第4章60話:提案

俺は背後を振り返った。


「よかったら、二人も食べるか?」


と女性二人にも告げる。


すると。


「え!? いいんですか?」


「ああ。実は二人のぶんも作ってあるんだ。まあ、要らなければ俺が食うが」


「いえ、食べます!」


「やったぁ! ラング様の手料理が食べられるなんて!!」


と二人は大喜びをした。


二人がテーブルに着く。


俺はルカベラのムニエルを二人に差し出す。


「わぁ……しょくの女神に感謝をささげます!」


「さっそく食べます! もぐもぐ……んん!! 美味しい!!! なんですか、なんですかコレ!!」


ムニエルを食べ始めた二人は、メチャクチャはしゃいだ。


幸福そうな顔で、ムニエルをほおばっている。


「なるほど……レモンでソースを作ると、こんな味になるんだぁ」


「この外のサクサクした部分は何かしら?」


「ころも……じゃない? たぶん、ラング様がお作りになっていた唐揚げと同じだと思う」


正確には、唐揚げのほうは片栗粉。


ムニエルに使っているのは小麦粉だ。


どちらもころもを作るのに使われるが、なるものであり、どちらを使うかで食感もかわってくる。


(さて……俺も腹が減ってきたな)


3人がおいしそうに食べているのを見て、俺はそう思った。


なので、自分のぶんを食べることにした。





食事が進む。


女性2人は食事を終え、退室していった。


一方、テュカベリルはさらに別の料理を要求してきた。


仕方ないので、ルナトリアで販売している料理をかたぱしから作って、食わせてやった。


テュカベリルはどれもこれも「美味い」と言って、嬉々ききとして完食かんしょくしていった。


たらふく食べたテュカベリルは、現在、テーブルに座って一服いっぷくしている。


「ふう……とんだ馳走ちそうじゃった。本当に美味うまかったぞ」


とテュカベリルは言った。


俺は答える。


「お粗末さま」


「こんなに美味い料理の数々を作れるとは驚きじゃ。のう、おぬし?」


「ん?」


「わらわを雇わんか?」


「え……?」


俺はきょとんとする。


テュカベリルは言った。


「おぬしの護衛……あまりにも弱すぎる。あんな軟弱なんじゃくな護衛どもでは、わらわでなくても、ひとひねりにできる者は多かろう」


「ふむ」


「ゆえに、今後はわらわがおぬしのことを守ってやる。その代わり――――今後も、おぬしのメシを食わせろ」


「ふむ……」


交換条件こうかんじょうけんじゃ。わらわは、おぬしの用心棒ようじんぼうとなる。おぬしは、報酬としてわらわに料理をう……どうじゃ?」


う、うーん……


俺はどう答えたものか困惑した。

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