第5章72話:開店の反応

半月後。


レティンウォール島。


ヴィオーネの本店がある、ヴィオーネの牙城がじょう


現在、この島では、とある店がブームになっている。


ルナトリア6号店だ。


冬に入り、突如とつじょとして開店したこの店は……


ジワジワと話題を増やし、やがて火がついたように、人気が沸騰ふっとうした。






レティンウォール島の島民とうみんたちは語り合う。


たとえば、2人の男性がこんな話をしていた。


「おい、ルナトリアって知ってるか?」


と丸坊主の男性が言った。


「ん……なんか最近、話題になってる店だよな」


と角刈りの男性が言った。


丸坊主の男性が言う。


「そうそう、魚料理の店なんだけどさ。マジでうまい店なんだよ!」


「食べに行ったのか?」


「ああ、いったぜ。最高だったよ」


「へえ、そうなのか。でも魚料理っていえば、ヴィオーネだよな。うちの島には本店があるし」


「いや、ヴィオーネより全然うまいぞ」


「まじか?」


「ああ、まじだ」


「さすがに言いすぎじゃないか? ヴィオーネは、マドリエンヌ領だと最大手さいおおての店だろ?」


「いや、言いすぎじゃねえ。食べてみりゃわかる」


「うーん……」


と角刈りの男性。


そのとき。


「タラバガニのガーリックソテーはいかがですかー!? いま話題の店、ルナトリアの名物ですよー!」


と大きな声で宣伝をする女性が、街路がいろ屋台やたいを出していた。


それを聞いた丸坊主の男性が、言った。


「おい。アレだよアレ! ガーリックソテー! ルナトリアの料理だよ!」


「あれが?」


「そうだよ。一度だまされたと思って食べてみろよ。マジで美味いから。しかも味見あじみだけならタダだぞ!」


「え……タダって?」


「試食販売? って名前だったかな。なんかそういうサービスをやってるらしい」


「まじかよ。タダなら食べてみてえぜ」


「じゃあ、いこうぜ。すいません、おねえさーん! ガーリックソテーの試食をさせてください!」


と丸坊主の男性が、試食販売の女性のもとへ向かった。


「はいはーい。どうぞー!」


と試食販売の女性が、皿を二つわたす。


殻がついたタラバガニの脚。


丸坊主の男性がまず食べる。


「ん~!! やっぱりうめえー!!」


続いて、角刈りの男性がおそるおそる食べてみる。


「んんん!!? な、なんだこれ!! 超うめえ!?」


「だろ?」


「ああ! これはマジでヤバイな。やみつきになるぜ!! 1個じゃ足らねえ!」


角刈りの男性が、タラバガニのガーリックソテーを、あっという間に食べてしまう。


角刈りの男性が尋ねた。


「こんなうまい料理を出してるのか、ルナトリアは?」


「ああ。ガーリックソテーもバカみたいにうまいけど、ルナトリアのメニューはどれも同じぐらいハイレベルだぜ」


「ま、まじか……なあ、今晩こんばん一緒にルナトリアにいかねえか?」


「お、興味が出たか。いいぜ。いこう!」


「おう! じゃあ後でな!」


と二人は約束をする。


そうして角刈りの男性は、ルナトリアを訪れ……


以後、熱心なリピーターになるのだった。

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