第4章67話:金融

全員が料理を食べ終わる。


俺は確認するように尋ねた。


「じゃあ、タラバガニのガーリックソテーを、冬のメインディッシュとして売り出していくってことで、決定だな?」


一同が、同意するようにうなずいた。


そのときキルティナが尋ねてきた。


「ところで、さきほどおっしゃっていたバターという調味料は、材料費ざいりょうひが高くありませんの?」


「ああ、そんなにコストはかからないぞ。牛乳を使って作るだけだからな。牛乳さえあれば、あとは俺の【料理錬金術りょうりれんきんじゅつ】でなんとかなる」


「そうなんですのね」


とキルティナが納得した。


「開店準備についてですが、」


とユミナが前置きしてから、告げた。


「まずヴィオーネが持つのは1~5号店の五つ。これに対してうちがぶつけるのは、ルナトリア3、4、5、6、7号店です」


これでルナトリアの店舗は7つとなる。


ちなみにルナトリア1号店は、うちが最初に開いた店。


2号店は、その向かいの店である。


カノリアが退いたとき、ヴィオーネ6号店をそのままいただいて、ルナトリア2号店として利用している。


ユミナが言った。


「ルナトリア3~7号店のための物件については、既に押さえております」


もう店舗てんぽは購入しているらしい。


俺がぽつりとつぶやく。


「5つの店舗を同時に運営するのか。よく開店かいてん資金しきんが集まったな」


1つの店舗だけでも数千万すうせんまんの開店費用が必要だ。


店舗てんぽとなると、かなりの金額になるはずである。


するとキルティナが答えた。


「借金ですわ」


「え?」


「さすがに5店舗を即金そっきんで購入する資金もありませんし、諸々もろもろの経費をポンと捻出ねんしゅつすることは不可能ですもの。ですから、金融きんゆう商会しょうかいからお金を借りましたわ」


「まじかよ。……でも、唐揚げパンの工房は4つぐらい即金そっきんで購入してなかったか?」


「パンだけ作る工房と、レストラン運営は、かかる費用が全然違いますわよ」


とキルティナが答えた。


ユミナが告げた。


「現在のルナトリアはかなり有名ですから、融資ゆうししてくれる金融商会はそれなりにありました。おかげで巨額きょがくの資金を得られましたので、ルナトリアのふところにはかなり余裕があります」


そうか。


借金……ね。


まあ俺も貴族のはしくれだから、金融の知識はある。


何か事業をやるならお金を借りるのは当然だ。


ただ……実際に借金を抱える側になってみると、緊張が走るな。


うまく店が軌道に乗らなかったらどうしよう……などと、少し考えてしまう。

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