第4章63話:あいさつ

翌朝。


小鳥のさえずりが聞こえ……


かすかなまどろみの中にいたとき。


シャロンとルウが部屋にやってきた。


「おはよー! ラングくん! お姉ちゃんが起こしにきたよー!」


「兄さん。朝ですよ。そろそろ起きて――――、ッッ!?」


床で寝転ねころぶテュカベリルを見て、ルウが硬直こうちょくした。


シャロンもぽかんとしている。


「だ、誰……このひと?」


「兄さん!!」


とルウが顔を真っ赤にして叫んだ。


「……なんだよ」


と俺は目を覚まし、ベッドのうえで上体を起こした。


ルウが怒りをあらわにする。


「だ、誰ですかこのひと!!? わ、わわわ私たちに黙って、女性を連れ込むなんて、最低ですッ!!!」


「……なんで女を連れ込むのに、お前たちの許可が必要なんだ。あと、そいつは連れ込んだわけじゃないぞ。勝手に入ってきたんだ」


「同じことです! 女性に勝手に入られるなんて、許されざる不手際ふてぎわです!」


んな理不尽りふじんな……。


ルウは青筋を立てながら、ジト目で尋ねてくる。


「で……誰なんですか、このひと!?」


俺は答える。


「まだお前たちには紹介してなかったな……そいつはテュカベリル。俺の新しい護衛だ」


「護衛……」


「ちなみに魔族だ」


「ええ!? そ、それ、大丈夫なんですか!?」


「ああ。人類に敵対する意思がないことは確認してる」


と俺は答える。


「んん~、なんじゃ。朝っぱらからうるさいのう」


とわずらわしそうに言いながら、テュカベリルが目を覚ました。


床で寝転んでいたテュカベリルは、上体を起こす。


ふわ……とあくびをしながら伸びをする。


テュカベリルは、ルウたちを見つめた。


「おぬしたちは?」


「私たちはラングくんの兄妹だよ~」


とシャロンが答えた。


「ほう。兄妹がいたのか」


「うん。私がラング君の姉―――シャロン。で、こっちがラング君の妹で、名前はルウ」


「シャロンとルウか。わらわはテュカベリルじゃ。こやつの護衛をすることになった。今後、よろしく」


「うん、よろしくね」


とシャロンが挨拶をする。


「あ、えっと……よろしくお願いします」


とルウもぎこちなく挨拶をする。

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