第6話
私は次のブレスが来る前に黄色から赤に染まったモノアイから残光を残しながら右へと素早く跳ぶ。
リミットコード《EXAM》は私のモデルとなった過去の人物の戦闘データを元に自動戦闘するシステムである。
その過去の戦闘データを元に行われる高速機動戦闘は本来、汎用型である私にはこれ以上ない程、負担が大きいものである。おまけに自分の意思に関係なく身体が動く為に機械生命体であるとは言えども本当ならば、感じる事がない疲労による消耗があるのだ。それ故に私の身体には時間制限が設けられている。
それにしても、私の身体は私の意思とは関係なく、最適な動きが最も効率の良い行動を選択するのを見て、私はやや不安を感じた。
動いている私から見ても、その行動はあまりに機械的で正確に急所を怖いと思う程、狙っている。
しかも、《EXAM》の行動演算は的確に相手の弱点となる部位を見抜き、相手が行動を起こす前に致命的な打撃を与えていく。まるで過去に同じ戦闘経験があったかのように対応しているのが不思議なくらいだ。
セーフティシステムが再起動するまで残り30秒の段階で私の身体はドラゴンゾンビの四肢に隠されたコアを破壊し、残りは頭部に宿るコアのみとなった。
残り時間15秒・・・私の身体はマナシールドを応用した空中跳びを披露するとその勢いのまま、クレイモアを突き刺してコアを破壊する。
『王ガ帰ッテ来タ!』
ドラゴンゾンビのか、それともアサシンゴブリンのものかは解らないが、光になって消えるそれは確かにそう叫んでいたと思う。
《──カウント・0。セーフティロック再起動します》
不意に聞こえたシステムボイスと同時に私に身体の自由が戻るが、解放されたと同時に本来なら未だに発揮出来ない身体機能の酷使で体内に蓄積された熱を全身の機構から排熱がされる。
そして、そのまま慣れない戦闘行動で意識が朦朧とし、ふらつく頭を抑えながら駆け付けて来るヴォルス君達を遠目にモニターで捉えてから私の視界にノイズが走り、直後にプツリとブラックアウトして意識を失う。
───
──
─
魔王が住まう魔界で、それを見ていた者達がざわつく。
「・・・間違いない。姿は違うけれども王が再び降臨なされた」
「では、我々の悲願である王の復活も・・・」
「恐らくは・・・」
「ああ。我らが王よ。再び貴方様に出会えるのですね?・・・この時をどれ程、お待ちした事か・・・」
「王の復活は近い!皆の者よ!宴の時である!」
周囲が盛り上がる中、長である美しい少女だけが、魔王のいる玉座の間へと向かい、その玉座に座っている魔王と呼ばれるメカニカルファクターの存在を懐かしむように見据える。
「・・・もうすぐだよ。目が覚めたら、あの時の約束を守ってよね、おじちゃん?」
眠っているのか、機能停止しているのかは定かではない。
ただ、彼女達の悲願はこの王と呼ばれるメカニカルファクターの復活であった。
何故、そこまで固執するのか、何がそこまでさせるのか・・・それを知る者達の新しき手足となる種族達や命は知らぬまま、育って来た。
ある者は救済を信じ、ある者は終末の戦いを信じた。
故に真相は定かではないが、王の復活と言う共通の認識のみが彼らには存在した。
──魔王の復活。
形はどうあれ、それこそが魔族とそれに従う魔物達の共通認識となった。
かくして、その魔王の復活祭に魔界全土が歓喜し、隣国に位置する人間達の各国ではその宴に不安を煽られるのであったと言う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます