第4章51話:会議

ユミナが告げる。


「かつて私の考えた企画や戦略を評価していただき、ありがとうございます。ですが、後になって、もっとやりようがあったのではないかと後悔しております」


ユミナは続けた。


「今後は、あのときの反省を生かして、このキルティナ商会で全力を尽くしたいと考えております」


ふむ。


ヴィオーネに負けた過去はあれど、幹部としての実力は高そうだな。


キルティナは言った。


「キルティナ商会において、ユミナさんは、ラングと二人三脚ににんさんきゃくで仕事に当たってもらうことになりますわ。とはいっても、ラングはあくまでアドバイス役。料理部門の幹部業務かんぶぎょうむは、ほとんどユミナさんがおこなうことになりますが」


するとユミナが告げる。


「ラング様と二人三脚で仕事ができるのは、本当に光栄です! 料理人として、私は世界一のしあわものです!」


「……大げさだな」


と俺は苦笑しながら告げた。


しかしユミナは真剣な顔で言ってくる。


「いいえ! 大げさではありません! それぐらいラング様の料理に感銘を受けております! 私はラング様の料理とならば、結婚しても構いません!」


「料理と結婚って何!?」


「……もちろん料理だけではなく、ラングさま自身じしんと、結婚を前提にお付き合いというのも、望まなくはないのですが!」


とユミナは顔を上気じょうきしながら告げてくる。


すると。


何故かルウが、バッと椅子を立ち上がった。


ひたい青筋あおすじを浮かべながら、ニコやかな笑みを浮かべている。


笑いながら怒っている!?


ルウは言った。


「初対面でいきなり交際のもうをするのは、いかがなものかと思います!!」


するとなぜかキルティナも賛成した。


「そうですわね! 恋愛関係になるにしても、最低でも5年……いや、7年ぐらいはお友達をしてからにすべきかと!」


キルティナも、額に青筋をピクピクと浮かべていた。


「な、7年……」


とユミナがぽかんとする。


そういえば……


俺とキルティナは会って7年目ぐらいか。


なんて思っていると、ルウが反論した。


「いえ、最低でも10年は必要だと思います!」


「10年!?」


とユミナが驚く。


ルウが済ました顔で告げる。


「はい! 10年以上の期間をかけて、互いのことを知り合っているぐらいが、交際するための最低ラインだと思います。――――ちなみに、私と兄さんは10年以上の付き合いです」


ユミナがあんぐりと口を開けている。


まあ、そりゃ困惑するわな。ルウが意味不明なことを言ってるからな。


そのときキルティナが抗議する。


「じゅ、10年は長すぎますわ! 7年ぐらいが、交際の最低ラインとして最適ですわ!」


「いえ! 7年は中途半端ちゅうとはんぱすぎます。10年というキリのいい数字のほうが、縁起えんぎがいいと思います!」


ルウとキルティナがにらみあう。


いったい二人は何を意地になっているのか?


さっぱりわからない。


そのとき。


ユミナがぽん、と手を叩いた。


「ああ、なるほど! お二人とも、ラング様のことがお好きなんですね?」


「うにゅ……!!?」


「うぐっ……こほっ、ごほっ!!」


キルティナとルウが、取り乱したようなリアクションをした。

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