラス装飾を粉砕した。


「…マヨイちゃん?」


アカネのいつもと異なる弱々しい声に、私の心に名もなき怒りが湧き上がった。鬼のふざけた態度がさらに私の不快感を増した。


「アハハ!仲間が危機に瀕して、ようやく戦意が湧いたか!誰かを守るために戦うのはいい。何が守っている者は強い、それも一興だ!」


「別に、勇崎さんのためじゃない。そう。これは別に勇崎さんのためじゃない。」


私が無意識のうちに自分自身を説得するように独り言を言い始めた。左手を前に開き、身体を沈めながら、右の拳を腰の横に置いて戦闘の構えをとった。


「今の私は、単にあなたが気に食わないだけ。」


「アハッ!じゃあ、その不満を我に思う存分ぶつけてみろ!」

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