第5章74話:反響

さらに彼女は食べながら、告げる。


「それになんというか……まるで異国の料理を食べているような風味があるのう」


異国料理いこくりょうり風味ふうみ


おそらく『和風』のテイストを感じ取ったのだろう。


俺は言った。


「たぶん昆布こんぶだしを使ったからだな」


「昆布だし?」


「ああ。昆布というのは海藻かいそうだよ。この国ではあまり日常的に食べられて無いが」


普通の鍋と違って、今回の鍋は、和風テイストである。


できるかぎり海鮮かいせんのダシに頼ってはいるものの、根底にはあるのは昆布だしだ。


「なるほどな……こういう風味の料理を、どこかで食べたことがある気がする」


「ほう?」


「たしか、松乃国まつのくににいったときに食った料理が、コレに近かったかもしれん」


松乃国……


もしかすると、日本に近いような国なのかもしれない。


くに的な感じで。


「まあ、おぬしが作る料理のほうが、100倍うまいがな!」


とテュカベリルは言った。


俺は微笑んで答える。


「ありがとよ。そう言ってもらえるのが一番嬉しいよ。……食べ終わったら雑炊ぞうすいにしてやるから、楽しみにしとけ」


「うむ! 雑炊……がなんなのか知らんが、楽しみにしておこう!」


とテュカベリルは笑った。







カニ鍋については、キルティナにも食べてもらうことにした。


なお、このとき昆布だしは使わず……


塩と魚介でダシを作ったカニ鍋にした。


そのほうが異世界人いせかいじんの口に合うと思ったからだ。


結果として、キルティナには絶賛され……


ルナトリアへの販売許可が出されることになった。







<ヴィオーネ視点>


ルナトリアの新料理、カニ鍋が販売される。


その数日後。


話題が一気に沸騰ふっとうして、人気が爆発した。


それから毎日のごとくカニ鍋が完売かんばい


半月後にはカニ鍋を食べるための行列が生まれ……


1ヵ月後には、住民たちが家庭の食卓で、自作のカニ鍋を作るようになった。


―――――もともと異世界では鍋料理なべりょうりはあまり食べられていない。


しかしカニ鍋は、人々のあいだに爆発的に普及していった。


まさしく鍋というジャンルの新しいブームを巻き起こしたのだった。





この現象に、最も恐々きょうきょうとしていたのは、もちろんカノリアである。


彼女は、カニ鍋のヒットが、シャーベットの再来であると感じていた。


いや……ヘタをすればそれ以上だ。


シャーベットは氷を用いなければ、自作するのが難しいが。


カニ鍋は、材料を買えば、各家庭かくかていでも創ることができる。


そのお手軽さが、爆発的な普及を後押あとおししているのだった。


「おのれ……ルナトリアめぇ……!!」


会議室かいぎしつ


カノリアが歯ぎしりする。


「我々も対抗しなければなりません! このまま手をこまねいていれば、話題を全て持っていかれます! 新しい料理を考えましょう!」


とカノリアが提案した。


それに対して、会議の参加者たちの反応は冷ややかだ。





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作者は他にも異世界ハイファンタジーを書いています。

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