第3話
街に到着した私はゆっくりと広がる光景を目の当たりにして、その場でしばらく観察をする。スミレちゃんの格好を見て想定していたよりも発展した街並みをしているようだ。
スミレちゃんの住まいである場所は貧困レベルの場所らしいが、少し大きな通りへと出れば、賑わう人でごった返している。少々、圧を感じてしまった。
「ネコちゃんは何か食べたいのある?」
「ん?えっと、私に内蔵されたエネルギー炉は半永久的に稼働し続ける事が出来るからエネルギー補給する必要はなくても大丈夫なんだよ──って説明しても多分、難しいよね。簡単に言うとネコさんの身体はご飯とかいらない身体って事さ」
「え?ご飯がいらないの?」
「まあ、そんなところかな。ついでに説明すると過去の惑星調査によるデータベースから、この惑星に存在する魔力の大元であるマナの変換なんかも出来るんだよ。
さっきの防御シールドもその産物の一つさ」
「・・・う~ん。ネコちゃんの話は難しくて良く解らないや」
ですよねえ。そんな気はしてました。
それにしても、私の自慢の赤いボディーは流石に目立つだろうか?
スミレちゃんのように外套に身を包んでいた方が良さそうだな。それはそうとボロ布のような外套一枚のスミレちゃんと違い、大通りの人々は比較的に整った衣服を身に付けている。
薄々思ってはいたが、幼いスミレちゃんが酷い環境で育って来たのだと改めて理解出来る。
初の現地人であり、会話のフォローもしてくれているし、恩を返しておくべきだろう。
彼女には人並みな生活をさせて上げたいものだ。
「スミレちゃん。お金を稼ぐにはどうするのが早いかな?
あ、スミレちゃんみたいにお花を売るのとかではなく、もう少しマトモそうな働き方とかあるかな?」
「え?う~ん。わかんないけれど、やっぱり冒険者になるのが早いかも・・・」
「成る程。そうと決まれば、ヴォルス君の言っていたギルドと言うところに行くようだね?」
私はスミレちゃんと共にギルドと呼ばれる場所へと向かう。
中に入ると屈強そうな戦士や別種族である亜人などが見受けられた。
みんなの注目を浴びて、かなり緊張する。過度なストレスで頭部の装甲メッキが剥がれそうだ。
私はそんな思いをしながら、スミレちゃんと共にカウンターへと向かうと早速、依頼をこなそうと受付で話をする。
「失礼。依頼を受けたいのですが、幾つか見繕って頂けますでしょうか?」
「依頼の受注希望ですか?──かしこまりました。では、階級証の提示をお願いします」
「・・・階級証?」
私がおうむ返しに質問すると周囲が面白いものでも見たように大笑いする。
「こいつは傑作だぜ!階級証なしで依頼が出来ると思っていたのか!とんだ見掛け倒しだぜ!」
ゲラゲラと笑う周囲を無視して私はしばし、考えてヴォルス君の事を思い出す。もしかするとヴォルス君はこのような事になるのを見越していたのだろうか?
意外と切れ者なのかも知れないな、ヴォルス君。
「あの、私はヴォルス君──いや、ヴォルス・アウターゼンにこの街のギルドを紹介されたのですが、間違っていたかな?」
そう告げた瞬間、先程までの嘲笑う声がシンと静まり返る。
え?マジでヴォルス君って、ただ者じゃないのか・・・人は見掛けによらないとはまさにこの事だろうな。
ヴォルス君の名前を口に出した途端、受付の女性もどこか緊張した素振りを見せている。
「ヴォルス様のお知り合いでしたか・・・大変失礼致しました。階級証については此方で手配致します」
「それはありがたいですが、発行されるのにどれくらい時間が掛かりますか?」
「恐れ入りますが、最低でも2日間は準備を必要と致します。それまではお心苦しいですが、辛抱して頂けますと・・・」
「この街に来たのは初めてで通貨にも疎くてですね。
手配して頂いている間に日銭を稼ぐ方法などはありますでしょうか?」
「・・・えっと、ゴブリンなどが落とす装備品やドロップアイテムなどを換金されれば宜しいかと」
「成る程。参考になりました。ありがとうございます」
交渉して欲しい情報は引き出せた──ゴブリンを乱獲するのはしのびないが、これも生活に必要な事だ。
早速、ゴブリンから金品を奪取する算段をつけなくては・・・。
「あ、スミレちゃんはおうちで待っててね。すぐ終わらせて来るから」
「うん。わかった」
スミレちゃんは本当に素直だなあ。
そんな訳でスミレちゃんとは一旦、別れて私は再びゴブリンを退治をしに森へと戻る。
先程の戦闘もあってか、ゴブリンはなかなか出てこなかったが、此方にはレーダーがある。
どんなにゴブリンが身を潜めていようが見つけ出すのは容易いだろう。
それにリーダー格のゴブリンの存在もある。
危うい芽は摘み取った方が良いだろう。これからの為にも糧になって貰わなくては・・・。
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