第13話 迷宮王都ラビオン
「…… ひどい目にあった。」
「まあまあ。経費で落ちるし、得したと思おうよ!その服めっちゃ可愛いから!」
結局、セールスに押し切られて、仕方なく自分の以前の巫女服のデザインや質感に近い装備を買うことになった。
新しく購入した服を着てアカネと一緒に街を歩いていると、明らかに周りの人の視線が自分に集中しているようで、ちょっと憂鬱だった。アカネとレナさんはこの服を強く褒め称えたけど、質素なスタイルに慣れている私には飾りが多すぎて、落ち着かない。
<コメント>
『おはよう!新しい服もめっちゃ可愛いよ!マヨイちゃん!』
『おはよう!』
『おはよう!』
『スクリーンショット撮った。』
『魔法少女風の巫女服か。いいね。』
『さっきマヨイちゃんがいろんな服を試着してるの見て、大満足。』
『やっぱり巫女服のほうが慣れてるか。』
『マヨイちゃん可愛い、神。』
『新しい服、めっちゃ可愛いよ!』
「はあ。みんな褒めてくれてありがとう。勇崎さん、これからは?」
「あ、ごめん!マヨイちゃんが可愛すぎて、つい忘れそうになった!」
アカネが私の前に駆け寄り、両腕を広げる。
「みんな!改めて紹介させて!ダンチューバーフェスの開催地であり、私の故郷、迷宮王都ラビオンへようこそ!私たちが立っているのは、王都で最も大きな通りだよ!ここから直接王城が見えるの!」
暖かい日差しの中で、アカネの指さす方を見ると、朝の光が街上に優しく降り注ぎ、遠くには尖塔を持つ王城が見える。
王城のガラスは日の光を受けて七色に輝き、巨大な時計塔は荘厳な雰囲気を放っている。金色の屋根は日光できらきらと光り、まるで天に続く階段のよう。
道の両側では、露店の喧騒や香辛料と花の香りが祭りの熱気を盛り上げている。
一般の市民だけでなく、武器を背負ったり派手な装備をした冒険者も楽しそうに王城に向かって歩いており、顔にはワクワクした笑顔が浮かんでいる。
「とても活気に満ちた街だね。」
「でしょ!これが私が誇る故郷だよ!」
えへへ。アカネは少し照れくさそうに頬をかいた。
<コメント>
『おお!ついにこの聖地に到着だ!』
『何度見ても、やっぱり壮大だなあ。』
『まるでBGMが自然に流れてくるような王城。』
『たくさんのダンジョン配信者も来てるね。』
『とっても賑やか。』
『美しい街だ。』
「この王都はね、世界で初めて完全に攻略されたダンジョンがある場所なんだ。」
「へぇ。」
アカネは王城に向かって歩き始めた。私はアカネについていきながら、彼女の説明を聞いた。
「初代勇者、私の先祖様が、現在の王城がある場所で魔王を討伐した。その後、ダンジョンの活動を近くで監視するために、直接城を建てたんだ。」
「なるほど。ダンジョンの遺跡を中心に形成された集落が、最終的にこの国の王城になったわけか。」
「そうそう。この場所が魔王がいたダンジョンに対して警戒をするために建設された都市だから、魔物が溢れ出した時に防衛線を突破されないように、迷路のように設計された。だからこそ、迷宮王都と呼ばれてるんだ。」
「内部のダンジョンに対する防御か。それで、この城が外からの攻撃に対して弱いんじゃないの?」
「まあ、状況を知らない人が初めて見た時にはそう思うかもね。」
アカネは不敵に微笑んだ。
「でも、ここには私たちがいるから。」
「…つまり、都市自体が勇者の一族によって守られているから、余計な防衛システムは必要ないってことか。」
「その通り!」
「はあ。あなたのその自信は、どうやら家族から受け継がれたものらしいね。」
「えへへ。」
「褒めてないから。」
<コメント>
『勇者一族の謎の理論。』
『脳筋だな。』
『伝説では一人の勇者が一軍に匹敵すると言われている。そういう考えも無理はないか。』
『アカネの日頃のドジっ子ぶりからは、そんな強さは想像もつかないけどね。』
『我が国の首脳部が脳筋で本当に大丈夫か?』
『大丈夫。筋肉で解決できないことなんてない。もしそうだとしたら、それは筋肉が足りないからだ。(物理)』
『確かに。』
『脳筋な王族に率いられる国民もまた、脳筋だ。』
『マヨイちゃんも呆れてるw』
『まあ、世界で最も多くのダンジョンを持ち、ほぼ全国民がダンジョン探索や魔物との戦闘経験を持つ冒険者の国だから、こんな戦闘民族に手を出そうとする国は少ないだろう。』
『初代勇者の頃は、王都内の高難易度ダンジョンの魔物を定期的に駆除し、国民を鍛えるための活動だったって話もある。長くなるとダンチューバーフェスになっちゃったけどね。』
『へえ、勉強になった。』
「とにかく!この度のフェスのRTAイベントではね、王都内の5つのダンジョンの中から1つが選ばれて、今回の舞台になるんだ!わくわくするでしょ!全部高難度のダンジョンなんだからね!」
「はあ。別に。」
「もう!マヨイちゃんはいつもそんなにテンション低いんだから!ダンジョンの話だよ!未知に満ちてる!冒険の始まりだよ!」
「私は賞金さえあればいいの。」
アカネとどうでもいい話をしているうちに、気づけば私たちは王城の大門まで来ていた。門を守る衛兵がアカネを見ると、敬意を表して一礼し、大門を開けた。
「お帰りなさいませ、お姫様。」
「うん!帰ったよ!お疲れ!」
「…勇崎さんは本当にお姫様だったんだ。」
「ええ!?最初に自己紹介した時に言ったじゃない!」
「言ったっけ?もし言ってたとしても、信じられないから心に留めていなかったんだろうね。」
「ひどい!マヨイちゃんの私に対する態度、どんどん雑になってない!?」
アカネが跳ねたりして自分の不満を表しているとき、私が何者かが背後から近づいてくるのを感じた。直感で、自分の肩を掴もうとする手を避けた。
「っ。」
「あはは。見つかっちゃった。」
振り返ると、そこには柔和な目をした、いたずらっぽい笑顔を浮かべる美青年の姿があった。
青年のややたれた目尻には涙ぼくろがあり、白い軍服を着た引き締まった体格。自然なカールをした赤毛の下には、エメラルドのような瞳が輝いている。全体的には活発な大型犬のような印象を与えつつも、王子様のような落ち着きも兼ね備えている。
「あ!レンお兄様!」
「やあ、アカネ。久しぶりだね、最近どう?」
レンと呼ばれた青年は暖かい笑顔を浮かべた。
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