第2話

「ダイコーンーさん♪ コンニャークーさん♪ タマゴさーん♪」

「ちょっと待って?」


 どこまで潜ったのでしようか? 突然、背中のミヤちゃんが声をかけてきました。

「なんか、音の反響が変わっていない?」

「そう?」

「ちゃんと感覚センサーを動かしている?」

「えへへ……」


 指摘されるまで、ナタを振り回すのが必死になっていて、すっかり周りを確認していなかったです。


「笑って誤魔化すな。敵が近くにいるかもしれないのに、感覚センサーを動かしていないなんて!」

「あっ、目の前に扉が――」


 よく見ると崩れかけた通路の先に扉がありました。

 ただ、何かの衝撃に破壊され、傾いて、道を塞いでいる感じ。もう少し調べると、丁度天井付近、手を伸ばせば届くところが開いています。

 開いた穴のところに手を伸ばして、よじ登り、わたしはその向こうを覗くこととしました。


「あっ!」

「何が見えるんだ?」


 背中合わせのミヤちゃんには見えないでしょう。何か大きな空間があることは分かりました。ボォーッと明かりが何個か動いているのも見えます。


 でも、


 さすがにナタを振り回して、ここまで来たのですから腕に痺れを感じました。そして、限界に来た右腕が膝から外れてしまったのです。そのままわたしの身体は落下し始め、


「危ない!」


 まあ着地はなんとか決めて、ミヤちゃんを潰すことはなかったのですが……腕をどうしようか――

 見上げると、わたしの腕があの穴のところにぶら下がっています。

 わたしは、貴重な右手を酷使してしまいました。

 みんな右利きだから、右腕の消耗が激しく、予備は拠点にはほとんど残っていない。戻ったとしても……壊れたのを分解して、余っている左腕と部品を入れ替えて――


「どうしよう……」

「ミヤ様の使う?」

「ごめんね」

「借りはいいぜ。腕が使えなくなると、帰れなくなるからな」


 ミヤちゃんが、自分の右腕を貸してくれた。肩からロックを外し、わたしは元ミヤちゃんの右腕を付ける。わたし達は同じタイプだから、腕や脚を融通できる。けど、胴体と首は固有だから、それが出来ない。外した二の腕のパーツはまだ使えるし、あそこにぶら下がっている右腕だって、全部が駄目になっていないはず。


「ともかく、あの扉を破壊しましょう」


 持っている武器はナタ。それと小銃が一丁。道を塞ぐ扉は、これでは破壊できそうにありません。


 でも秘策――というか、1週間分の食料費で!


「あたしのためにそこまでしなくても――」


 ミヤちゃんはそういってくれますが、ここまで来たからには、何か持ち帰らないと!

 小銃ライフル擲弾グレネード。わたし達4人分の1週間の食費。小銃に空砲弾を装填し、棒の付いたグレネードを小銃の口径に差し込むと……わたしは道を塞ぐ扉に向かって打ち込んだ!

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