第4章50話:幹部

「ところで、」


と俺は前置きしてから尋ねた。


「俺があくまで【顧問役】ということは、料理部門を担当する幹部が、別にいるのか?」


「その通りですわ」


とキルティナは答える。


キルティナはふいに立ち上がり、部屋の外に出た。


会議室かいぎしつぐちのすぐ前で、誰かと話し始める。


どうやら、何者かを待たせていたようだ。


キルティナはその人物を、会議室の中に入室させてくる。


キルティナは言った。


「ご紹介いたしますわ。彼女がキルティナ商会の料理部門を担当する幹部、ユミナですわ」


「ユミナと申します。よろしくお願いします!」


――――ユミナ。


身長160センチぐらい。


髪の色は深緑色ふかみどりいろ


瞳の色は水色。


ブラウスの上から羽織はおる黒ケープ。


コルセット。


白ミニスカート。


……といった服装である。


「ラング様!」


とユミナは言ってきた。


「お会いできて光栄です! 実は私、ラング様の料理に感銘かんめいを受けて、キルティナ商会への入会を希望したのです!」


「そうなのか?」


「はい。私も料理人りょうりにんはしくれですが、ラング様がおつくりになったルナトリアの料理をはじめて食べたとき、自分の世界観がひっくり返るような衝撃を受けました!」


ユミナは続ける。


「ラング様は未来の料理界りょうりかいを変える逸材いつざい天賦てんぷさいをおちの御仁ごじんであると、すぐに理解できました! ですから、できるだけ近くで働きたいと思ったのです!」


お、おう……。


ユミナは、熱量ねつりょうを込めた瞳で、俺のことを見つめてくる。


ぐいぐい来るので、俺はやや苦笑した面持おももちになる。


そんな俺の様子を察したか、ユミナが慌てて謝罪する。


「あっ……いきなり自分語じぶんがたりをしてしまい、申し訳ありません!」


「いや、いい。そんなに俺の料理を気に入ってくれたなら、嬉しいよ」


と俺は答えた。


そこでキルティナが口を開いた。


「ユミナさんは、2年ほど前、とある中小商会ちゅうしょうしょうかいの幹部としてつとめていたそうですわ」


「そうなのか」


「はい。しかし、その商会はヴィオーネにやぶれて、つぶれてしまったそうですの」


なるほど、ヴィオーネに……。


まあ、ヴィオーネはライバルてんに対して容赦ようしゃがないからな。


オープン日をかぶせてきたり、大規模な宣伝で客を奪い返そうとしてきたり……


中小のレストランがやられたら、ひとたまりもない。


「ですが、そのときの企画や経営戦略が非常に面白くて……ユミナさんには、密かに注目していたのですわ」


とキルティナが語る。

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