第4話 聖剣の適合者
「はぁ。」
自称勇崎アカネの少女と彼女の配信ドローンを連れて神社の道を歩きながら、私はため息をつかずにはいられなかった。破壊を引き起こしたが、この少女は勇者だ。相手が賠償を約束していることを考えれば、殺意を抑えて案内するしかなかった。
勇崎アカネ本人は既に自分がしたことを忘れてしまったらしく、興奮して見て回っていた。
「わあ!ここ、すごく綺麗!」
<コメント>
『この霧、濃いな。』
『これが伝説の聖剣を祀る神社か。』
『千本鳥居って言うのかな。壮観だ。』
『アカネ、完全に観光モードに入ってるな。神経が太い。』
『さっきまで巫女さんと死闘しているのに…』
『まあ、切り替えが早いのも一流の冒険者の資質かもな…』
「勇崎アカネ。」
「はい!何でしよ?」
「以前の連絡では明日来るという話でしたが、なぜ今日来たのですか?」
「それは…聖剣だよ!伝説の先祖さまの武器だよ!わくわくして、待ちきれなくて早く来ちゃった!」
「ふーん。あなたの時間感覚は素晴らしいですね。」
「えへへ!」
目の前の勇者少女が私の皮肉をヒマワリのような無邪気な笑顔で受け止める。
「…ちっ。」
<コメント>
『結局、約束は明日だったのか!』
『ああ、皮肉が全く伝わってないな…』
『巫女さんの好感度、完全にマイナスだな。』
『あ。舌打ちした。』
『アカネって、一応王位継承権があるお姫様だろ…時間感覚こんなにルーズで大丈夫か、この国は?』
『まあ、天然ボケもアカネの魅力の一つか…こんな状況でも確かにイラっとくるけどな…』
「あの、ここ撮影してもいいですか!」
「はぁ。あなたは既に、何だっけ、配信ドローンで撮影していますよね。もうどうでもいいです、勝手にしてください。ここには人に見せられないものはありませんから。」
「ありがとう!」
勇者が喜んで飛び跳ねる横で、私は怒りを超えて完全に諦めに変わっていた。
「それより、門の修繕費はちゃんと払えますか?」
「あ、はい。大丈夫です。見た目によらず、ちょっとお金持ってるんですから!」
「あっそ。払えなかったら、その命、貰い受ける。」
「ええっ!?」
<コメント>
『>500 G うちのバカが迷惑かけて申し訳ない。』
『巫女さん、冗談じゃなさそうだ…』
『>1000 G すみませんでした。』
『>500 G』
『>10000 G 賠償費用です。それとアカネ、今日の目的を忘れずに。また迷子にならないでね。』
『>10000 G 巫女さんの冷たい視線に乾杯。』
『なぜこんなに変態が混ざってるんだ…』
「…ここです。」
勇者と彼女の配信ドローンを連れて、目的地に到着した。
目の前に現れたのは、白い光を放ち、魔力に満ちた池だった。池の周りには白い花が群生している。池の中央には、質素ながら実用性を重視した古の剣が刺さっていた。見た目は平凡だが、剣からは明らかに魔力の波動を感じ取ることができる。周囲の魔力が光線となり、池水を通じて剣へと吸い込まれていく。
「これが…聖剣ですか?すごく綺麗…」
勇崎アカネは感動の表情を浮かべた。
<コメント>
『これが伝説の初代勇者が魔王を討ち取った聖剣か。歴史的瞬間を目の当たりにしているな。』
『思ったより質素だな。もっと派手な剣かと思ってた。』
『まあ、千年前のものと考えれば、このスタイルも不思議ではない。』
『魔力が収束している…』
『これからどうなるんだ?』
「その!これから儀式を行うんですか?」
「ええ、儀式と言っても簡単です。この池に入り、聖剣を抜くだけです。ただし。」
私は興奮している勇者を制止しながら、目を細め、彼女に注意深く警告した。
「聖剣が不適切な者と判断した場合、池に足を踏み入れただけで魔力の火傷を負います。無理に進むと、剣の柄に触れた瞬間に焼き尽くされる可能性がある。思い上がった武者がこの儀式で命を落とした例もあります。それでも試みますか?」
