第6話 ハロー・ワールド
「皆さん、マヨイちゃんの初配信に拍手を!イェーイ!パチパチパチパチ!」
「はあ……
<コメント>
『温度差www』
『よろしくね!マヨイちゃん!』
『おっ、狐耳の巫女!新人?』
『かわいいな。』
『 >5,000 G 新人祝い。』
「というわけで!マヨイちゃんは正式に私の仲間になりました!これからは二人一組で活動していきますので、皆さんよろしくお願いします!それでは、マヨイちゃん、自己紹介をお願い!」
「自己紹介はさっきもしましたけど。それに、ここってダンジョンですよね?こんなに緊張感がなくて大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ!マヨイちゃんはもっとテンションを上げて!これは貴重な初配信なんだから!さあ、もっと話して、元気いっぱいの姿を見せて!新人にとって大切なことだから、先輩の私の言うことを聞いて、しっかり挨拶しなきゃ!イェーイ!」
「は、はあ。イェ、イェーイ?」
「よくできました!マヨイちゃんは、神社の修繕費を稼ぐためにダンジョン配信者になったんだ!みんな!マヨイちゃんを応援しよう!」
<コメント>
『よろしく!』
『イェーイ!』
『イェーイ!』
『おお、神社を修理するために稼ぐのか。』
『金欠巫女www』
『 >7,500 G お賽銭。』
『 >1,500 G 僕も少しお賽銭を。』
『 >750 G お賽銭。』
「皆さん、スパチャありがとうございます!今日も元気いっぱいにダンジョンを攻略しよう!」
「勇崎茜さん。そろそろ本題に入りましょうか。」
「アカネでいいよ、マヨイちゃん!」
「勇崎さん。」
「アカネ!」
「勇崎さん。」
「うう…私たち、仲間じゃないの?もっと親しく呼び合おうよ!」
「そうですか?私たちはただの仕事だけの関係ではないですか?」
「澄んだ目でそんな冷たいことを…!もっと好感度を上げないと…!ぐぬぬ!」
アカネの歯ぎしりを無視して、私は周囲を見渡した。
「これがダンジョンか。初めて来たけど、なかなか興味深いね。」
「うん!ここは『結晶の聖域』と呼ばれているよ!」
「へえ、なるほど。その名前がつくのも納得の美しさだね…ん?」
その時、壁からゆっくりと巨大な何かが這い出してくるのに気がついた。
その何かは石でできた身体を持ち、結晶で覆われていた。太く短い脚と巨大な手を持つその姿は、子供が無造作に作った人形のようだった。
結晶でできた人形が両腕を振りながらゆっくりとこちらに向かってきた。
「ふーん。ゴーレムか。友好的ではなさそうだ。」
「あれ?ちょっと変だね、本来ならクリスタルゴーレムはもっと下の層で出現するはずのモンスターだけど…まあ!マヨイちゃんは強いから!ほら、マヨイちゃん、そのゴーレムにあなたの強さを見せつけて!アタック!」
「はあ?いやです。」
「え?」
アカネが行動を止め、私の拒否に驚いたように見えた。
「え?私たち、仲間でしょ!しかも、私がリーダーだよ!」
「仲間ではなく、仕事だけの関係です。それに、あなたに指示されるのは嫌です。」
「どうして!?」
「バカに指示されているような感じがするから。」
「ひどい!?」
「あ、すみません。勇崎さんはバカでしたね。」
「なんだと…!バカはマヨイちゃんだ!バーカ!バーーーカ!ダンジョンではリーダーの指示に従うべきだよ!」
「そうですか?でも出発前にリッカさんから、あなたの指示に従う必要はない、自分を守るだけでいいと言われました。バカの指示には従わなくていいと。」
「マネーちゃんーー!!!」
<コメント>
『笑った。』
『アカネがマネージャーにも認められたバカだってww』
『威厳のない隊長。』
『おお、勇者よ。隊員を動かせないとは情けない。』
『お金を払ってみては?好感度が明らかにゼロの状態では、それしかない。』
『同僚なのにお金を払って協力させるなんて、なんだか変だなwww』
「ええい!もういい!私が行く!勇崎アカネ、行くよ!オラオラ!」
