第4章54話:方針2

「潰す……と一口ひとくちに言っても、二つのパターンがあります」


と、ユミナが前置きしてから説明する。


「一つ目は、文字通りヴィオーネを潰すことです。ラング様たちがやったように、相手を廃業に追い込むわけですね」


ユミナは続ける。


「二つ目は、ヴィオーネを屈服くっぷくさせて傘下さんかに治めるというパターンです。この場合、ヴィオーネが築き上げてきたものの多くを、そのまま簒奪さんだつすることができますので、こちらのパターンのほうが合理的ですね」


つまり事実上の合併・吸収。


キルティナは果たして、どちらのパターンを望んでいるのだろうか?


俺の疑問を読み取ったように、キルティナが告げる。


「わたくしは、潰すつもりで攻勢こうせいに出たいと思いますわ」


「ふむ」


「しかし、ヴィオーネが降伏を宣言してきた場合は、傘下に加えることもやぶさかではございませんわね」


なるほど……


ユミナがまとめる。


「服従か、死か……二択にたくを迫るということですね」


「そうですわね」


とキルティナが肯定した。


俺は肩をすくめて言った。


「なかなか過激な会長さまだ」


「あら。わたくしは昔からアグレッシブですわよ」


キルティナは不敵に微笑んだ。


俺は尋ねた。


「特に異論はない。しかし、潰すといっても、具体的には何をやるんだ?」


キルティナが答える。


「戦法としては、以前にやったことと同じですわ。ヴィオーネの近くで店をオープンし、ラングの優れた料理で宣伝して、ヴィオーネから客を奪います」


「今は秋ですが……準備期間じゅんびきかんを考えると、店を開くとしても冬になりますね」


とユミナが補足する。


俺はぽつりとつぶやく。


「冬……か」


冬は作物などが育ちにくいので、野菜や麦を良く使う店などは、休業していることも多い。


しかし魚料理の店は、冬でも変わらず激戦だ。


むしろ他の店が休業しているぶんだけ、魚料理のレストランに人が集中することもある。


キルティナが言った。


「開店のための準備は、ユミナさんにお願いしてもよろしいですかしら?」


「もちろんです。お任せください!」


とユミナが答える。


キルティナは言った。


「そして……ラングには、新たに冬料理ふゆりょうりを考案していただきたいんですの」


しゅんのメニューを考えろ、ってことだな」


「はい」


冬の料理か。


魚でもいいけど、カニとかもアリだな。


いろいろアイディアがはかどるぜ。


「わかった。レシピを考えとくよ」


「よろしくお願いいたしますわ」


かくして俺たちは、ヴィオーネの打倒に向けて、動き出すことになった。

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