第4章

第4章45話:ロンバート視点

―――第4章―――



<他者視点>


その3日後のこと。


朝。


晴れ。


――――コルゼン島の入り口となるみなとにて。


この港はコルゼンこうと呼ばれる。


コルゼン島に入るときには、必ずコルゼン港を通らなければならない。


コルゼン港には関所せきしょが存在する。


関所では検問が行われており……


コルゼン島へ入る者はみな、この検問で審査を受ける。


問題なければ素通りできるが。


問題があったり、領主が個人的に通したくない人物の場合、関所で弾かれる。


――――この日。


とある人物が、関所で足止めを食らっていた。


ロンバートである。


ラングを追放した父であり、グレフィンド家の当主だ。


彼は、シャロンとルウがコルゼン島にいると聞きつけて、追いかけてきたのだ。


「ここを通せ! 私の娘――――シャロンとルウがこの島にいるのだ!」


関所でロンバートが叫ぶ。


しかし衛兵がロンバートの前に立ちはだかり、進路を妨害している。


ロンバートは怒鳴り散らす。


退け! 私はグレフィンド領の領主だぞ! 貴様らごとき末端まったんの兵士が、私のゆく手をさえぎるのか!?」


その言葉に兵士たちは、わずかに萎縮いしゅくする。


ロンバートは貴族だ。


たとえコルゼン島ではない別の土地の領主といえども、貴族ににらまれたらどうなるか……


想像できない衛兵はいない。


「し、しかし」


衛兵男性えいへいだんせいの一人が答える。


「りょ、領主さまに『グレフィンド領のロンバート子爵は通すな』と通達を受けております」


「なんだと!? ココの領主が、そう言ったのか!!?」


「は、はい」


衛兵は肯定する。


ロンバートは歯ぎしりした。


この領地――――マドリエンヌりょうの領主は、ロンバートと犬猿けんえんの仲である。


政治的ないがみあいを10年以上、繰り返しているほどだ。


しかし。


まさか入領にゅうりょうすら拒否されるとは、ロンバートも想像しない。


ロンバートは怒髪どはつてんく想いで、叫ぶ。


「領主を出せ! 直々じきじきに話をさせろ!」


その要求に衛兵たちがたじろぐ。


「どうした? 私の要求が聞けないのか? 貴族に刃向かうつもりか!? 貴様ら、家族もろとも海の底に沈めてやろうか、んん!?」


脅迫めいた発言だ。


しかし子爵位ししゃくいを授かるロンバートならば、たかが庶民の一人や二人、海の藻屑もくずに変えることなど造作ぞうさもない。


ロンバートの剣幕けんまくに、衛兵たちが震え上がる。





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