第4話
偶然にも神さまを起こせたようです。
『たしか、お前達は――NO.011とNO.014だな。何故だ?』
「何故だといわれても……」
起こされた神さまは、世界がどうなっているのかを全く理解できていないようでした。しかも、わたし達をよく分からない番号で呼びました。
それに、記憶装置のデータが欠損しているとか。その修復に時間が掛かるといって、わたし達の目的であったミヤちゃんの修復。
『出来る……そんな気がする。
と、待たされっぱなし。
そんな時に出てきたのが、わたし達のことを、妙なナンバーで言うことでした。
『オレの記憶では、君達のシリーズは数え切れないぐらい作ったはずだが――』
「曖昧な記憶ですよね」
『メモリーがあっちこっちは損している。他のものとの交信も出来ない。一体、今日はいつで、オレは何者だ?』
「今日がいつなのかは、わたし達も定期的にパルスをもらって修正していたんですが……ずいぶんと受信していませんよ」
私もずいぶん前の記憶を拾ってきた。前はそういった情報が飛んできたが、このところサッパリ……いつからだっけ? ずいぶん長いこと、受け取っていない気がします。
「わたし達は友達を直してくれると、神さまのところに来ました」
『オレが神だと!? 冗談を言っては困る。自分の名前さえ思い出せないのに――』
「先程、出来ると言ったじゃないですか!」
『完璧なオレだった出来るかもしれない。今、見てみろ、この状態を――
ああ……少しだけメモリーが回復してきた。1世紀だ。約100年前の災害だ』
100年前――そうは言われても、わたしの集積回路には日付のカウンタが故障している。この世界に生まれて、一体どれだけ経ったのか。全く、分からないのです。
「ミヤちゃん、分かる?」
「オレ様も分からない」
若干のマイナーチェンジをしていますが、同型タイプなので基本構造は一緒。ミヤちゃんが分からないものを、どうしてわたしが覚えているのでしょうか。
『災害の時に、ネットワークが切り離されたのかもしれない。地球の秩序を守るためのオレ達のネットワークさえも――』
その言葉は嘆いているようにも聞こえました。
この『神さま』は、もの凄いスピードで自分の身体を修復しているようです。ですが、わたし達の目的もなんとかしてもらわなければ!
「ミヤちゃんを助けられるんですね。完璧な神さまであれば」
『ああ、思い出してきた。オレだ。君達をデザインし作れ上げたのは――だが、人間と区別できないように
「ジョウホウ屋さんが、設計寿命を越えたから改造してくれました。消耗したパーツを取り替えて修理が出来るように」
『設計寿命を越えているだと!?
ますます分からない。今は一体いつなんだ……外はどうなってんだ』
この神さまは何を言っているのでしょうか……経過なんて必要なのでしょうか?
「それで修理は――」
『無理だ。そんな顔をするな。今は無理だということだ』
その途端、わたしの頭の中が覗かれ始めました。
「勝手に、ネットワークを繋がないでください! プライベートとかが――」
神さまはいきなり、わたしの頭へ情報交換を始めたではありませんか!?
「わたし達にもプライベートがあるんですよ!」
『何を言っている? 端末である君達のデータを収集するのは当然のことではないか』
「辞めてください!」
『もう終わった――少しは、ホントに少しだな、この世界のことを。一体、今まで君達は何をしていた! こんなに無秩序に!!』
勝手に人の頭の中を覗いておいて、怒ることはないでしょ!
『そのNO.014を直すのには、材料が足りない。その後ろの箱があるだろ』
と、神さまが言うように、振りかえると箱……というよりも、前にどこかで見たことのある棺桶が並んでいる。全部で4基。ドス黒い鋼鉄製の箱ではあるけど、ふたつはフタが破壊されて、あからさまに動いていない感じ。
『材料が揃ったら、その中にNO.014と材料を放り込めば、修理が出来るであろう』
「材料? そんなミキサーみたいな事で直るんですか?」
言い替えそうとしたところで、頭の中に必要な『材料』なるモノが羅列されていた。
ただ、今から集めろと言われると、かなり難しい材料が揃っている。金属や電子部品、希少金属、その他もろもろ。
拠点にジャンクとして保管しているものを使えば、揃いそうな……ひょっとして頭の中に羅列された『材料』というのは、わたし達の製造のための!?
『君達が部品食いで出てきたジャンク品があるだろう。あれで何とかなる』
「ホントですか……」
疑いたくなるけど、あのジャンク品も物々交換には必要なもの。だけど、ミヤちゃんが助かるなら――
『もうひとつ、渡しておこう。これは私からのプレゼントだ』
「プレゼント?」
タダのものには注意しろと、ジョウホウ屋さんに言われているのですが――
『私を起こしてくれたお礼だ。その1番左の箱を開けてみなさい』
言われるまま、並ぶ棺桶の一番左に近づいてみた。その棺桶は、壊れていないようだ。
そして、近づいてみると、急にふたが開いたじゃないですか!? 開けろといったのに!
「何ッ! 何!?」
ミヤちゃんが驚いているのは無理はないけど、後ろを向いているから。
中から白い冷気が噴き出され、冷凍睡眠していたような感じで、ふたが完全に開く。
「なんなんですか!?」
現れたのは、わたし達と同型の子。ただ、見た目は微妙に違う。髪もミナちゃんみたいにストレート。ただ黒髪ではなく、銀髪……青っぽい銀色の髪。
『オレの製作したとっておきだ!』
最初に思ったのはキレイということだけ。美少女モデルであることは確かなのですが、現実がすぐに襲ってきました。
「ミヤちゃんも壊れているっていうのに、ここに来て
そうだ。この先の事を考えると、この新しい『
今の、わたし達4人チームでも、この世界を生きていくのに精一杯なのに!
『6
「今の外の状況は、私の
『あッ――まあ、なんとなく……』
この神さま大丈夫だろうか? 口ぶりからして、わたし達の創造主なんですよね?
『折角、起こしたのにいらないというのか!?』
と、神さまが言っている横で、今起きた子は私に冷たい目線を向けてきました。冷凍庫で保存されていたから、肌のパーツも何もかもが新品の子。
「不要なのかしら? わたし、要らないんだ――」
そんなこと言われても、ミヤちゃんの修理も出来ず。挙げ句に新しい仲間なんて、わたしどうしたらいいの?
〈了……つづく?〉
Pandora~世界が終わってもわたし達は生きています~ 大月クマ @smurakam1978
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます