第5章71話:開店

1週間後。


朝。


晴れ。


いよいよルナトリアの3~7号店が、一斉にオープンする。


俺はこの日。


コルゼン島を出て、カレン島にやってきていた。


コルゼン島のすぐ近くにあるカレン島では、ルナトリア3号店が開店する。


俺は、その様子を見に来ていた。


「ふむ……」


カレン島――――


ビーチの手前の街路がいろ


ここで、たったいまルナトリア3号店がオープンした。


オープンまえから行列があったようで、すぐに満席になったようだ。


席が空くのを待つ客たちが、店前みせまえのベンチに腰掛こしかけて待機する。


俺は街路に立って、店を見守みまもる。


初日しょにち客入きゃくいりとしては上々のようだな)


コルゼン島と、非常に距離の近いカレン島。


この島ではルナトリアの名前が、以前から広まっていた。


たとえば唐揚げパンをコルゼン島でけた行商人ぎょうしょうにんたちが、カレン島の住人に販売するなどしていたからだ。


だから、カレン島にはもともとルナトリアのファンがいた。


ルナトリア3号店の初動が好調なのは、そういうファンに支えられてのものだろう。


(……逆にいえば、コルゼン島から遠い島だと、客入りが悪いかもしれないな)


と俺は思った。






実際、その予想は正しかった。


たとえばレティンウォール島。


ここはコルゼン島からそこそこ離れており……


しかもヴィオーネ1号店が存在する、ヴィオーネの牙城がじょうだ。


そのため、ルナトリア6号店がオープンしているが、初日の客入りはなかなかひどかったようだ。


カノリアの笑い声が聞こえてきそうな結果である。


ただ……


ルナトリアの真骨頂しんこっちょうはここからだ。


ルナトリア1号店でやったときと同じように……


試食販売ししょくはんばい委託販売いたくはんばいによって、大規模な宣伝を実行する。


そうしてルナトリアの料理を知ってもらい、客足きゃくあしを増やしていく作戦である。


ちなみに。


今回の試食販売は、唐揚げパンを使わない。


冬は、むぎ収穫量しゅうかくりょう激減げきげんする。


その影響でパンの製造費せいぞうひ高騰こうとうするのだ。


ゆえに唐揚げパンではなく、新メニューである『タラバガニのガーリックソテー』を使う。


食べやすいひとくちサイズに切り分けて、お客さんにお試しいただく。


そうしてルナトリアへの集客へとつなげていく。





結果。


この作戦はこうそうした。


タラバガニのガーリックソテーは、またたくにレティンウォール島に広まり……


ほんの10日後には、ルナトリア6号店は満員御礼まんいんおんれいとなった。


レティンウォール島だけでなく、他の島でも、ガーリックソテーがブレイクしている。


ゆくゆくは全店ぜんてんにおいて、行列ができることだろう。

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