狐娘に転生したら聖剣を護る一族でした。金のために勇者と共にダンジョン配信を行う。

第9話 聖剣解放

「来たよ、マヨイちゃん！」

「ええ！任せて！」

最初に動き出したのは、目の前の金属ゴーレムだった。

ゴーレムは太い両手で地面を掘り、石を私たち一行に向かって投げつけた。この攻撃に対し、私は一歩前に出てチームの最前線を守った。

「華鬨（ハナトキ）！」

私の掌打で巨石は砕け散った。飛び散る石片を浴びながら、アカネは流星のように赤い魔力の光を引きながら突進した。

「やあ！」

アカネの斬撃がゴーレムの胴体に命中した。ゴーレムは一瞬よろめいたが、すぐに足を固めた。

ゴーレムは拳を握りしめ、その巨体に似つかわしくない速度でアカネに向かって振り下ろした。

「させない！風柳（カゼヤナギ）！」

手のひらをゴーレムの拳に当て、技を使ってゴーレムの力を横の壁に向けて導いた。

ドンという音とともに、ゴーレムの拳は壁に深く突き刺さった。ゴーレムは腕を引き抜こうとしたが、うまくいかない様子だった。

「勇崎さん！」

「うん！超技！勇者の一撃！そしてもう一度！勇者の一撃！」

アカネは赤い魔力に包まれた剣で連続して斬撃を放った。最初の斬り上げでゴーレムの足を宙に浮かせ、二度目の横斬りでゴーレムを吹き飛ばした。アカネの技が巻き起こした煙が視界を覆った。

<コメント>

『倒したのか！？』

『バカ、そんなこと言ったらフラグ立てちゃうよ！』

『いや、まだ倒してないだろう。あれはBランクで耐久力が最も高いミスリルゴーレムの可能性が高い。』

『>5000G NICE 連携攻撃。』

『何回見ても、この二人強いな。』

『そうだね。アカネはドジだけど、やっぱり勇者だね。マヨイちゃんも、立派な巫女だ。』

『マヨイちゃんのことは巫女とか関係なく、ただ強いだけだろう。』

『初見です。さっきから気になってたんだけど、アカネの周りに纏わりついてる赤い魔力は何の技？』

『わからない。本人曰く、真剣になると自然と出てくるものらしい。』

『アカネには主人公補正か勇者モードみたいなものがあるのかな？』

『待て、何か動きがある。』

煙が徐々に晴れていく。アカネが吹き飛ばしたゴーレムがゆっくりと立ち上がっているのが見えた。胸には十字の傷ができていたが、その傷も目に見える速度で徐々に治っていく。

私の隣でアカネが不満げに口を尖らせた。

「さっきの攻撃、結構手応えあったんだけどな。」

再びこちらに近づいてくるゴーレムを見ながら、私は分析した。

「なるほど。これがミスリルゴーレムの自己修復特性か。一度に修復不可能なダメージを与えなければ、ああやって回復してしまう。なので、大きな一撃を与えるしかない。これ以上時間を引き延ばすわけにもいかない。」

私は壁際で息を荒くしている鎧の少女に目をやった。彼女は早急に病院で診てもらう必要がある。この場でミスリルゴーレムと意味のない戦いを続けることは、他のゴーレムを引き寄せる危険もある。

私の視線に気づいたアカネも同じことを考えていたようだ。

「方法はあるんだ。でも…」

アカネは手に持っている剣を私に見せた。鎧の少女の剣は質が良さそうだが、すでにひびが入る、剣身も歪んでいた。誰が見ても、この剣はもう崩壊の一歩手前だと分かるだろう。

「この子なら、あの技を持ちこたえられないかもしれない。力を溜める間に溶けてしまう可能性がある。」

「…そう。」

「うん。この子がどれだけ持つかわからないけど、賭けに出るしかないね。」

「…」

「そんな不安そうな顔しないで。笑って笑って！私たちはダンジョン配信者だよ！元気がなきゃダメでしょ！大丈夫。だって私は…」

「勇者だろ？」

「うん！マヨイちゃんもよくわかってるね！」

アカネは私に向かって恐れを知らぬ笑顔を見せた。彼女は大きく一歩踏み出しながら剣を掲げた。

「マヨイちゃん、その子を少し後ろに下がってもらって。」

アカネが剣を構えた瞬間、目の前に迫るゴーレムさえも凌駕する巨大な存在感が放たれた。そんな彼女の背中を見て、私はついため息をついた。

「はあ。これも人を救うため。ババ様もきっと許してくれるはず。」

「マヨイちゃん？」

「ねえ、もしあなたの全力を受け止められる武器があったら、そのゴーレムを確実に片付けることができる？」

「その通りだけど…」

「じゃあ、私を守って。何とかするから。」

アカネは目を見開いたが、すぐに笑みを浮かべた。

「わかった！」

アカネは再びゴーレムに向かって突進し、私は数歩後退して足場を固め、両手で印を結んだ。

「あなた…何をするつもり？」

鎧を着た少女が息を切らしながら尋ねた。

「大したことじゃない。」

私が最後の印を結び終えると、足元に白い光を放つ魔法陣が現れた。

「ちょっとだけ、伝説を借りてみる。」

アカネとゴーレムの戦闘の音が絶え間なく響いていたが、私は集中を保ち、周囲の雑音をすべて遮断した。

魔法陣を通じて、私は精神を触手のように伸ばし、目標を感じ取った。遠くの魔力の波動が跳ねており、私の心拍と共鳴した。

胸がくすぐったくて熱くなる感覚がした。

「ん。」

息を吐き出し、私はその名を呼んだ。

「出でよ、薄雪（ウスユキ）！」

私の胸からは白い光が放たれた。

流れるような魔力が私の胸から溢れ出し、空中で徐々に剣の形を成していった。

その剣は白い刃を持ち、素朴な柄があり、花や草の装飾が施されている。まさにババ様がずっと大切にしていた剣そのものだ。

私は剣の柄を握り、心の中でババ様に謝りながら、その剣をアカネに投げた。

「勇崎さん！」

「わかった！」

アカネはゴーレムを大きく斬り退けた後、剣を受け取った。

「っ！この子は！この子ならきっと！」

勇者は再び突きを構えた。

アカネの周りの赤い魔力が光点となり、一つ一つが白い剣の刃に吸い込まれていった。やがて、元々白かった刃が美しい赤色に染まった。

少女の背中には、大きな翼を広げた朱雀がいた。

「超技！」

ゴーレムがアカネの力を蓄える構えに気づき、彼女に向かって突進してきた。しかし、小さな勇者は動じることなく立ち向かった。

アカネは渾身の一撃を放った。

「希望よ、運命を突破せよ！フェイトブレーカー！」

一瞬にして巻き起こった暴風が、私が目を閉じそうになるほどだった。

それはまさに光の流れだった。

剣先から放たれた赤い魔力が集束し、ミスリルゴーレムを貫いた。

強烈な光の後、ミスリルゴーレムの姿は消え、焼けた金属の塊が地面に落ちているだけだった。

技の余波で熱風が舞い、アカネの赤い髪が揺れ動いた。彼女は振り返り、私に向かって輝く笑顔を見せた。

その笑顔に引き込まれるように、私も笑顔を浮かべた。