「やります!」
勇者少女は即座に答え、池に足を踏み入れた。
「だって、私!勇者だもん!」
アカネが池に入った瞬間、まるで大気が震えるかのようだった。
聖剣を中心に、池の水が揺れ、大きな波紋を作った。
少女の魔力に応えるように、剣身に集中していた魔力が赤色に変化した。
アカネは何の障害もなく池を渡り、聖剣の柄を握り、剣を抜いた。
瞬間、火花が聖剣から噴出し、朱雀のような模様が若き勇者を取り囲んだ。
「これは…自分がこの剣と共鳴しているのが感じられる…!すごい!この子なら、全力を出せる気がする!」
勇崎アカネは聖剣を高く掲げ、数回振ってみると、剣から放たれる光が周囲の濃霧を追い払った。
<コメント>
『おお、すごい。』
『踏み出した瞬間、心臓が飛び出そうだった。』
『池が赤くなったとき、拒絶反応かと思ってドキッとした。』
『良かった良かった。これで使用者として認められたのかな?』
『美しい魔力だ。あの魔力で作られた朱雀は何?』
『私は魔法史を研究していますが、これについて説明しましょう。歴史記録によると、その朱雀は聖剣に認められた時に現れる
『つまり、今のアカネは真の勇者になったってこと?』
『真の勇者の誕生だ!』
「よし!今すぐダンジョンに行って、この子の力を試してみよう!」
「悪いけど、その聖剣は持ち出し禁止です。」
私は興奮している勇者から聖剣を取り上げた。
「え?」
勇者が剣を高く掲げていた姿勢のまま固まり、配信ドローンのテキストも急速にスクロールした。
<コメント>
『え?』
『あ。』
『え。』
『奪い取ったのか?』
『剣の柄に触れたら灰になるんじゃないの?』
『ちょっと、巫女さん、なぜ池の中に平然と立ってる?』
『まさか!』
「あなたたち勇者一族は千年前に既に聖剣の所有権を放棄しています。聖剣の儀は使用資格を確認するためのものであり、聖剣を所有できるという意味ではありません。」
私が話す間にも、私の足元の池の水は揺れ、元々満ちていた赤い水が、徐々に私のものである青に染められていった。
魔力が活性化して全身に高揚感が満ち溢れる。聖剣の核心が自分の心臓と共鳴するのを感じながら、私は剣柄にわずかに力を加えた。
青の火花が聖剣の剣身から噴き出し、最終的には狐の形を成していた。火花で形作られた狐が空中を数周した後、すぐに分裂して花びらのように降り注いだ。
落ちる花びらの中、私はぼんやりと私を見つめる勇者を横目に、剣身を青に変えた聖剣を池の中央に戻した。手を剣柄から離すと、剣身はすぐに平凡な鉄灰色に戻った。
「儀式はこれで終わりです。帰ってください。そして、出発する前に、修理費を支払ってください。これが見積もりです。」
「あ、はい…高い!いや、それは置いといて!」
<コメント>
『いやいやいやいや!』
『つまり、巫女さんも適合者?』
『事態が早すぎてついていけない。』
『そして、何食わぬ顔で見積もりを出してくる。』
『> 1000 G とりあえず冷静になろうと金を投じる。』
『こんな状況で金を投じるのは冷静ではないよ。』
「...巫女さん、聖剣に触れても大丈夫?」
「当然です。さもなければ、どうやって普段この剣の世話をすると思いますか?それより、支払いは可能ですか?これ以上話を逸らそうとしても無駄ですよ。」
私が少しイライラしながら答えると、勇者の目が何か宝物を見つけたかのように輝き、私の両手をしっかりと握った。
「決めた!」
「は?」
「巫女さん!私と一緒に配信者になろう!」
「...は?」
この人は、いきなり何を言い出すんだ?
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