Pandora~世界が終わってもわたし達は生きています~

大月クマ

第1話

「ダイコーンーさん♪ コンニャークーさん♪ タマゴさーん♪」


 わたしは唄いながら、ナタを振り回し、道を空けていきました。

 目の前にあるのは、真っ暗で、ガラクタが転がり、よく分からない配線が垂れ下がった地下通路。ずいぶん前に水没。その後、水は引いたようですが、足下に泥水が溜まっている場所もあります。


「ミコうるさいから、その下手くそな唄、辞めろよ! 耳が痛いッ!」


 わたしの背中からミヤが叫んでいます。


「もう何時間、こんなこと繰り返してるか、もうあきちゃったよ」


 飽きたなんていったが、これは背中のミヤちゃんのため。

 手にしたナタで、地下迷宮を切り開き、未開の道を切り進んでいるしかないのです。


「飽きたなら帰ろうぜ。こんなところ――」

「イヤだ。ミヤちゃんを復活させないと……」

「だけど、誰も知らないんだろ?」

「この先にあるって、ジョウホウ屋さんがいっていました!」


 そう。わたしは背中に括り付けたミヤちゃんのために、地下迷宮に潜り込んでいます。

 なにせミヤちゃんは現在、のです。

 不慮の事故というかなんというか……わたし達のパーティーは、別パーティーと遭遇しました。

 別パーティーなんて何ヶ月ぶり? いや、何年ぶりかな?

 まあ、今がいつなんてみんな気にしなくなったから……どれだけ経ったんだろう。

 ともかく、目的等も別だったので、知っていることの情報交換をしたんです。しばらく別の人と会ったことがなかったので、興奮しすぎちゃったのかな?

 そのうち、ミヤちゃんと向こうの子と、ぶつかって転んでしまいました。


「この先に直してくれるところがあるでしょ。わたし頑張ります!」

「そんなに真剣にならなくても――」

「みんなで一緒に、またジョウホウ屋さんのおでんを食べましょう!」

「そうだけど――」


 ぶつかったところが悪かったみたい。向こうの子は平気だったのだけど、ミヤちゃんは真っ二つ。上半身と下半身が離れてしまいました。

 普通なら機能停止死んじゃうところだけど、運良く動力炉と集積回路が繋がっていて助かったのです。

 まあ動いているので問題ないかと――ですが、わたし達の拠点ではミヤちゃんの身体は直せないのを知ったのは後のことでした。

 だけど、神さまのひとりなら助けてくれるかもしれない。


 そうジョウホウ屋さんから聞いたんです!


 その神さまというのは、大きな湖の真ん中にある島にいるとか。

 その昔、世界を開放した13の神さま。

 わたし達を創り出したのはそのひとりだといいます。その神さまの中ならば、ミヤちゃんを直してくれるだろうと――

 もちろん、他のパーティーメンバーのミムちゃんやミナちゃんには反対されました。


「誰も近づいたことのない大きな湖にいくなんて、危険だわ」

 と……


 でも、ミヤちゃんを助けるために、わたしはひとりで……反対されても、ミヤちゃんは絶対、助けるよ!


「ダイコーンーさん♪ コンニャークーさん♪ タマゴさーん♪」


 こんな暗くて気持ち悪いところ、ホントは進みたくないけど、唄で誤魔化しているのは内緒で、何度も何度も手にしたナタを振り下ろしました。道を空けるために――

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