アカネが腰の剣を抜き、ゴーレムに向かって突撃し、大振りの姿勢をとった。
「これを食らえ!秘剣!勇者の一撃!」
「っ!」
パチン、と。折れた剣の一部が私の方に飛んできた。
慌てて頭を横に避けた。振り返ると、アカネがゴーレムの前で武器を振り下ろす姿勢を保ちながら、手には半分しかない剣を握っている。
「は、はああああ!?」
「あ、あれ?」
<コメント>
『あ。』
『あ。』
『折れた。』
『いやいやいや。なんで折れたの?』
『まあ、基本的にアカネの手に渡ったどんな武器も、失くされるかこのように壊れてしまう。』
『だから以前、聖剣を追い求めたかったんだ…』
『でも、今日始まりで折れた?ちょっと危ないんじゃない?』
『これはまずい状況かも?』
ゴーレムが拳を高く挙げて、突然の事態に固まってしまったアカネに向かって振り下ろそうとしている。気がついたときには、私はすでに一歩を踏み出していた。
「ちっ。イチジク流、
手のひらでゴーレムの拳の軌道に迎え、力を導いて拳を一方にそらした。ゴーレムが攻撃が空振りしてよろめいたとき、私はしっかりと一歩踏み出し、拳をゴーレムの胸に当てた。
「
私の発勁に伴い、ゴーレムの胸に大穴が開き、電源が切れたようにゴーレムはゆっくりと後ろに倒れ込んだ。
<コメント>
『...強い!』
『ゴーレムを一撃で破壊したなんて。それはCランク上位の魔物だよ。』
『しかも、耐久力が高いことで知られているのに。』
『背中がかっこいい。』
『さっきのは一体何の技だったの?』
『なるほど、巫女さんは武闘家なのか。』
「大丈夫?」
「…え?あ、うん、うん!大丈夫!ありがとう!」
「…?」
振り返ると、アカネはまるで夢から覚めたように見えた。彼女の顔にはわずかに赤みがさしている。目の前の勇者の態度に少し戸惑ったが、とりあえずそれを無視することにした。
袖から探し物をして、見つけたものをアカネに渡した。
「大丈夫なら良かった。これ、あげる。」
「これは?」
「見積もり。さっきあなたを守って、ついでにモンスターも倒したから。合計1,7500G。」
「高い!えっ、ちょっと!私たち仲間じゃないの!?」
「仲間ではなく、仕事だけの関係です。これもリッカさんとの合意事項。勇崎さんが何か無茶をして危険に陥り、私が手を出す必要があれば、請求できるってわけ。」
「何それ!?」
「ああ、この料金は私が勝手に言っているわけではない、すべてリッカさんと話し合ったもの。勇崎さんがその場で支払えない場合は、来月勇崎さんに渡す小遣いから差し引かれることになる。」
「ぐぅ!」
「勇崎さんが変なギャグ装備やお腹を壊す可能性のある霊薬にお金を使うより、私に投資した方が実用的だと。これで勇崎さんが無駄遣いを避けるように圧力をかけることができる、一石二鳥だって。」
「マネーちゃんーー!!!」
アカネはムンクの叫びのような表情を見せた。
<コメント>
『www』
『このままだとアカネは本当に叫ぶしかないねwww』
『そんなにお金があるなら、変なものを買うんじゃなくて、もっといい剣を買えば?』
『死ぬwww マネージャーもアカネの味方じゃないwww』
『件数ごとに請求か。アカネの普段の行動を考えると、すぐに来年までの借金が積み上がるね。』
『>5000G 悲しまないでアカネ、とりあえず少しの援助だ。』
『すぐに巫女さんのポケットに入るけどwww』
『まあ、でもこのお金の使い道は間違ってないと思う。確かにマネージャーが言う通り、これでアカネも少しは落ち着くかも。』
「う……うううっ……」
「まいどあり。」
勇者から奪った金貨を慎重にしまい、心の中はぽかぽかと温かい気持ちになった。
地面にひざまずいている勇者に向かって、自分の顔が生まれて初めての最も輝かしい笑顔を浮かべていることに気づいた。
「これからもよろしくね、隊長さん?」
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