第5章

第5章69話:5つの島

―――第5章―――



それから半月後。


オープンスタッフを集め、


タラバガニの仕入しい交渉こうしょうを済ませ、


料理人たちにタラバガニのレシピを伝授し……


いよいよ開店準備かいてんじゅんびととのった。


マドリエンヌりょうの5つの島に店舗てんぽを構える。


5つの島とは、




カレン島、


ヨークス島、


メイドン島、


レティンウォール島、


ベルハッシャ島、




……以上の5島である。


それぞれ、


カレン島に3号店を。


ヨークス島に4号店を。


メイドン島に5号店を。


レティンウォール島に6号店を。


ベルハッシャ島に7号店を。


開店していく手筈てはずだ。


それぞれの店舗に【ルナトリア】の屋号を出して、1週間後に開店という作戦。


これはもちろん、かつてヴィオーネがやったことへの仕返しである。







<ヴィオーネ視点>


レティンウォール島。


ここにはヴィオーネ商会のオフィスがある。


オフィス5階。


会議室。


そこで緊急会議が開かれていた。


議題は――――ルナトリアの件だ。


会長であるカノリアが告げた。


「ルナトリアが、コルゼン島以外にも店舗を開くそうです!」


カノリアはさらに続けた。


「しかも5店舗も! 全て、うちの店がある島です! 由々ゆゆしく、いまいましい事態ですよ! 早急に対策を打たなければ」


カノリアは、ひたい青筋あおすじを浮かべている。


激怒しているのは、誰の目にも明らかだった。


会議の参加者が恐々きょうきょうとするなか、一人の女性が口を開いた。


「ルナトリアが、コルゼン島以外に進出してくることは、予想できていたことです」


彼女の名は、リン。


ヴィオーネ商会の副会長ふくかいちょうである。


水色のウェーブがかった短い髪。


赤い瞳。


身長は147センチほど。


異世界風いせかいふうのスーツに身を包んでいる女性だ。


再三さいさん、申し上げますが、マドリエンヌりょう以外に店を出しませんか? ルナトリアとこうから戦うのは、厳しいと思いますし」


「こちらも再三、伝えてきたことですが、」


とカノリアは前置きしてから答えた。


「逃げ回るような戦い方は、ヴィオーネの戦い方ではありません。マドリエンヌ領の王者として、恥じぬ戦いをするのがヴィオーネです」


この議論は、何度もカノリアとリンのあいだで交わされたものだった。


リンが先刻、告げたように、ルナトリアがコルゼン島以外に進出してくることは、容易に予想できていた。


ヴィオーネをあっさり蹴散らしたルナトリア。


コルゼン島だけにくすぶっているわけがない。


だから、リンは、あらかじめいくつかの対策を提案していたのだが、カノリアは全て却下し……


ルナトリアとの対決から逃げるべきではないと、頑迷がんめいに主張していた。


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