第4章66話:カニ料理

テュカベリルが感心しながら言う。


「これは……見るからにうまそうじゃな」


シャロンがにおいをかぎながら、言った。


「ん~、すごく良い匂いだね~!」


ルウが言った。


「兄さんは本当に、食欲をそそる料理を作るのが上手ですね」


キルティナが尋ねる。


「これはどんな料理なんですの?」


「タラバガニのガーリックソテーだ。タラバガニをにんにくとバターで炒めたものだな」


「……バターとは?」


「新しい調味料だ」


と答えると、キルティナの目がきらりと光る。


「あとで詳しく教えてくださいませ、そのバターについて!」


「お、おう」


キルティナの剣幕に、俺はたじろぐ。


最後にユミナが言う。


「ラング様の新作料理しんさくりょうりを食べられるなんて、とても光栄です! 大事に頂きたいと思います!」


「ああ、たんと召し上がれ」


と俺は言った。


全員が食べ始める。


一応フォークを渡してあるが、テュカベリルは殻をつかんでタラバガニの脚を持ち上げ、かぶりついた。


もぐもぐと咀嚼そしゃくするテュカベリル。


「んんん!! 美味い!!!」


シャロンも同意する。


「うん、これは本当に美味しいよ! タラバガニの新境地しんきょうちだね~!」


「たしかに……タラバガニの調理の中では、一番好きな味つけかもしれません。加減かげんも、とても良いですね」


とルウも同調した。


「やみつきになる味ですわねっ」


とキルティナが、顔を上気じょうきさせながらおいしそうにたべている。


ユミナも言った。


「素晴らしいです! さすが、ラング様は別格の料理人! 文句のつけようがありません。これは絶対売れますよ!」


どうやら全員、料理の出来に満足してくれたようだ。


俺は微笑みながら、自分でも食べてみる。


(うん、うまい)


タラバガニが本来ほんらい持つ、旨味うまみ甘味あまみ


そこにこうばしいガーリック風の味わいが口いっぱいに広がる。


肉厚にくあつの食感。


焼いたカニの匂い。


やはりタラバガニの味は素晴らしい。


(このカニが安価で手に入るなんて、異世界は最高だな)


と俺は思った。




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