第14話 ライバル登場

「レンお兄様もフェスのために帰ってきたの?」


「ああ、これは国の重要イベントだからね。」


「そっか!私と一緒だね!」


私はアカネの袖を引っ張った。


「この方は?」


「あ、ちょっとマヨイちゃんに紹介するのを忘れてた。こちらはレンお兄様!一応、この国の王子さまだよ!」


「僕は勇崎レン。レンと呼んでください。」


レンが手を私に差し伸べてきた。握手しようとした瞬間、アカネがレンの手を打ち落とした。


「は?」


アカネの突然の行動に驚いていると、アカネが私とレンの間に両腕を広げて立ちふさがった。


「触れるのは禁止!さっきもマヨイちゃんの後ろからこっそり触ろうとしたんだろう!この童貞ハーレム野郎が!エッチ!ふけつ!」


猫のように威嚇する構えのアカネに対し、青年は苦笑いを浮かべた。



<コメント>

『童貞ハーレム野郎www』

『エッチ!』

『不潔!』

『王子様にこんな風に罵られるのはアカネだけだなwww』

『おお!行け!アカネ!もっと言ってやれ!』

『レンを見るマヨイちゃんの表情が変わったwww自分のお兄ちゃんそんなに傷つけて大丈夫かwww』

『いい顔して王子様だからってマヨイちゃんに触れるなんて思うなよ!』

『そうそう!社会的に死んでくれ!』

『レンのパーティーメンバーは美少女ばかりだもんな。』

『ははは!ざまあみろ!今、マヨイちゃんの好感度マイナス確定だ!』

『他の女の子みたいになれると思った?残念!マヨイちゃんの防御力は高いんだからな!』

『非モテの敗犬たちが嬉々として吠えてるwww』



「…君の新しい仲間の力を試してみただけだよ。それにアカネにも何度も言ったはずだ、あの子たちと僕はそういう関係じゃない。僕たちは背中を任せ合える、共に禍福を分かち合える戦友に過ぎないんだ。」


「ほら!この鈍感ぶり!典型的なラブコメ主人公!女の敵!』



<コメント>

『は?』

『お前、本気でそう思ってるのか?』

『甘い汁をすすってるのに本人全く自覚がない…』

『日頃の配信でみんながこの野郎に猛アタックしてるのがわかるぞ。』

『俺だったらあんな美少女たちに囲まれた環境で絶対に暴走する自信がある。』

『そもそもこいつは性欲があるのか。』

『くそ、リリアがこんな奴に惚れるなんて、悔しい…』

『非モテな俺は今、血の涙を流してる。』

『やっぱりマヨイちゃんだけがオアシスだ。』

『マヨイちゃんから離れろ!』

『マヨイちゃん、どうか堕ちないでくれ。』



「堕ちるも何も、私とレンさんは会ったばかりだよ。」



<コメント>

『マヨイちゃんがあのハーレム野郎の名前を呼んだ!?』

『もう終わりだ。世界が滅びる。』

『俺がようやく見つけた百合の楽園が破壊された。』

『世界の終わりの角笛が鳴り響いた。』

『マジ死ぬ。』



「なんで初対面のお兄様は名前で呼ぶのに、私だけは苗字で呼ぶの!?まさか…あなたもお兄様に一目惚れ!?」


「はあ。なぜいちいち呼び方に反応するんだろう?だって、二人とも勇崎だからじゃない?こうじゃないと区別がつかない。」


「それじゃあ!これからは私のことをアカネって呼ぶの!?」


「勇崎さんは勇崎さんでしょ。」


「なんでや!?」


アカネが騒ぎ出し、レンは彼女をなだめようとする。状況が混乱し始めたその時、足音が聞こえてきた。振り返ると、銀色のショートヘアに水色の瞳を持つ可愛らしい少女がこちらに小走りに近づいてくるのが見えた。


その少女はマントを着ており、手には宝石がちりばめられた長杖を持っている。腰には大きな薬瓶を下げており、まるで魔法使いや錬金術師のような装いだった。


少女はレンを見て微笑みを浮かべ、小走りに近づいてきた。


「レン様!ここにいたんですね。」


「リリアか。ごめん、妹がこの辺に来たって聞いて、先に会おうと思ってたんだ。探しにくかった?」


「いえいえ。」


少女がレンに親しげに話しかける。そして、視線を変え、私を鋭い目で見据える。


「そして、こちらは?」


「ああ、これはアカネの新しい仲間、マヨイさんだよ。」


「ふーん?」


リリアと名乗る少女が私を上から下へと一通り見た後、手を差し伸べした。


「氷室リリア。よろしく。」


「ええ。よろしくお願いします。」


リリアの手を握った瞬間、彼女は急に顔を近づけてくる。水色の瞳が髪の影でギラギラと光る。


「——アカネ様に近づいてレン様に接近しようとしても、あなたの計画は無駄です。このダンジョンRTAで、私がレン様にとって最適なパートナーであることを証明します。見ていなさい。」


「はぁ。ご自由にどうぞ?」


「ふん。余裕を装っても今だけですよ。」


瞬間的に冷たい表情から可愛らしい笑顔に戻ると、彼女はレンの手を掴む。


「とにかく、レン様、時間もそろそろです!明日の試合の準備をしましょう!」


「ああ、そうだね。」


レンは私とアカネに軽く頭を下げる。


「それでは、失礼する。明日、お互い良いパフォーマンスを期待してる。」


「ええ。また。」


「絶対!お兄様に負けませんから!」


「はは、楽しみにしてるよ。」


手を振りながら、レンはリリアを連れて王宮へと颯爽と歩いていく。リリアは振り返り、もう一度私をにらみつけた後、すぐに顔をそむけた。


「はぁ。あのリリアって子、一体どういうつもりなんだろう。」


「マヨイちゃん!マヨイちゃんが私を置いてお兄様の女になんかならないよね!」


「勇崎さん、もう少し静かにしてください。」


「うわあああああ!」


鼻水と涙でグチャグチャになりながらも抱きついてくるアカネを押しのけつつ、私が大きくため息をついた。

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