狐娘コツコツとダンジョンで貯金する
第7話 勇者のお金は蜜の味
「一つ。」
「っ!」
結晶で満ち、昼間のように明るいダンジョンの中で、私は高速で飛んでくる石を打ち落とし、ゴーレムに向かって蹴り返した。ゴーレムの頭は、私の反撃で粉砕された。
縮地を使って次の敵の前に現れ、その石造りの体に大穴を開ける。
「二つ。」
目の端で、同行するアカネが不満そうな表情を見せたが、彼女の視線は無視した。袖を振るい、アカネの後ろに飛んできた二つの石塊をキャッチする。私はその場で回転し、二つの石塊をそれぞれ返した。
「三つ、四つ。」
「わっ!ちょっと!さっきのはノーカウント!」
「五つ。」
「え?やっ!」
アカネの腰を軽く抱え、一回転させる。アカネがいた場所にはゴーレムの強烈な一撃が落ちた。大きな衝撃で地面も震え、石の破片を避けながら横に頭を傾け、私は魔力を凝集させてゴーレムに向けて指を鳴らす。
「イチジク流。
弾む狐火が私たちに襲い掛かるゴーレムを撃破した。粉々に砕けた結晶の粉が空中に舞い、まるで花びらの雨のようだった。
「六つ。七つ。これで全部だろう。」
「あの、その…」
「ああ、ごめん、つい強く抱きしめてしまった。怪我はないか?」
「え、あ、ううん。大丈夫。何もないよ。」
「そう。よかった。」
私は思わず抱きしめている勇者に向けて笑顔を見せた。目の前少女も、私の笑顔に引き込まれるように、顔を赤らめながらゆっくりと微笑みを返した。
「じゃあ、これ。見積もり。」
「アウト!最後の一言で全てが台無しになった!」
<コメント>
『www』
『www』
『www』
『本当に素敵な笑顔だね、マヨイちゃん。僕も恋に落ちそうだ。』
『>1,0000G マヨイちゃんの笑顔を。』
『その笑顔は勇者から請求できる金を考えてるからだろうwwww』
『C級の撃破数7、勇者を2回か3回守った、きっと大金だ。』
『さっきまでマヨイちゃんの笑顔で赤らめていたアカネが、今は青ざめているw』
『一瞬で赤から青へwwww信号機かよwwww』
「ノーカウント!さっきのはノーカウント!見積もりを私に押し込まないで!」
「ご利用ありがとうございます。」
「ヤダ!!!」
絶叫する勇者の懐から財布を引き抜き、中の金貨をすべて取り出す。手に取った金貨を数えていると、私は思わず眉をひそめた。
「ちっ。足りないな。」
「えっ。」
「仕方ない。少し時間をかけて借用書を書くしかない。」
「あががががが!!!」
アカネは電撃を受けたように身をよじらせ、震え始めたが、この勇者の奇行にはもう慣れっこだ。これが社会人の適応力というものか。
私は空っぽの財布を泣きじゃくる勇者の前に置いた。
「うぅ...うぅぅぅぅ...マヨイちゃんひどいよ、マヨイちゃん...」
「何がひどい。契約を守っているだけ。それより、私たちはもう前に進むべきじゃない?」
「ダメ!ダメダメ!もう進みたくない!これ以上進めば借金が増えるだけ!マヨイちゃんは私の気持ちなんか気にしてない、ただ私の体とお金が目当てなんでしょ!」
「あなたの体なんて要らないわ。でもまあ、確かに、あなたのお金目当てで一緒にいるけど。」
「またそんなに澄んだ目でひどいことを言うなんて!鬼畜!最低!お金がなくなったら捨てられるんだ!」
勇者は大声で泣き始めた。そんな彼女の前に跪き、そっと肩を抱きしめた。
「大丈夫だよ。」
「...マ...マヨイちゃん?」
「お金がなくなっても、私はあなたのそばにいる。」
「本当?マヨイちゃん?お金がなくても、まだ私のそばにいてくれるの?」
「ええ。」
期待に満ちた目で私を見つめるアカネに対して、私は彼女の目の隅の涙を拭い、そっと彼女の手を握った。
「だって。勇崎さんには、まだ借用書を書くこの手があるじゃないか。」
「なるほど!そういうことね!これで私まだマヨイちゃんと一緒にいられるんだ!」
「そう。私はあなたと一緒にいる。だから、立ち上がって前に進もう。」
「うぅぅ...マヨイちゃん!わあああああああ!」
アカネは感動して大泣きし始めた。彼女のそばに浮かんでいる配信用ドローンがコメントを素早く流し始めた。
<コメント>
『お腹が痛いw』
『www』
『www』
『草』
『アカネ、早く戻ってきて、これは罠だよ。』
『> 5000 G 泣かないで、お小遣い。』
『> 1000 G 少しの補助金。』
『マヨイちゃん、ホストの素質ありかも?』
『持ち上げて落とす、本当に上手いねwww』
『アカネ、ストックホルム症候群になりそう。』
『このままだと搾取され続けるルートだね。』
『というか、さっきからマヨイちゃんの独壇場で、アカネはほとんど手出しがないな。』
『まあ、最初から剣が折れちゃってるから、これも必然の結果か。』
『でも今日はちょっと異常だよね。初心者の階層なのに、ずっと中級のモンスターが出てくる。』
「ん?」
勇者を慰める最中、遠くで何か動きがあるのを聞いた。
「勇崎さん。起きて。何かある。」
「えっ?」
「奥で誰かが助けを求めている。」
「っ!」
涙目だったアカネが一気に立ち上がり、泣き顔を一転、決意の表情を見せた。
「行かなくちゃ!」
「…私が言うのも何ですが、今の勇崎さんは折れた剣しか持っていないし、コメントによると、このダンジョンのモンスターの分布が異常だって。もし奥が今よりも密度が高いなら、私でもあなたの安全を完全には保証できない。」
「わかってる!」
「それなら、引き返しましょう…」
「でも、行かなくちゃ!」
アカネは緑の目で私をじっと見た。少女の気迫に圧倒されたのかもしれない。その輝く目に見つめられ、私はふと立ち止まった。
「だって、私!勇者だもん!」
「…そう。」
彼女が自信に満ち溢れた様子を見て、私は思わずため息をついた。
「それなら私も付き合うしかないね。」
「マヨイちゃんはやっぱり優しい!わたしのために!」
「別にあなたのためじゃない。これはお金を稼ぐチャンス。」
服についたほこりを払い、助けを求める声に向かった。
「決まったなら、急ぎましょう。状況が良くなさそうですから。」
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